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佐藤玲インタビュー
1983年生まれの若手アーティスト、佐藤玲。写真にドローイングを重ねる手法で作られる彼女の作品は、一見するとどのように接したら良いのかわからない作品に見える。しかし、それは普段日常を生きる私たちのものすごく近くにあるもので、毎日の日常の楽しさ、大切さを気づかせるものなのかもしれない。今年になって196枚の写真からなる作品集『SUN』を刊行し、国内初となる個展を終えたばかりの彼女に話を伺った。
(テキスト:杉浦太一、柏木ゆか 撮影:柏木ゆか)
GEISAI#1をきっかけに、村上隆率いるカイカイキキに所属。 パリのカルティエ財団で開催された「ぬりえ」展を始めとし、多数のグループ展に参加。 今年4月には日本初の個展となる『SUN』を開催(Kaikai Kiki Gallery, 東京)しており、 今後は6月26日から8月8日までNYのLehmann Maupinにて個展が開催予定。
カイカイキキ
窓の外の景色を見てるだけで、すごくワクワクするし、楽しいんです
─どういった経緯でカイカイキキに所属されたんですか?
佐藤:高校卒業前の春休みにGEISAIの1回目に出品をして、そこでは賞は穫れなかったんですけど、そのしばらく後にカイカイキキの方から電話があって、「今までの作品全部持ってきて下さい」って言われたんです。何がなんだかわからぬまま、とりあえずアトリエのある埼玉まで行って、カイカイキキの方や村上さんに作品を見てもらったんですね。それからまたしばらくして 「入らないか」と。自分自身全く状況がわからなくて、その後になってようやく、「あ、そういうことだったのか」と気づきました(笑)。それまでは自分が作ったものを「作品」としてあまり意識をしていませんでしたし、作品を白い手袋をして扱うっていうことにまず驚いたりして(笑)。
─高校卒業と同時にカイカイキキに所属されて、同時に専門学校も通っていらしたとのことですが、所属される前、つまり社会的に「アーティスト」になる前と後で、何か状況や考え方に変化はありましたか?
佐藤:もうすっごい変わりましたね(笑)。それまでは本当に楽しくて作品を作っているだけっていうかんじでしたから。でも、作ること自体の楽しさは何も変わりません。逆にその作る楽しさ以外のことが全て、180度変わったっていうかんじなのかなあ。観る人がいることを考えたり、作ることに〆切があったり。

─佐藤さんの作品を見ると、何かを訴えかけるものというよりは、ごく日常的な情景を表現していますよね。
佐藤:そうですね、私はいつもアトリエまでの通勤途中に写真を撮ることが多いのですが、「昨日は気づかなかったのにここに花が咲いていた」とか、「あそこに変な看板があった」とか、そういう日常の中の楽しさを見つけるのがすごく好きなんです。だから電車に乗っていても、窓の外の景色を見ているだけで、すごくワクワクするし、楽しい。逆に他の人が楽しいもの、例えばテレビゲームとかの楽しさはよくわからなくって、もう、ただ外を見ているだけで楽しいんです。
─そうして撮られた写真の上に絵が乗っかるわけですが、どんな想いで写真の上に絵を描かれているんですか?

佐藤:この風景の中にこういう人がいたらいいな、とか、見えてはいないけど本当はこういう世界なのかもしれないな、とか、そういう妄想をして描いていくことが多いですね。写真を最初から撮る人だったら抵抗があったかもしれないけど、私の場合は昔から紙袋にもチラシの裏にも絵を描いていて、その延長線のようなものだったので、あまり抵抗がなく描けました。
─なるほど。きっとそういった、みんなが日常を生きていて見過ごすような「楽しさ」や「ワクワク」が佐藤さんの頭の中には無限に広がっているんですね。毎日が海外旅行的なワクワク感、って言ったら語弊があるかもしれませんが、そういう日常への視点を教えてくれるような気がします。でも、こういった作品を言葉で説明するのって大変ですよね。
佐藤:そうなんですよね。けっこうむずかしいです。でも、言葉で細かく説明するより、最近はもっと単語で表現できないかな、と思っていて。例えば三つの単語を組み合わせたら、なんとなくイメージがわかったり。普段から詩を読んだりしているので文章で説明するよりそっちのほうがしっくりきそうな気がしています。
─今回の初の個展は通常の展示だけではなく、会場内に喫茶店「千歳緑」をオープンするなどおもしろい試みをされてましたが、この「千歳緑」は元々ご家族でやっていたお店なんですよね?
佐藤:そうです。高円寺で3週間だけやっていたお店なんです。

─3週間だけっていうと、何かあったんですか?
佐藤:元々電車の運転手をしていた父がはじめたお店だったんですけど、3週間したらお金がなくなっちゃって(笑)。ほんとなら、そういうことも考えて最初はある程度お金を準備しておくんでしょうけど、ウチの家族はきっとそうじゃないんでしょうね。店舗の運営期間より準備期間の方が長かったんじゃないかな。幻のお店ですよ(笑)。私も準備期間や開店してからの3週間中、たまに手伝ったりしてました。父は昔、詩を書いたりしていたようで、仕事を始めてからは仕事一筋という感じでしたから、きっとやりたかったことがいっぱいたまっていたんだと思うんです。父が「千歳緑」をはじめてからわかったことですね。
─じゃあ、お父さんの夢が佐藤さんの個展で復活したんですね。
佐藤:そうなんです。だから個展のときにすごくうれしそうにしてくれてよかった。元々日曜日だけのカフェの運営予定だったのに、会社を休んでまで自分から来てくれたりして。父は、そこが本物のカフェみたいに、きびきび働いて過ごしてました。
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