アップリンク元従業員が浅井隆代表のパワハラ被害を訴え。「変革」求める

メイン画像:UPLINK Workers’ Voices Against Harassmenオフィシャルサイトより

昨日6月16日に、映画配給会社・アップリンクおよび関連会社の元従業員5人が、同社の浅井隆代表からパワーハラスメントを受けたとして、損害賠償を求める訴訟を起こした。

元従業員たちが立ち上げたウェブサイト「UPLINK Workers’ Voices Against Harassment」では、浅井代表から受けたハラスメント被害の例を掲載。

他の従業員や来場者の面前で理不尽な理由で怒鳴る、「社長の言うことが聞けないのか」等と恫喝する、「おまえは病気である」等の人格を否定した発言をする、時に改善を要望しても「議論する余地はない。会社に残るか去るか」等 と半ば強引に退職を促す。こういった浅井氏によるパワーハラスメントが、長期に渡り日常的に行われてきました。

声明文では「これらの行為は『世界を均質化する力に抗う』というアップリンクが掲げるポリシーとは著しく乖離するものです」と指摘。「私たちはこのポリシーに共感し、アップリンクに入社しました。しかし期待は裏切られ、個人の尊厳が深く傷つけられてきました」と痛切な想いが綴られている。

さらに原告5人それぞれのメッセージも公開。アップリンクという場所に抱いていたそれぞれの希望や、注いできた情熱が記されている。

元従業員5人のうち4人は実名と顔を公表し、昨日6月16日に記者会見へ臨んだ。浅井代表とアップリンクを相手取り、計760万円の損害賠償を求めるという。あわせてアップリンクの元従業員を対象にした「被害者の会」を立ち上げ、浅井代表によるハラスメント被害を受けた人の声を募っている。

アップリンク側の対応

一方のアップリンクでは同日、オフィシャルサイトにて「元従業員からの訴訟について」と題する記事を公開。浅井代表の署名入りで、「不適切な言動があったことを深く反省し、謝罪致します。本件の解決に向けて、誠意をもって対応をして参ります。社としてもハラスメントの再発防止に努めていく所存です」と綴られている。

「次の時代を築くのは、変化しようとしている人」

東京・渋谷と吉祥寺に劇場を構え、6月11日には新たな映画館・アップリンク京都をオープンさせたアップリンク。日本のミニシアターやインディペンデントフィルム界において、長年にわたって中心的存在を担っている。唯一無二の配給会社、映画館と言ってもいいだろう。アップリンクが日本の文化に寄与してきた功績は疑いようがない。

アップリンクの活動を支えてきたのは、浅井代表の目利きとしての才能や、ストリーミングサービス全盛における映画のあり方など時代を見据えた施策の企画といった個人の資質に依ってきた部分も大きいはずだ。だが一方で、元従業員は「浅井氏のパワーハラスメントによってどれだけ理不尽な状況に置かれても、痛みを訴える声は無視され続けました」と、組織の中で暴力が黙認され続けてきたという内情を、勇気を奮って告発する。

映画を含む「カルチャー」がいかに社会と接点を持ち、いかに向き合っていくか。それを考えるとき、アップリンクのあり方は多くの人々にとってと同じように、本稿の筆者にとってひとつの指針だった。今回の事態に対しても、そうあってほしいと願っている。

パワーハラスメントは社会から撲滅されるべき悪である。だが、作品や場所に罪はない。それも忘れられてはならない。

浅井代表はオフィシャルサイトで、「改めて詳細なコメントを発表します」と綴っている。まださだかでない部分も多いので、今はそれを待ちたい。

ところで、2008年にCINRA.NETで掲載したインタビューで、浅井代表は以下のように語っていた。

浅井:ダーウィンの進化論を小学生レベルの本で読んだ時にハッと思ったのが、結局恐竜みたいに強い種や優秀な種が残ったわけではないんだよね。変化に対応できた種だけが残ったって書いてあった。だから、キーワードは「変化」だと思うんだよね。変化するって、実はとてもエネルギーが必要なこと。既得権益持っている人たちがずっとそこに居るのはエネルギーあまり使わなくていいからだと思う。

だから次の時代を築くものはなにかというと、ダーウィンの法則的に言っても、変化しようとしている人になるんだよね。

「UPLINK Workers’ Voices Against Harassment」の声明文終盤には、「アップリンクの変革を求めます」と記されている。ハラスメントが様々な形で横行しているこの社会において、私たち一人ひとりがそれぞれの持ち場で、かつて浅井代表が語った「実はとてもエネルギーが必要なこと」を成すべきタイミングなのかもしれない。

※2020年6月19日追記。浅井代表による「謝罪と今後の対応について」と題する声明が発表。ハラスメントの背景や、今後の再発防止策などが綴られている。また本稿の「ダーウィンの進化論」についての浅井氏の引用発言中に学術上の誤用があった点を明記したい。

※2020年6月22日追記。「UPLINK Workers’ Voices Against Harassment」による新たな声明文が公開。浅井代表による声明の公開プロセスやその内容について批判を加え、「映画という名の下に、人の尊厳をこれ以上踏みにじらないでください。誰かの犠牲の上に成り立つ文化はありません」と訴えている。



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