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カンヌ受賞作公開直前 黒沢清監督インタビュー

カンヌ受賞作公開直前 黒沢清監督インタビューをdel.icio.usに追加 このエントリーをはてなブックマークに追加 カンヌ受賞作公開直前 黒沢清監督インタビューをlivedoorクリップに追加 カンヌ受賞作公開直前 黒沢清監督インタビューをlivedoorクリップに追加 (2008/09/16)

人間を、可能な限りたくさん出したい

─次にキャスト以外のことについてもお聞きしたいのですが、映画の冒頭は、四人家族の住む街に嵐がやってきて、家の中にある新聞紙やマンガ雑誌が、風によってパラパラとめくられるというシーンですね。あたかもモノが生命を持っているかのような、ある種の不気味さを感じさせるシーンだと思いましたが。

黒沢清監督インタビュー

黒沢:そうですね…、僕は取り立てて要所要所で怖くしてやろうとは思っていないんですが、習性からそうなってしまうんでしょうかね。ただ、この映画では、四人家族の持つ「危うさ」を出そうとは努力しました。彼らはギリギリのところで家族であることを保ってはいますが、ちょっとしたきっかけで、すぐにバラバラになりかねない。なんでもない会話や食事の光景、またはなんでもない部屋を映していても、少しでもなにかが起これば、この家だって廃墟になってしまいかねない。ただ、僕の場合は、常識的なところよりはちょっとやりすぎてしまうので、異様な不気味さをたたえてしまうのかもしれません。

─黒沢さんは、『映画はおそろしい』(青土社)というご著書の中で、映画制作はロケ地にひきずられるものだとおっしゃっていますね。ロケ場所から得るインスピレーションが、映画を自分が撮ろうと思っていたものから全く異なるものにしてしまうことがある、と。『トウキョウソナタ』では、ハローワークや食料の配給場所など、変わった印象を受ける場所がいくつか登場しますが、何か監督ご自身に訴えかけてくる魅力があったのでしょうか。

黒沢清監督インタビュー

黒沢:おっしゃるように、場所に左右されている面はありますね。こんな場所なんだから、こんな風に人がいたほうがいいんじゃないだろうかだとか、カメラをここに置きたいから、人はここにいないと映らないだとか。いまご指摘されたシーンについては、可能な限り人をたくさん出すというチャレンジをした場面なんです。これまでの作品では、ある場所でうごめく人々は、だいたい主人公だったわけです。それ以外には、誰もいない。ですが、今回はできる限り、主人公以外の人をゾロゾロと配置したんですね。そのことで、より奇妙な感じが強調されたのかもしれません。エキストラが100人以上いらっしゃることもあり、慣れていないので難しかったのですが、面白い体験でした。

─なぜ、人をたくさん出そうとしたのでしょうか?

黒沢:これまでの作品で、人をあまり出してこなかったので、飽きてしまったんですね。ホラー映画を作ることが多かったので、誰もいない街という設定は不気味で効果的でしたが、この映画ではホラー色をなるべく消したかったんです。

撮影の面白さは「不自由さ」にあるんです

─また今回の作品で、家族が食卓をかこんで食事をするシーンなど、家の中を非常に美しく撮影されていて、画面の力にとても心を動かされました。どんな工夫をされたのでしょうか?

黒沢清監督インタビュー

黒沢:じつは、家族が住んでいる家の中はセットなんですよ。外側は本物ですけれども。僕は、セットの撮影って、基本的には好きじゃないんです。なぜなら、先ほども話題になりましたが、あるロケ場所に行って、その面白さを発見する、といった体験ができないからなんですよ。ここってこうなってるんだ、面白いな〜というのを発見して、撮影当日の天候や気温、風が吹いたり、思わぬところに陽が差し込んできたり、周囲のいろいろな影響を受けて、ひとつひとつのカットが豊かになっていくのが撮影の面白さなんですが、セットではそれがないんです。扇風機を回さないと風は吹きませんし、明かりをつけないと真っ暗で、雨も降らない。そこで今回は、セットでありながらも、可能な限りセットではないかのように撮ったんですよ。天井も全部作ったんですが、昼間は外から太陽が差し込んでいる設定にして、人工の光を太陽の光のように見せました。カメラは、窓の外や柱の向こうなど、障害物が多くて撮影しづらいところに置き、アングルを一生懸命探しながら撮ることにしました。この不自由さが、豊かさにつながっていると思っています。そういったあたりを見ていただけると、本当に嬉しいですね。

─それでは最後の質問ですが、黒沢さんは「映画史的に正しい」映画について言及されることがありますね。この映画を作られる上で、そういったことを意識された点はありますか?

黒沢:そうですね、なにか理屈を超えた形で、ある祝福がこの家族の上に訪れるという、それはつまり音楽ということなんですが、観客の方にはぜひ理屈を超えたある感覚によって、何かを感じ取っていただければうれしいです。映画の正しさって理屈だけではなくて、感覚的な正しさもある。この作品がそうなっていればとてもうれしいですね。

WORKS

『トウキョウソナタ』 

2008年9月27日(土)より恵比寿ガーデンシネマ他にて公開
監督:黒沢清
脚本:Max Mannix、黒沢清、田中幸子
出演:
香川照之
小泉今日子
小柳友
井之脇海
津田寛治
井川遥
役所広司
ほか
2008年/日本、オランダ、香港/カラー/119分/
配給:ピックス
映画「トウキョウソナタ」公式サイト

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