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メディアアートとしてのamazarashiを探る

メディアアートとしてのamazarashiを探る

amzarashi初のフルアルバム『千年幸福論』から、“空っぽの空に潰される”“古いSF映画”の2本のミュージックビデオ(MV)がホームページで公開されている。文化庁メディア芸術祭で優秀賞を受賞した“夏を待っていました”をはじめ、これまでもYKBXが監督を務めるamazarashiのMVに対する評価は高かったが、今回の作品『空っぽの空に潰される』ではサカナクションの“アルクアラウンド”で同賞を受賞した関和亮が監督を務めていることもあり、今後更なる話題を呼ぶことは間違いないだろう。そこで、今回は2本の新作はもちろん、過去の作品も含め、MVからamazarashiというバンドの特異性、および表現の根幹を探ってみようと思う。

自分にとっての幸せを定義する『千年幸福論』


現代の詩人=秋田ひろむ率いるamazarashiが、遂に初のフルアルバム『千年幸福論』を完成させた。過去には挫折を味わいながらも、素晴らしい仲間と共に音楽を生み出す喜びを改めて見出し、また音楽を続けていくことに対する覚悟も感じられる秋田自身の心境の変化が描かれていると同時に、3.11の震災に伴う価値観の変容を感じながら、「自分にとっての幸福を定義する」というテーマを打ち出し、それらをシネマティックなサウンドと共に情感豊かに鳴らした、これまでの最高傑作だと言っていいだろう。中でも、<終わりがあるから美しい そんなの分かりたくもないよ>という歌詞が胸に響くタイトルトラック“千年幸福論”には、大きく感情を揺さぶられる。

メディアアートとしてのamazarashiを探る
amazarashi『千年幸福論』ジャケットイメージ

前作『アノミー』リリース時の記事では、秋田ひろむの詩人としての魅力にスポットを当てたが、amazarashiの魅力とは決して一面的なものではなく、もっと多面的なものである。その中でも、ビジュアルが大きな役割を占めているのは言うまでもないだろう。改めて書くと、amazarashiは未だにメンバーのプロフィールもアーティスト写真も公開されず、匿名性が守られている。その代わり、アルバムのジャケットやMVに登場しているのは、SFチックなアニメのキャラクターたち。しかし、そのキャラクターたちに関しても、細かい設定などは明かされておらず、ストーリーや解釈はリスナーに委ねられているのだ。

amazarashiのMVに対する評価は非常に高く、過去に制作されたMVは、文化庁メディア芸術祭で優秀賞を受賞した“夏を待っていました”(『爆弾の作り方』収録)をはじめ、フランスのアヌシー国際アニメーション映画祭へのノミネートや、アメリカのCG分科会SIGGRAPH、ロンドンのデジタル映像の祭典onedotzeroでの受賞など、すでに多くの賞を獲得している。


MVを横断して登場する謎のキャラクター

amazarashiのMVは主にCGアニメーションで製作され、これまでの作品は明確なストーリーこそ提示されてはいないものの、キーとなるキャラクターを軸にリンクを感じさせるものとなっていた。そのキー・キャラクターとは、メジャーデビュー以前の初の全国流通盤『0.6』のジャケットで全面に登場し、その後も姿を変えながらジャケットに登場し続けている、白い布を被ったキャラクターである。初のMV“夏を待っていました”は、現れては消える歌詞と共に、タコのような足が伸びたり、ケーブルが飛び出たり、植物が生えたりと、変態し続けるキャラクターの様子が描かれたものだった。

amazarashi / 夏を待っていました MV

“夏を待っていました”MV

続く、“クリスマス”(『ワンルーム叙事詩』収録)のMVでは、前半こそ歌詞の内容ともリンクした雪深い森の中で暮らす少女が描かれるが、中盤からは一転、ジャケットにも描かれている武装化されたキャラクターが少女に襲い掛かかるも、少女の作ったてるてる坊主が“夏を待っていました”で登場したタコ足のキャラクターへと変わり、少女を救うという展開となる。

amazarashi / クリスマス MV

“クリスマス”MV

少女を襲うキャラクターも、少女を救うキャラクターも、共に白い布を被っているが、その関係性には一切触れられていない。おなじく、“アノミー”(『アノミー』収録)のMVでも、やはり白い布を被った、今度は蜘蛛のようなキャラクターが少年を襲うのだが、やはりタコ足のキャラクターによって救われる展開となっている。

amazarashi / アノミー MV

“アノミー”MV

一方、これまでに唯一実写で製作されていたのが“この街で生きている”(『アノミー』収録)のMVで、生活感のある部屋の様子とミニチュアの街が編集によって結ばれ、不思議なミックスド・リアリティを感じさせるものとなっている。また、この作品の中にもてるてる坊主が登場し、“クリスマス”のMVとの関連性が明示されていたのは印象的だ。

amazarashi / この街で生きている MV

“この街で生きている”MV

そして、『千年幸福論』から最初に公開されたMVが“空っぽの空に潰される”である。ジャケットに描かれる、遂に人間のようになったキー・キャラクターが実写化され、スクリーンに映し出される手書きの歌詞をバックにダンスを踊るという、実に示唆的かつ、不思議な仕上がりのMVとなっている。本作の監督を務めたのは、サカナクションの“アルクアラウンド”や、Perfumeの作品でおなじみの映像作家・関和亮。映像の中に歌詞を巧みに用いたり、コンテンポラリーダンスをフィーチャーしたりといった関イズムが、amazarashiの表現と見事に一体化した作品だと言えるだろう。

amazarashi / 空っぽの空に潰される MV

“空っぽの空に潰される”MV

さらに、11月に入ってから公開されたばかりの最新のMVが、“古いSF映画”だ。“夏を待っていました”、“クリスマス” 、“アノミー”という3本のMVの総集編となっているのだが、その最後に現れるのが、やはり人間のようになった白い布のキー・キャラクター。ストーリーという意味での明快なエンディングが用意されているわけではないのだが、まるでこのMVのために用意されていたかのような、<フィクションはあくまでフィクション><答えは君自身が見つけて>という秋田の歌と共に終わることで、何とも言えない余韻が残るのである。

amazarashi / 古いSF映画 MV

“古いSF映画”MV

金子厚武

1979年生まれ、音楽ライター。ロックを中心に、洋邦・メジャー/インディ問わず、様々な媒体で執筆中。ヨシュアカムバック・AFRICAEMOという二つのバンドで自ら活動もしており、現場でしかわからないインディ・シーンの空気を伝えることに関して、特に重点を置いている。

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