
脱力系で笑える作風が注目されがちだけれど、作家としての前田司郎はむしろストイックである。演劇や小説を通じて「生きること/死ぬこと」を突き詰めようとするその姿は、さながら修行僧だ。そんな前田は何を原動力にして作品を生み出し続けているのだろう? 東京・五反田にある自宅兼アトリエの「アトリエヘリコプター」でインタビューを行った。
前田司郎
小説家/劇作家/演出家/俳優。1977年に生まれ、東京・五反田で育つ。1997年に劇団「五反田団」を旗揚げ。2005年に「愛でもない青春でもない旅立たない」で小説家としてデビュー。2008年に「生きてるものはいないのか」で第52回岸田國士戯曲賞を、2009年に『夏の水の半魚人』で三島由紀夫賞を受賞。
五反田団 公式サイト
前田司郎 日記
最初からできるだけ見積もりを安くしてるから、
そんなに大きい挫折はありません

―今回のゲストは、劇団・五反田団を主宰し、小説家・劇作家・演出家・俳優……と幅広く活躍されている前田司郎さんです。今までさまざまな賞に何度もノミネートされては惜しくも受賞を逃してきましたが、『生きてるものはいないのか』で2008年に岸田國士戯曲賞を、『夏の水の半漁人』で2009年に三島由紀夫賞をめでたく受賞されました。
その後チヤホヤされるようになりましたか?
前田:ぜんぜん(キッパリ)。インタビューでは必ず聞かれますけど。
―以前は文芸誌や小劇場みたいに、どちらかというと閉じた場で活動されていたけれど、最近は一般誌やテレビでもお仕事されるようになりましたよね。ご活躍の場が広がってません?
前田:『週刊SPA!』の連載もすでに1年以上はやっているし、「漂流ネットカフェ」(毎日放送)や「お買い物」(NHK)のシナリオも書き始めたのはもう2年くらい前なんです。だから特に最近という感じがしないのと、「文芸誌が閉じていてテレビが開いている」みたいな感覚が分からなくて。やっていることそのものは大学くらいからあまり変わらないけど、書く量は増えたかな。1日3時間が目安で、すごく忙しいときはそれを2セット。書いて稽古して、夜もう1回書いて……ということも、たまにあります。
―原稿を書けなくなることはない?
前田:今のところないです。戯曲をやっていると書けなくなることもあるんですけど、稽古や本番が後に控えているので、何があっても書かなきゃいけない。それを経験してるから、依頼された原稿が書けなくなったとしても、たぶん何とかして書き上げると思います。
―小説は小学生のときから書いていたんですよね。誰か目標はいたんですか?

前田:小説はあまり読まないから、どういう作家がいるかよくわからないし、たとえ読んでいたとしても「この人みたいになりたい」というのはないかも。今は頼まれて書いてますけど、何か書きたいから書いているだけのところがあるので。
―処女作の『愛でもない青春でもない旅立たない』も確か……。
前田:勝手に書いていただけの作品です。
―前田さんはすっごく軽々といろんなハードルを飛び越えてそうですね。でっかい挫折経験ってあります?
前田:「挫折」って結局、「俺はこれだけできる」っていう見積もりの甘さからくるじゃないですか。僕は最初からできるだけ見積もりを安くしてるから、そんなに大きい挫折はないですね。大学は偏差値の低いところから順に受験して受かったところに入ったし、誰かに自分を委ねなきゃいけない局面も避けてきた。
ただ、芝居や小説を書いていると、「納得のいくものができなかった」という思いが毎回すごくあります。「本当にこれを書きたかったのか」と自問自答したり、頭に浮かんでいる感覚やイメージを言葉にするとき、もっと的確なものがあったはずなのに見つけられなかったり。そういうのはありますけど、「挫折」って自分を他人に委ねなきゃいけないときに感じるものだから、作家の場合、あんまりないんじゃないかなあ。
松本香織
1975年生まれのフリーランスプロデューサー。書籍編集・Webプロデュース・プランニング・ライティングなど、コンテンツ制作全般にわたって活動中。趣味はインタビューで年間50本以上をこなす。仕事のご依頼はHZA03572@nifty.comまで!





















