
『ダンストリエンナーレトーキョー』が魅せる舞台芸術の世界
- 文:前田愛実
- 撮影:西田香織
- (2012/09/27)
ダンスを観る楽しみを知らないということは、間違いなくひとつの幸せを知らないということだ。ダンスを観るたび、ダンスする身体の美しさに感動するたび、そんな確信が心に芽生えていく。しかし一方、音楽や映画、アートに比べて、ダンスを観ることの出来る機会というのは非常に少ない。全てのダンスパフォーマンスは、基本的にたった1回きり、止まることなく流れる現実時間の一瞬の間に産み落とされる。その瞬間に合わせて、自らがしかるべき場所に出向き、面と向かって立ち会わなければ、ダンスを観て楽しむということは不可能なのだ。この便利なIT全盛の時代に、反逆の牙を剥くようなダンスというカルチャーには、実はまだ多くの人に知られていない魅力が、掘り越されるのを待っているのではないだろうか。
そんなダンス作品が世界中から一同に集まる『ダンストリエンナーレトーキョー2012』がいよいよスタートする。ここでは今回のダンストリエンナーレトーキョーの各プログラムの見どころ、そしてそんな豪華なラインナップに挑む日本の若手カンパニー『21世紀ゲバゲバ舞踊団』『田畑真希/タバマ企画』の2組を順番にご紹介していきたい。
ダンストリエンナーレトーキョー2012
2002年にスタートした、世界の振付家・ダンサーが一堂に集う日本最大規模のコンテンポラリーダンスフェスティバル。世界の舞台芸術の場で活躍する同時代の表現者達との交流を通じて、コンテンポラリーダンスの裾野を広げること、新たなオリジナリティーが生まれる文化的土壌を豊かにしていくことを目指して開催されている。今回5回目を迎え、ベルギー、ブラジル、フランス、ドイツ、インドネシア、イスラエル、韓国、スイス、オランダ、日本の10カ国から20以上のカンパニーが参加。前回の2009年にはダンス一色の青山に国内外から10,000人を超える観客・参加者が訪れた。日本のみならずアジアから世界へのダンスカルチャーの発信源として、今後ますます重要な役割を担っていくことが期待される。
DANCE TRIENNALE TOKYO 2012
亡きピナ・バウシュに捧げる、強靭な身体性に裏打ちされた作品―アラン・プラテル/les ballets C de la B『OUT OF CONTEXT – FOR PINA』
日本初演、世界初演の多様な注目作品が続々と披露されるプログラムはどれも見所がいっぱいだが、まずは日本でもファンの多いアラン・プラテルやヤスミン・ゴデールに注目していきたい。アラン・プラテル/les ballets C de la Bの『OUT OF CONTEXT – FOR PINA』は、これまでのプラテルの作品を特徴づけていた大がかりな舞台美術やユニークなスタイルの生演奏などを封印し、シンプルにダンサーの表現のみで勝負した話題作。とはいえ、プラテルの起用するダンサーは、強靭な身体性と強烈な存在感を持つツワモノばかりだから、作品の強度に間違いはないだろう。ちなみにタイトルにある「FOR PINA」とは、もちろん今は亡き巨匠ピナ・バウシュのこと。ピナを深く敬愛するプラテルが彼女に捧げたこの作品、その本気度の高さがうかがい知れそうだ。

アラン・プラテル/les ballets C de la B
©Chris Van der Burght
世界でも有数のダンス大国イスラエル―アルカディ・ザイディス『Quiet』
政治的な内容が注目を浴びることが多いイスラエルのヤスミン・ゴデールが発表するのは『LOVE FIRE』。古今東西のワルツにのせて展開する本作品でも、存在の根源をゆさぶるヤスミン節は健在のようだ。さらに同じイスラエルからはアルカディ・ザイディスも参加する。彼の作品『Quiet』は、イスラエルとパレスチナにおける根深く難しい問題について、真正面から向き合った希有な作品として高い評価をおさめている。実はイスラエルは豊かなダンス文化が発達した世界でも有数のコンテンポラリーダンス大国であり、その複雑な文化、政治的背景の影響により、個性溢れる優れたカンパニーが多数存在する。また独自の訓練法も存在しており、比べて見てみれば一目瞭然だが、ダンサーの体つきからしてヨーロッパやアジアとは異なっていて、身体性の違いにも価値感の多様性が見てとれる。様々な作品を見る機会に恵まれるフェスティバルだからこそ、そういったところに注目するのも面白いだろう。

アルカディ・ザイディス ©Gadi Dagon
前田愛実
英国ランカスター大学演劇学科修士課程修了。早稲田大学演劇博物館助手を経て、現在はたまに踊る演劇ライターとして、小劇場などの現代演劇とコンテンポラリーダンスを中心に雑誌やwebなどに書かせてもらってます。













































