WATER WATER CAMELインタビュー

もうちょっと希望のあること言おうよ!(笑)

―WATER WATER CAMEL(以下、WWC)は1995年、中学2年生の時に結成したんですよね。

齋藤キャメル(C):そうなんです。結成12年って言うと、「おっさんか?」って思われる(笑)。

―(笑)。最初の頃はどんな音楽をやっていたんですか?

C:ミスチルとかTHE BOOMとか、あらゆるものをやってましたよ。高校2年生頃からオリジナル曲をやり始めたけど、ファンクとか激しめのロックとか今のWWCとは全然違う感じで。

―若さ溢れる音楽だったんですね~。シャウトとかしてた感じ?

田辺玄(T):してたしてた。そのまま飛んでってステージからいなくなってましたね(笑)。だから当時を知ってる人には「随分変わっちゃったね」なんて言われます。実はその頃が一番盛り上がってて、お客さんも100人くらい来てくれてたんだよね(笑)。

C:横浜スタジアムでライブやることがあって、バス3台借りて180人くらいで遠征したり(笑)。

―メチャメチャ売れっ子じゃないですか (笑)。そういう変遷を同じメンバーで共有してきてるのがまた面白いですよね。好きな音楽とかも、10代の頃からずっと共有してきているんですもんね?

T:いや、全然バラバラなんですよ。普通バンドって、「こういう音楽やりたい」というところでメンバーが集まると思うんですけど、僕らの場合はまず「バンドやりたい」ってところから始まってるからね。

C:だから結束はないですが(笑)、家族に流れてる空気みたいのがバンド内にありますね。

―実際に今は3人で一軒家に住んでいるとのことですが、家がスタジオと化しているんですよね?

C:そう、『花がよくにあう』も家で録りました。だから全然お金かかってない(笑)。

T:頑張ればドラムも録れるし、リハもできちゃったりする。

C:山梨にいる時も玄の家でやってたしね。とにかく金がなかったから、ないなりにやるしかないっていうのもあるしね。

―それでこのクオリティーの高さは凄いと思います。今回は「凪」という曲を紹介させてもらうんですが、この曲はどんな風に生まれてきたんですか?

C:新宿の高層ビルでコンピューターを打っていたんです。そこには広い窓があって、いつも景色を見ながら仕事してたんですけど、その時そこからいい空が見えて。その景色を見ながらその場でパタパタパタと歌詞を打って。

―そこから故郷の山々が見えたわけですね。

C:そう、まさに歌詞の通りで。その景色見ながら、「ハァうんざり」って。今の俺大嫌い、って思いまして。

須藤剛志(S):もうちょっと希望のあること言おうよ!(笑)

C:いや、それが本当のことなんです。僕ね、小さな世界でただ家族と静かに暮らしていたいだけなんですね。東京でコンピューターとか打っているような人間じゃない。だから常にうんざりしているんですけど、その瞬間は、凄く良い時間だったんですよ。風がなくて、雲がピタリと止まっていて。高層ビルだから下界も見えないし、本当に時が止まったみたいでドキドキしたんです。僕はそういう「あ、来た」っていう瞬間に歌詞がズラズラっと書けるし、先に歌詞から作ると納得した曲になりますね。メロディーが先に出来て後から歌詞を付けるといらないこと言ってしまうことが多くなるんですよ。

T:言葉に意味、必然性があって曲が生まれてくる感じだよね。音はどうしても抽象的になるし、こういう歌モノはまず言葉があった方がいいものになるよね。

俺みたいに何も出来ない人間にとって、音楽はイノセントな存在なんです。

―「うんざりしている」というのが意外でした。曲を聴いていると、日々の感動が伝わってきて、とてもポジティヴなイメージを持っていたんです。

C:感動すると同時に、うんざりも一緒についてくる。

T:最近よく、WWCはひたすら優しいとか、きれいとか、ピースだとか言われるんですよ。ただ俺は、そうじゃない部分があるからこそそういう優しい部分が出てくるんだと思うんです。うんざりしているから、本当に感動できるんだと思うし。陰と陽の両方あるけど、最終的にそのどちらが伝わるべきなのか、選択するべきなのかは凄く考えますね。それで今は、優しくてピースな部分っていうのを分かり易く出すのが良いと思ってるんですよね。

―齋藤くんは歌詞を書く際にどんなことを大切にしているんですか?

C:音楽しか知らない人生は嫌だと思って色んなことをやるわけだけど、結局上手くいかない。それでまた音楽に戻ってくる。俺みたいに何も出来ない人間にとって、音楽はイノセントな存在なんです。これだけは自信を持って言えるけど、カッコつけた歌詞を書いてるわけじゃなくて、正直に書いてるんですね。嘘は絶対書かないし、自分にとっての必然性が歌詞にはあるんです。だから、洗練とか前衛というより僕は音楽に救い、イノセントを求めてる。僕にとって音楽はヒーローみたいな存在なんです。

―なるほど。僕が感じた「ポジティヴ」というのは、「誠実さ」に近いものなのかもしれません。

C:そう言ってもらえるのはとても嬉しいですね。僕ダサイ人が好きで。「コイツ馬鹿だね、でも大好き」みたいな(笑)。

―銀杏BOYZの峯田さんみたいな人だよね (笑)。曲は齋藤くんが作って、玄くんがプロデューサー的な立ち位置ですよね。アレンジはどんな事を意識したんですか?

T:「凪」はほとんどバンドでアレンジしてます。前作はPCでアレンジを作り込んだりしていたけど、最近はバンドでリハしながら作ることが多いかもしれない。もちろん細かいところは調整しますけどね。

―WWCは歌や楽曲の良さに加えて音響やアレンジの完成度が高くて、作品に奥行きを与えていますよね。例えば、「日没の時が訪れて」という歌詞に対応して曲の雰囲気がパッと変わる。歌詞の情景がしっかり見えてきます。

T:そうですね。歌詞とアレンジの関係性は最近特に意識している点かもしれない。アレンジを考える上でそこに全てのヒントがあるし、歌詞の情景を音に置き換える作業が好きなんだと思います。歌と言葉と曲が出来た時点で曲の世界観はほとんど完成しているから、音的には何をやっても大丈夫だと思っているんですよ。だから、聴いてくれる人のこととかを俺なりに考えて、わりと自由にやってますね。

―自由だけど歌の邪魔は絶対にしないし、上手いバランスで遊び心を加えていると思います。

T:ただ、アンサンブルを重視し過ぎて無難なところに収まりがちになっちゃうから、突き出るところはしっかり突き出したいと思いますね。そこは日々研究中です。

―今後の課題もしっかり見据えているんですね。

C:良いと思えないことは当然やりたくないよね。「誰かとは違うもの」を追求し過ぎた、アイデンティティーの果てにあるような表現は嫌いなんですよ。「これが好きだからやる」という必然性があってこそ、その音楽にはイノセントがあると思うし。

―それでは最後に、今後の活動予定を教えて下さい。

T:『花がよくにあう』のレコ発イベントが08年1月26日に吉祥寺 STAR PINE'S CAFÉであります。アルバムに参加してくれたタラチネとmopsy flopsyの3バンドで。あとは12月22・23日に大阪、神戸、2月に京都、岡山とツアーを回ります。地元の山梨でもイベントをやってて、これからも大事な拠点になっていくと思います。地方特有の面白さがあるんですよ。

C:そうそう、東京と違ってやったことが残っていくので、凄いやりがいがあるんです。

リリース情報
WATER WATER CAMEL
『花がよくにあう』

2007年11月21日発売
価格:1,800円(税込)
Gondwana label

WATER WATER CAMEL
『AIRSHIP』

2007年2月7日発売
価格:1,800円(税込)
Gondwana label

プロフィール
WATER WATER CAMEL

東京郊外の宅録スタジオと化した一軒家で、音楽的自給自足の毎日をひっそり送っていたが、2007年2月ついにファーストアルバム『AIRSHIP』でささやかにデビューを果たす。今のところ「巨星現る」とかそういった話は聞こえてこないが、ニッポン全国の小粋なカフェやお寺なんかにまでお呼ばれされたりして、なかなかちょっとしたものなのかもしれない。



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