それによって利益を得る人たちがいるからっていうしょうもない理由で狭い発想におかれてる人間が、すごく悲しく、同時に興味深く思える。
―AOKIさんの音は一般的に「エレクトロニカ」と呼ばれていますが、放送事故とまで言われた音が、今はポップ・ミュージックとして扱われるようになったのって、YMOのお三方の影響が大きいと思うのですが。
AOKI:うん、ホントそう思います。若いときは自分はもっとアホやったから、幼稚な競争主義の発想を元に、有名人が来たらそのシーンが荒らされるってイメージだったんですね。流行ってるからって、いきなり有名人が大資本で来て「バーン!」ってやって、「飽きた!」ってなったら、それでシーンが終わると思い込んでたもん。だから「やばい!」と思ってたら、みなさん僕の音楽を聴いててくれて、優しく受け止めてくれて(笑)。誰も理解してくれないすごく狭いシーンだったのが、かなりの枚数行くぐらいのシーンになったのは、大御所の人たちが注目して、参入してくれたおかげで、今の自分があるのもそのおかげ。そのことは心から感謝してますね。
―「エレクトロニカ」という括り自体はどのように捉えていますか?
AOKI:基本的にジャンルはよくわからないから、なんて呼んでもいいけど、「僕はこのジャンルの音楽作ってます」っていう人は、もっと自由になったらいいやんって思う(笑)。車みたいなもんで、ワゴンとか軽(自動車)とかスポーツカーとかいっぱいあって、トラックばっかりずっと運転してるんやなくて、トラック好きやけど車高を低くしてみようとか、シートをカーボンにしてみようとか、そういうノリ。トラックなんかレーシングカーなんかわからへん、そうなったら分類っていう概念自体アホらしくなってくると思う。

AOKI takamasa photo by Yuna Yagi
―確かにそうですね。
AOKI:例えば、白人と黒人など、人種が混血すればスマートな子供が生まれる、それは進化なんです。混じるのが当たり前。でも混じって頭良くなったら困る人たちがいるってこと。一般的にはパワフルな人たちがメディアを牛耳るから、人間を狭い範囲の発想にとどめておこうとするわけ。どんどん個別化して、分裂させて、コントロールする。情報の行き来をしにくくして、お互いの悪口を中で流したら、余裕で喧嘩するでしょ? それによって利益を得る人たちがいるからっていうしょうもない理由で狭い発想におかれてる人間が、すごく悲しく、同時に興味深く思える。
みんなが今の地球の文明としては幼稚な金融システムとか、戦争ビジネスなんかに疑問を持てるような時代になったらいいなと思う。
―拠点を海外に移されたのも、今言ったような広い発想を持つことの重要性が根本にあると言えますか?
AOKI:僕はラッキーなことに、ちっちゃい頃から、うちのおかんが外国の映画を見せてくれたり、音楽を聴かせてくれたりしたんですよ。でもおじいちゃんは三味線やってて、おとんは詩吟やってたから、そういうのも教えてもらってて、着物も好きやし、スケボーも好きっていう(笑)。大正時代にすごく憧れがあって、帽子被って、着物着て、キセル持って、車乗るっていう、あれってすごくハイブリッドでかっこいいなと思う。でも、ヨーロッパの人は、ヨーロッパの文化が今この地球を覆っている事もあって一番やと思ってる人が多いわけ。元々着物着てた人たちが、自分らの服着て、自分らと同じような建物建ててるんやもん。例えば、ヨーロッパの人たちがいきなりお箸使い始めて、着物着始めたら日本人ちょっとスノッビーになると思えへん?
―ああ、それはなるでしょうねえ。
AOKI:そうでない人もいるけど、それが一般的な白人の視点やってことをわかったの。でもよう考えたら、江戸時代の方が進歩してる部分もあるわけ。ゴミ出さない、100%リサイクル社会、300年間おっきな戦争がない、これ全文明の中でも日本だけ。人を殺す必要がないから、殺しの技術が芸術にまでいっちゃった。居合い切り、抜刀術…すごい文化やで。それを痛感して、自分がちょっと日本嫌いとか大阪嫌いとか思ってたのが、めちゃめちゃ恥ずかしくなって。
―音楽制作の環境という意味での日本と海外の差はどうですか?
AOKI:意識しないと理解できない言語が周りに溢れてるから、意識せえへんかったら、どんな街中でも一人になれる。自分をむき出しにして、自分と向き合える。日本ではある程度は全部理解できるから、逆に意識的にカットしないとしんどくなるというか、それでホントに必要な部分までカットしちゃうっていうのも感じて。それで、英語はわかっちゃうし、アメリカは現段階では戦争屋さんやから行きたくないと思って、ヨーロッパは、地球を運営してる人たちの本拠地だから、人間がどう統治されてるかを肌で感じたいっていうのもあって。
―今年(2009年)は日本でライブをする機会も多かったと思いますが、日本に戻って来ようとは思いませんか?
AOKI:その気持ちはすごくあるんだけど、その気持ちをグッと押さえて、地球で生きようと思って。音楽を通じて、気がついたら世界中に何ぼでも泊まれよって人がいっぱいいるんですよ。それでええやと思って、自分がいたいところで生きようと。
―では最後に、AOKIさんの表現活動の根本となるモチベーションを教えてください。
AOKI:デビューさせてもらってわかったのは、求められてるのは、いかにユニークであるか、他の人が踏めない一歩が踏めるかってことなんやけど、最近みんな同じものに「あっ!」ってなりつつあるような気がします。それってホント面白くないし、自由じゃない。今まではそういう発想を歌詞に込めて、直接過ぎて撃たれちゃったりした人もいたけど、もっと自由になったらいいっていう発想を持って、歌詞のない音楽を作ったり、写真を撮ったりすれば、それに共感した人にスイッチが入んねん。これは絶対そうやねん。人間はその人が変わらない限り、絶対変われへんから、その人をコントロールしようとする何かにNOと言えるスイッチが入るような活動をしたい。もちろん、僕のバイオリズムに全く合わない人もいると思うけど、それはそれでいい、それは個性やし。僕はできる限り自分の周波数を幅広くして、みんなが今の地球の未熟な金融システムとか、戦争ビジネスなんかに疑問を持てるような時代になったらいいなと思う。

AOKI takamasa
『FRACTALIZED』
2010年1月27日発売
価格:2,800円(税込)
RZCM-46434
1. RESCUE - AOKI takamasa remix / HASYMO
2. ASCARI_dry_condition - self remix / AOKI takamasa
3. MARS - AOKI takamasa remix / SKETCH SHOW
4. FRACTALIZED / AOKI takamasa
5. War&Peace - AOKI takamasa remix / Ryuichi Sakamoto
6. LOVE BITES - self remix / AOKI takamasa
7. Music for Sweet Room on the Orbit of the Earth - self remix / AOKI takamasa
8. composition 0919 - AOKI takamasa remix / Ryuichi Sakamoto
9. re-platform - AOKI takamasa remix / Yoshihiro HANNO






















