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カンヌ受賞作公開直前 黒沢清監督インタビュー
9月27日(土)より、恵比寿ガーデンシネマ他にて公開が始まる黒沢清監督の新作『トウキョウソナタ』は、「真っ向から親と子のドラマ」を描いた自身初めての作品となった。キャストに香川照之、小泉今日子、役所広司など、日本が誇る演技者たちを迎え、第61回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門・審査員賞を受賞した。われわれが「家庭の中で抱えている小さな問題」が、「世界の問題でもあった」ことを証明した本作は、まさに黒沢氏でしか創り出すことのできない、独自の魅力をたたえている。このたび、作品に込めたさまざまな「チャレンジ」について、じっくりとお話をうかがった。
(インタビュー&テキスト:小林宏彰 撮影:柏木ゆか)
黒沢清(くろさわ・きよし)
1955年7月19日兵庫県生まれ。立教大学在学中より8mm映画を撮り始め『しがらみ学園』で1980年度ぴあフィルム・フェスティバルの入賞を果たす。その後83年に『神田川淫乱戦争』でデビューし、『勝手にしやがれ!!』シリーズ(95〜96年)や『復讐 THE REVENGE』シリーズ(97年)等を監督。97年に『CURE』を発表し、その後も『大いなる幻影』(99年)、『カリスマ』(00年)、『アカルイミライ』(03年)などを立て続けに発表し、今回08年公開の『トウキョウソナタ』で第61回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門・審査員賞を受賞した。
映画「トウキョウソナタ」公式サイト
演技における新鮮さを大事にしています
─黒沢清監督の新作『トウキョウソナタ』は、父親、母親、長男、次男の四人家族の人間模様を中心にした物語ですが、誰もが楽しめる素晴らしい作品で、とても感動的でした。カンヌ国際映画祭「ある視点」部門で審査員賞を受賞されたのも記憶に新しいですが、さらに去る7月10〜20日、インドのデリーにて開催された「オシアンズ・シネファン 第10回アジア・アラブ映画祭」コンペティション部門で、『トウキョウソナタ』が大賞を受賞しましたね。率直なご感想はいかがでしょうか?
黒沢:映画祭に僕の映画が出品されていることは知っていたんですが、賞の対象になっているとは全然知りませんでした。受賞したという知らせを受けて、非常にびっくりしましたね。一等賞をもらうのは初めてなので、単純にうれしいのと、やや気恥ずかしい気持ちがあります。他にどういった作品が出ていたのか把握していないんですけれども、『トウキョウソナタ』は絢爛豪華でインパクトがあるわけではなく、地味な部類の映画ですので、大賞は気恥ずかしいですね。おそらくインドでは、家族に対する考え方が、日本とは欧米以上に違うだろうと想像しますが、この映画を楽しんで見ていただけたのであれば、非常にうれしいことですね。

─主要キャストをはじめとして、役者の演技が素晴らしかったですね。監督から役者たちに、具体的になにか言葉をかけるようなことはあったのでしょうか。

黒沢:いや、特にないですね。全面的に信頼していますので。信頼している、ということが、たぶん一番大きな役目だったと思います。演技をする位置だとか、時間の配分だとか、最低限の段取りしかしていないですね。それが、役者さんが力を出すためには、一番いいんじゃないかなと思います。これまでの経験では、何か言うとろくなことがないんですよ(笑)。素晴らしいことが言えれば、もちろんいいんでしょうが。
─役者による脚本の解釈を、なるべくそのまま活かす、という方法なのでしょうか?
黒沢:基本的にはそうですね。演技における新鮮さ、というものを大事にしていますので、テストもあまりしないです。俳優が安心した状態で自由に、あまり考えずにふっとやってしまうことを活かしたいですね。何度もテストをやって相手の出方がわかってしまうと、演技が固まってきてしまいますが、僕は演技以前に、役者がふっとやってしまうことをなるべく取り入れたいんです。もちろんセリフは書いてある通りのものをやってもらうんですが、ある種の即興性というか、初めて口にするときの新鮮さを大事にしたいんですね。
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