原田郁子×ウィスット・ポンニミットの「いいこと」探し

クラムボンの原田郁子と、タイの人気マンガ家で、日本ではタムくんの愛称で知られるウィスット・ポンニミットが、コラボレーションアルバム『Baan』を完成させた。CDだけではなく、絵や写真が詰まったブックレットと、タムくんが手掛けた全曲のPVが収められたDVDがセットになった、この二人ならではの作品となっている。日常から生まれた絵や言葉が、素朴な音色で色づき、結果的に様々な大切なことに気づかせてくれる楽曲。このセットからは、そんな今作の過程も見えるようだ。

2010年に栃木県・那須どうぶつ王国で行われた初めての共演を皮切りに、交流を深めていった二人。日本とタイの距離もあり、頻繁には会えていなかったということが信じられないほど、息の合ったコラボレーションを見せている。タイにあるタムくんの自宅でレコーディングされたこともあり、めまぐるしい日本の都会で聴いていると、ふっと我に帰れるような居心地のよさが感じられる。タムくんが話してくれた易しい日本語の響きも相まって、二人の対談からは、作品の話にとどまらない、今を生きるヒントがたくさん浮かび上がってきた。

『ゆれないこころ展』で演奏するのに、ゲストがいたらいいなって思って。それで那須のライブがよかったのを思い出して、郁ちゃんを呼んだ。(タム)

―まず、お二人の出会いというのは?

原田:初めて会ったのは、2010年に那須でやったライブ(2010年に行われた『SPECTACLE IN THE FARM』)?

タム:そんなことないよ(笑)。

左から:原田郁子、ウィスット・ポンニミット
左から:原田郁子、ウィスット・ポンニミット

―あれ?(笑)

原田:あ、その前に会ってた?(笑)

タム:うん。誰かに、「この人、郁ちゃんだよ」って紹介されたけど、ふーん、で終わり。友達にはならなかった。

原田:それっきりだったんだ(笑)。私は、タムくんのマンガ、読んでみたよ。

タム:マジで?

原田:うん。アニメーションにあわせて、ピアノ弾いたりアフレコしたりしてるイベントも、観にいった。


タム:そういうライブを郁ちゃんと一緒にやったら? って言われて、那須のライブに向けてリハーサルしたんだよね。でも、そのときは二人で作ったオリジナルの曲はなくて、お互いの曲をやったりしていただけ。

原田:タムくんは普段タイに住んでるから、そんなにしょっちゅう連絡をとることもなかったし、そのライブの後は、しばらく会わなかったよね。

―どういうタイミングで再会したのでしょう?

タム:2011年に来日して、イラストやドローイングの個展をやることになって。

―東日本大震災後が起こった後、丸の内ハウスで開催した『タムくんのゆれないこころ展』ですね。タムくんが「ゆれないこころ」というイラストと人形を日本に贈ってくれて、そこには「どんなことが起こってもゆれないこころを持ち続けよう」というメッセージが込められていたとか。

ゆれないこころ
ゆれないこころ

タム:そう。そのときにライブもやることになったんだけど、一人だと寂しいし、僕はそんなに演奏できるわけじゃないから、ゲストがいたらいいなって思って。それで那須のライブがよかったのを思い出して、郁ちゃんを呼んだ。

原田:そのときに、初めて二人で作った曲ができたんだよね。それが“ゆれないこころ”です。

めっちゃ疲れてたけど、やるしかない、今しかないって思った。(タム)

―今回の『Baan』の中にも入っている曲ですね。ブックレットの帯には「会う度に曲ができていった」と書いてありましたが、どんなふうにして曲ができていったのでしょう?

タム:はじめは新しい曲を作るつもりはなかったんだよね。展覧会の中で(後に歌詞になる)詩というか文章は貼ってたんだけど、ライブではお互いの曲をやるつもりだった。

原田:うん。ライブの前日に、吉祥寺のスタジオに入って、その後、蕎麦屋に行ったんだよね。タムくんは日本に着いたばかりだったし、バンコクの洪水がすごかった時期でもあって、すごく疲れてて、なんにも食べてないって言ってたから、「蕎麦でも食べる?」って。それで、蕎麦を待ってる間に「最近どう? 曲作ってる?」ってタムくんに聞かれたから「いや、作ってない。なんか言葉が全然出てこないよ」って話して。そしたら「作ってみる?」って『ゆれないこころ展』の言葉を見せてくれた。「これ、曲になるかな?」って聞かれたから、「なるよ! これもう歌みたいだよ」って。

タム:僕は曲を作るときに、ピアノを鳴らしてみたり、「ふんふんふん〜」っていう鼻歌をまとめることぐらいしかできないから、言葉に曲をつけられない。でも、文章は書けるから、郁ちゃんにこれを歌詞にしたらどう? って見せて。

原田:そのまま蕎麦屋で、ギター出してね。

タム:それで、弾いちゃったんだよね。

原田郁子、ウィスット・ポンニミット

―え、蕎麦屋で!?

原田:うん(笑)。曲のはじめのところは、そこでできた。

タム:お客さんが全然いなくて、お店の人にもいいよって言われたから(笑)。蕎麦を食べ終わって、曲の続きはどうする? って言ったら、郁ちゃんがさっきのスタジオに戻ろうよって。めっちゃ疲れてたけど、やるしかない、今しかないって思った。二人だけで一緒にいることって、なかなかなかったから。

原田:そうだね。いつもは誰かスタッフが一緒だけど、その時はたまたま二人で。二人でご飯食べたの、初めてかもね。

タム:そう。郁ちゃんだけ何で残ってるんだろう? って思った。

原田:(笑)。

タム:それでスタジオに戻って、郁ちゃんがピアノを弾いて、僕はコードが弾けないからドラムを叩いて、一緒にメロディーを考えた。「これで曲作りが終わるの寂しいな」と思いながら、二人で曲の終わりのところの歌詞を書いた。そうやって曲ができて、二人でいいねー! ってなって、次の日のライブで演奏したの。

―二人で蕎麦屋に行かなかったら、お店がガラガラじゃなかったら、スタッフが一緒だったら……いろんな偶然が重なって、この曲はできていったんですね。この曲がなかったらアルバムもなかったわけですし。

原田:確かに。そういうふうに書いてください(笑)。

タム:いい感じで言ってくれてるよね(笑)。

<揺れないこころができると 揺れることがなくなる>って歌ったときに、やっぱりものすごい空気になって。静かに静かに響いていくのがわかった。(原田)

―これ以外の曲は、どのようにできあがっていったんですか?

原田:次にできたのは、“ソフトクリーム”かな。


タム:郁ちゃんがタイに来たんだよね。

原田:うん。Jiroっていうキーパーソンがいて、『ゆれないこころ展』のライブを見て、「タイでも二人でやってほしい」って言ってくれて、彼がオーガナイズするイベントに出演しました。私はタイに行くの、生まれて初めてだったから、少し早めに行って、タムくんちに泊まらせてもらってて。その時に“ソフトクリーム”っていう曲ができた。

タム:僕が描いた4コママンガを見せて、郁ちゃんにメロディーつけてみてってお願いした。これ、マンガだけど詩みたいなものだから。

『Baan』のブックレット
『Baan』のブックレット

原田:うん。そうやって歌を作ったことなかったから、面白かった。ライブでは、その4コママンガを1コマずつ映しながら演奏したんだよね。その頃、『ゆれないこころ展』で演奏した“ゆれないこころ”にタムくんがアニメーションをつけたものがあって、ウェブサイトで見れるようになってて、タイのライブでその映像に合わせて“ゆれないこころ”を演奏しました。そこには、日本語、タイ語、英語で、歌の歌詞が出てくるから、なんて歌ってるかがわかる。それで、<揺れないこころができると 揺れることがなくなる>って歌ったときに、やっぱりものすごい空気になって。静かに静かに響いていくのがわかった。この曲は、やっぱりすごい力があるんだなーって。ライブのあと、タムくんのお姉さんにお会いしたら、涙が出たって言ってた。

タム:えー、俺にはそんなこと言ってなかったよ(笑)。

―とてもハッとする歌詞ですが、実際のライブでも特別な伝わり方をしたのですね。着々と二人の曲が増えていったようですが、その頃アルバムを作ることは考えていました?

原田:いや、まだ何も。

―では、アルバムを作ろうと思ったきっかけは何だったのでしょう?

原田:タイで2回ライブをやらせてもらったあとは、キチムと、旧グッゲンハイム邸で、タムくんとPOD(タイのオルタナティブバンド・Moderndogのメンバー)と私の三人でライブをやって。PODが参加した三人バージョンの“ゆれないこころ”もすごくよくて。だんだん、これはちゃんと録った方がいいなーって思ったんですね。

左から:POD(Moderndog)、原田郁子、ウィスット・ポンニミット

タム:それで、タイに来てちゃんと録った。

原田:うん。あ、タイの『Big Mountain』っていう野外フェスでも演ったね。そうか、だから、タムくんと会ったのは、回数で言うとたぶん、両手で数えられるくらいしかないんだけど、いつもいいんだね。

みんな、もう持ってるのに、何でどっか探しに行っちゃうの? そのまんま出せばいいじゃんって。(タム)

―そこで今年1月、郁子さんがレコーディングのためにタイに行ったんですね。アルバムを作るにあたって、何かテーマはあったんですか?

原田:ないよね。……ん? タム、くん? 眠い?(笑)

タム:……感動。いや、冗談。眠い(笑)。

原田:感動……しちゃったね、俺たちのストーリーに(笑)。

タム:(笑)。テーマはなかったんだけど、レコーディングの時間が10日間くらいあったよね。それで、せっかく時間があるんだから、スタジオじゃなくて僕のうちでゆっくりやろうよって言った。そっちのほうがやりたいことがすぐにできるし、スタジオだと時間が決まってて、面倒くさいし。うちに機械を置いて、いつでも好きなときに録音できる状態にしておいて、鳥の声が入っててもよければうちでやろうよって。そしたらみんなOKしてくれて。僕にとっては、すごくラクだった(笑)。

制作風景

原田:タムくんちにいると、日本で聞いたことがないような面白い声の鳥が鳴いてて。たとえばその声をレコーダーで録って、スタジオで録音したトラックに重ねて、家にいるみたいな雰囲気にすることもできるけど。でもね、タムくんちがリラックスできて、居心地がいいんだから、そこでそのままを録るのが一番いいよねって。

タム:僕はそんなに音楽ができるわけじゃないから、スタジオに行ったり、そういうちゃんとしたものにしようとするとできないの。でも、雰囲気が気持ちいいものを録ることなら、僕にもできる。

―タムくんの家はどんな環境なんですか?

タム:山っていうわけじゃないけど、ローカルなところ。ビルはない。100円のランチとか、ご飯が安い。タイも街のほうに行くと、もうオシャレになってるけど、僕の近所は上半身裸でサンダル、パンツはドラえもん柄とかの人が歩いてたりして、ゆっくりしてる(笑)。僕、家が好きだから、ホントにスタジオとか行きたくなくて。スタジオって座るとこもないし、休憩できないよね。そういうふうに仕事するより、幸せなことってあると思うし。

原田郁子、ウィスット・ポンニミット

―それって、アルバムで伝えたかったことに繋がってきたりします?

タム:まあ、幸せになろうっていうよりは、持ってるものでいいじゃん、って感じ。みんな、もう持ってるのに、何でどっか探しに行っちゃうの? そのまんま出せばいいじゃんって。例えば、僕が持ってる音楽の技術は少ないから、ギターを失敗しても、それでいいし。郁ちゃんと作った曲にしても、二人しかいないんだから、無理してオーケストラを入れようとも思わない。

原田:『Baan』って意味はさ、家って意味もあるけど、「気持ちいいところ」って意味もあるって、こないだ話したね。

タム:うん。落ち着くとか、そういう意味。

原田:「二人であそこまで登ってみよう、そのために体力作りして、靴を買って、上着も買って……」という方法もあるけどね、タムくんとはその必要がなかった。機材はほんとに最小限で、あとはそれぞれのLIFEを録ろうって。エンジニアのzAkさんと相談しながら、あるもので工夫して、料理するみたいな。

制作風景

―無理に頑張らなくても、美味しいものはできるよっていう?

原田:うーんと、「頑張ろう」っていうのも、「頑張らなくていいよ」っていうのも、言葉にするとどっちも違和感があるかなー。そうじゃなくて、ただ「もうそこにあるよ」って。自分の内側に。

タム:頑張らないわけじゃないよね。

原田:うん。

―今あるものを認めるって感じ。

タム:うん、認める。それに、みんな見てないよね。もう持ってるのに。うちに使えるものいっぱいあるのに、また買う。そんな気がする。

原田:ずっとインターネットとか携帯見てたらさ、あるもの、忘れちゃうね。

タム:それで、貧乏になって、外に行けなくなって、やっとうちがいいじゃんってことがわかる。だから、このアルバムは、わざと貧乏に作ったんだよね(笑)。スタジオに行かない。練習もしない。そんな感じ。

考えても意味ないし、気にしても意味ないからね。結局、みんなが欲しいのはスペース、余裕なの。(タム)

タム:あと、僕、仕事で忙しかったしね。

原田:うん。タムくんは日本にいるときも忙しいけど、タイにいるときも、ずっとマンガを描いてる。

―タムくんのマンガは日本でもすごく人気があるから、本当に忙しいんだろうと思うんですけど、まったくその忙しさを感じさせない曲が詰まっていますよね。

タム:ずっとマンガ描いてて、音楽が休憩っていう感じだったから(笑)。だって、気持ちいいじゃん! 何で気持ちいいかっていうと、そんなに無理しないからだよ。マンガは一人で描くしかないけど、でもこれは郁ちゃんがいるし(笑)。

原田:(笑)。けっこう、別々のことしてたね。タムくんが絵を描いている間、私はマッサージに行ったり、市場行ったり、ピアノ弾いたり、曲作ったり。タムくんの手があいたら、聴いてもらって。

タム:最高! とか、ここはイヤとか、はっきり言ったよね。

原田:いつも判断が速い。それでタムくんはまたアトリエに戻っていって。そういうのもね、家だからできた。

制作風景

―4コママンガから作った曲って、結構ありますか?

原田:このアルバムだと3曲、かな。ブックレットに、もとになった4コママンガを、そのまま載せてます。

タム:でも、二人で歌詞を書いた曲もあるよ。

原田:そうだね。“いいこと”は、タムくんが携帯にメモしてた言葉から、二人で書いていきました。そういえば、バンコクと東京とで、メールのやり取りだけで作った曲って1つもないね。

―全曲、直接会って作ったんですね。

原田:はい。それに、タムくんが全曲映像を作ってくれました。どれもおかしくて、楽しいね。

原田郁子

―なるほど。ちょっと、“いいこと”の歌詞の話に戻りたいんですけど、タムくんは携帯に言葉をメモしたときに、どういうことを考えていたんですか?

タム:僕はただ、「やらなくてもいいこと」っていう言葉の響きが、聞いているだけで気持ちいいなって思って。

原田:言葉が気持ちいいって感覚、面白いね。

タム:うん。それで今度は、「考えなくてもいいこと」っていうのを思いついて、これも気持ちいいでしょ。そうやって、頭の中をシンプルにしていったら、どんどん「やらなくてもいいこと」の種類が増えてきた。「見なくてもいいこと」とかね。それをメモしてたんだけど、郁ちゃんに見せたら、消しゴムで消すみたいに、「やらなくても」と「いいこと」の間に、スペースを空けてくれたの。そしたら<やらなくても いいこと>ってなって、「いいこと」が入ってる! すげえ! って思って(笑)。スペースを1個入れるだけで超かっこよくなったから、この言葉のリズムでメロディーをつけようってなった。この曲は、うまくできたよね(笑)。

原田:うん。タムくんは、そもそも曲を作ろうと思って言葉を選んでないけど、短くてシンプルだからいろんなことが広がる。だから、何も難しくなくて、私はピアノを弾きながら、「こういう感じ?」って聞くと、タムくんは「うん、いいね」とか「もうちょっとリズムほしい」とか、感覚的に言ってくれる。

タム:ここはもっとスペースが必要だよ、とか言うよね。まあ、“いいこと”は、歌詞がほんの少ししかないから、速く歌っちゃうと曲にならないってのもあったんだけど(笑)。

―タムくんは、日本に来る前は、もっと哲学的だったり、難しいことを考えていたと聞いたのですが、今のように「考えなくていい」という境地に至ったのはどうしてでしょう?

タム:僕、普段はマンガを描くのに忙しいから、だんだん余計なことがわかってくる。これは増やすと面倒くさい、これは考えると頭がごちゃごちゃするだけじゃんっていうのが見えてくる。それでだんだん捨てていって、だんだん考えなくなってきた。考えても意味ないし、気にしても意味ないからね。結局、みんなが欲しいのはスペース、余裕なの。お金が欲しいんじゃなくて、余裕が欲しいから働いてるでしょ? 例えば、「うちで気持ちよく寝ていたい」って思ってたり、欲しいのは誰にも負けない余裕……動物だったらライオンみたいな(笑)。誰だって何も怖くない状態にいたいじゃん? でも、実はみんなの中に余裕はあるの。わかってないだけ。

左から:ウィスット・ポンニミット、原田郁子

―と言うと?

タム:例えば、美味しいご飯やオシャレなところを求めて、どこかに行っちゃうでしょ。自分がオシャレだって認めてほしいから。でも、実は落ち着いて家にいられる状態が、一番余裕があるじゃん。周りのみんながすごくなり過ぎてて、自分もすごくならなきゃいけないって思いがちだけど、もう負けてもいいやって、ダサくていいやって思えば、そこにホントの幸せが見つかる。

―みんなそれに気づいてないんですね。

原田:タムくんの作品は、いつも空間があって、広いよね。だから音楽に近いというか、のびのびできるんだね。

タム:難しい曲になっちゃったのも何曲かあったんだけど、ボツにしたね。そういうときは、完成しないといけないって思うんじゃなく、降参して、次に行く。それでいいじゃん。自分はそんな難しいことできるレベルじゃないし、今ある時間でそこまで行こうとしたら疲れちゃうだけ。「私これでいいじゃん」「私これしかできない」って、認めるのね。

―郁子さん自身は、自分らしいペースをどういうふうに保っているのでしょう?

原田:うーん、自分のペースでいるっていうのは、わりとちっちゃい頃からずっとそうで。だけど、音楽があるっていうのは本当に大きくて、日々、あらゆるバランスをとってるみたいです(笑)。「歌ってるときどんなことを考えているんですか?」とか「どんな想いで作った曲ですか?」って聞かれることがあるけど、自分の中は、常に空いてて、何もなくて、入ってきても出ていくし、流れてる、何かが。そして、音も鳴っていないくらい、静か。だから、「ツアー長くて大変ですね」って言われたりすると、うーん、大変って角度でものを見たことないなーって。面白いよって。(笑)。

タム:僕は大変って思うわ(しかめっつら)。

原田:(笑)。

タム:でも、そう思い続けると、余計な問題が増えるからね。

左から:原田郁子、ウィスット・ポンニミット

―ああ、ただ思うだけでも、エネルギーを使いますもんね。

タム:うん。いいほうに思えなかったら、何も考えないほうがいいよ。心配ってね、すごく意味ないことだと思う。5秒くらいはいいけどね(笑)、次に活かせるから。でも心配し続けることは問題解決にならない。

―何だかずっと頷きっぱなしです。作品には直接関係がないようで、全てが繋がっているお話を訊けたように思います。

原田:なんだろうね、ゆるくていいじゃんとか、無理しなくていいじゃんっていうムードは好きじゃなくて。そうじゃなくて、もう、余計なところに力を使わなくていいよねって。そういうのは若いときに散々やったから(笑)、それより、注ぐべきところに、じょうごみたいに、ちゃんと注いで、あとはゆったりと、余裕があった方が気持ちいいよね、っていう感じ、ですね。

リリース情報
原田郁子&ウィスット・ポンニミット
『Baan』(CD+DVD+BOOK)

2013年12月4日発売
価格:4,200円(税込)
COZP-810/1

[CD]
1. いいこと
2. あたま
3. ソフトクリーム
4. カオソーイ
5. supannikar(スパンニカー)
6. けむり
7. せっかく
8. ゆれないこころ
9. サワッディー
[DVD]
・ウィスット・ポンニミット制作によるCD収録全楽曲のPV収録
※ウィスット・ポンニミットの描き下ろしイラスト、ライブやタイでのレコーディング風景を捉えた写真などを収録したブックレットパッケージ

プロフィール
原田郁子(はらだ いくこ)

1975年 福岡生まれ。1995年「クラムボン」を結成。歌と鍵盤を担当。ソロ活動も行っており、2004年に『ピアノ』、2008年に『気配と余韻』、『銀河』のソロアルバムを発表。2010年5月には吉祥寺に多目的スペース「キチム」をオープンさせ、飲食とともにライブやイベントを行う場所を作る。最近では、演劇団体「マームとジプシー」の最新作『cocoon』の音楽を担当した。大宮エリーが作・演出するプラネタリウム「プラネタリウムのソナタ」の音楽とナレーションも行った。

ウィスット・ポンニミット

1976年、タイ、バンコク生まれ。愛称はタム。98年バンコクでマンガ家としてデビュー。マンガ代表作『ブランコ』『ヒーシーイット』『マムアン』。アニメーション作品にSAKEROCK、透明雑誌のPVなど。自作のアニメに音楽をつけるライブパフォーマンスを行う。バンコク在住。



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