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社会的テーマはダサいとか言ってられない 範宙遊泳インタビュー

社会的テーマはダサいとか言ってられない 範宙遊泳インタビュー

インタビュー・テキスト
前田愛実
2015/02/06
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Facebookやmixiでも、文字を通して他の身体とコミュニケーションする錯覚を起こしながら、僕たちは暮らしているんだと気づきました。

―ここ数年の範宙遊泳の作品では、スクリーンにプロジェクターで文字などを投影し、まるで登場人物の1人のように俳優の演技と絡ませる表現手法がとられています。映像ではなく、文字にしようと思ったのは何故なんですか?

山本:今の僕らの生活は、携帯やパソコンで文字に触れている時間がすごく長い。しかもメールってただの文字列なのに、イメージを喚起させられますよね。「お風呂入ってる」って書いてあったら、その人がお風呂に入ってメールを打っている様子が瞬時に浮かぶ。つまり僕たちは文字列の向こう側の世界を無意識に想像しているんです。FacebookやmixiなどのSNSでも、文字列を通して他の身体とコミュニケーションする錯覚を起こしながら、僕たちは暮らしているんだと気づきました。

『うまれてないからまだしねない』2014.4 撮影:amemiya yukitaka
『うまれてないからまだしねない』2014.4 撮影:amemiya yukitaka

―文字列が人に想像させる力に、戯曲や演出として可能性を感じた?

山本:あと、いわゆる台詞だけで演劇を展開させるっていうのが、僕にはできないかもしれないと思ったんです。

―会話劇ということですか。

山本:そうです。僕がやりたい演劇は、会話だけでは実現できないと思った。たとえば、登場人物がメールを受け取る場面があったとして、会話劇だと内容を読み上げるか、リアクションで内容を伝えなきゃいけない。その選択肢ってじつはすごく狭いですよね。そこが演劇の良いところだって言う人もいるけれど、僕には窮屈でした。だからメールの文面や、新聞にこんなことが書いてあったというのも「ばんっ!」って文字で出すんです。それにリアリティーを考えたら、90分間も話し続ける人たちっておかしいですよね。

『うまれてないからまだしねない』2014.4 撮影:amemiya yukitaka
『うまれてないからまだしねない』2014.4 撮影:amemiya yukitaka

―『うまれてないからまだしねない』を観たとき、文字と画像と演技を同時に観ていく感じが、漫画的だなとも思いました。

山本:アートディレクターのたかくらかずき(ドット絵作品でも有名なグラフィックデザイナー)が、漫画っぽいデザインに寄せてくれたっていうのもあると思います。歌舞伎の書き割り的なデザインでもありますよね。

―俳優と心が通い合っている「プロジェクター」という出演者の存在感を感じます。プロジェクションの光によって人影が映るシーンなど、「プロジェクター」の光のマントの中に俳優が包まれているみたいで印象的でした。ここに「機械ありき」ってことがあえて全面に出ていて、これはありそうで今までになかった感覚だぞって、すごく面白かった。

山本:今ある機械というかツールは最大限に駆使していいと思うんですけど、僕のやり方はすごく原始的ですよね。単純にそういう使い方が好きなんです。

『インザマッド(ただし太陽の下)』2014.8 撮影:amemiya yukitaka
『インザマッド(ただし太陽の下)』2014.8 撮影:amemiya yukitaka

『インザマッド(ただし太陽の下)』2014.8 撮影:amemiya yukitaka
『インザマッド(ただし太陽の下)』2014.8 撮影:amemiya yukitaka

―現代の方向性の1つのようにも感じます。ローテクなデジタルが可愛く見えたり、人間くさいテクノロジー感。それってたかくらさんのドット絵作品の世界観にも通じる気がします。

山本:たしかにそうですね、今言われて初めて気づいたんですが。僕のやっていることは、テクノロジーを使っても結局アナログみたいな表現になっている。たかくらも思いっきりデジタル技術を使っているけど、何かノスタルジックなんですよね。

日本人であるということは僕にとって大事なツールなんです。

―いよいよ『TPAM 2015』での『幼女X』の再演も迫っていますが、これまでのアジアでのコラボレーションを通して、範宙遊泳が大きく変化したことや、これから変えていきたいことは出てきましたか?

山本:社会との関わりをもっとちゃんと考えなくては、ということに至っています。作品内容としても、コミュニケーションとしても、個人としても。あと海外との繋がりはもっと増やしていきたいですね。どうしても日本と比較してしまうので、日本を遠くから見られるし距離もわかる。バイトと同じで自分の栄養になるので海外は大事です。と同時に、日本でしか作れない作品、たとえば日本の家制度をテーマにした作品など、日本で上演する意味を考えたものを1つやる必要があるなと感じています。もちろんそれを海外で上演するという展開になればいいですけど、そういうことは考えず、まずはあえてドメスティックなものを作りたい。

『国際舞台芸術ミーティング in 横浜 2015(TPAM in Yokohama 2015)』メインビジュアル
『国際舞台芸術ミーティング in 横浜 2015(TPAM in Yokohama 2015)』メインビジュアル

―山本さんにとって自分が日本人であることは、どういう意味を持っていますか?

山本:問題はたくさんありますが、日本人として生まれ育ったことをいかに利用できるかを考えています。国籍は変えられるかもしれませんが、自分が日本人であることはずっと変わらない。だったらそれを利用するしかない。もしも万が一、戦争が起きてしまったら、これは本当に仮定ですけど、海外に移住することだってあり得るかもしれません。そしてそこで日本人ということを利用して生きる。でも、こういうことが言えること自体がすごいことなんですよね。軍事政権のタイだったらたぶん言えません。みんな言葉に慎重なんですよ。日本人であるということは僕にとって大事なツールなんです。

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イベント情報

『国際舞台芸術ミーティング in 横浜 2015(TPAM in Yokohama 2015)』

2015年2月7日(土)~2月15日(日)
会場:神奈川県 横浜 ヨコハマ創造都市センター(YCC)、KAAT神奈川芸術劇場、BankART Studio NYKほか

参加作品:
TPAMディレクション
[野村政之ディレクション]
SCOT『トロイアの女』
ハイバイ『ヒッキー・カンクーントルネード』
範宙遊泳×Democrazy Theatre『幼女X(日本-タイ共同制作版)』
[横堀ふみディレクション]
ピチェ・クランチェン『Black & White』
黒沢美香&神戸ダンサーズ『jazzzzzzzzzzzzz-dance』
[宮永琢生ディレクション]
BricolaQ『演劇クエスト・横浜トワイライト編』
[タン・フクエンディレクション]
エコ・スプリヤント『Cry Jailolo』
ムラティ・スルヨダルモ『I LOVE YOU』『BORROW + EXERGIE – butter dance』
アイサ・ホクソン『Death of the Pole Dancer』『Macho Dancer』『Work in Progress “Host”』

TPAMコプロダクション
ジェローム・ベル×ピチェ・クランチェン『ピチェ・クランチェンと私』
相模友士郎『天使論』
シャオ・クゥ×ツゥ・ハン『Miniascape』
アジアン・アーティスト・インタビュー(ネットワーキングプログラム)

TPAMショーケース
artCORE『por la noche』
重力/Note『人形の家』
オペラシアターこんにゃく座『オペラ「白墨の輪」』
斎藤栗子、南弓子、かえるP、斎藤コン、大東京舞踏団、新宅一平『アニマル ラウンジ』
絹川友梨、インプロ・ワークス『完全即興3「にてひにて」』
革命アイドル暴走ちゃん『004 ゲリラ・ジャパン at 横濱』
カダムジャパン『東京ガラナ Showing+Workshop』
関かおりPUNCTUMUN『マアモント』
仕立て屋のサーカス -circo de sastre-『シャビの恋』『旅立ちのラウル』
大道寺梨乃『ソーシャルストリップ』
レナータ・ピオトロスカ『ポーランド若手振付家協働企画「Untitled」「Death. Exercises and variations」』
マームとジプシー『カタチノチガウ』
Sebastian Matthias & Team『study / groove space (Tokyo)』
So & Co.『ウニラム』
空転軌道『D.E.』
鈴木ユキオ×山川冬樹『Lay/ered』
岡登志子・垣尾優『手術室より』(ダンスアーカイヴプロジェクト2015)
大野慶人『タンゴ』(ダンスアーカイヴプロジェクト2015)
川口隆夫『大野一雄について』(ダンスアーカイヴプロジェクト2015)
プロジェクト大山『をどるばか』(ダンスアーカイヴプロジェクト2015)
goat、空間現代『Minimal Maximal Music』
空(utsubo)『リューシストラテ』
ももいろぞうさん『おもちゃ箱の中身は、』
鈴木優理子、キム・ボラ、中村蓉『横浜ダンスコレクションEX 受賞者公演』
開幕ペナントレース『1969 : A Space Odyssey ? Oddity !』
冨士山アネット、The Absence of the City Project『冨士山アネット“Attack On Dance”FujiyamaAnnette×Dance Theatre 4P国際共同制作“Black Tomatoes”』
S20 梅田宏明『Somatic Field Project + kinesis #1 – screen field』
アジアで上演するプロジェクト『5 調査と共有』
shelf『shelf volume 19 [deprived]』
岡崎藝術座『+51 アビアシオン, サンボルハ』
鮭スペアレ『ロミオとヂュリエット』
ミス・ユニバース『SSSLLLOOOWWW Network』
DEVIATE.CO『ダンスパフォーマンス「不/可視の領域」』
インテグレイテッド・ダンス・カンパニー響-Kyo『「知るということ」公開リハーサル』
声明の会・千年の聲『スパイラル「聲明」コンサートシリーズvol.23 千年の聲 明恵上人「四座講式」800年紀 — 語りものの源流』
井上大輔、イ・サンフン『日本-韓国ダンス交流プロジェクト DANCE CONNECTION 풀다/解」』
苫野美亜、新進プロジェクト『「新」コミュニケーション芸術プロジェクト ―哲学×ダンス―』

プロフィール

範宙遊泳(はんちゅうゆうえい)

2007年より東京を中心に活動する演劇集団。すべての脚本と演出を山本卓卓(やまもとすぐる)が手がける。現実と物語の境界をみつめ、その行き来によりそれらの所在位置を問い直す。生と死、家族、感覚と言葉、集団社会、など物語のクリエイションは山本がその都度興味を持った対象からスタートし、より遠くを目指し普遍的な「問い」へアクセスしてゆく。近年は映像や影と俳優を組み合わせた演出が「2.5次元の演劇」と評判を呼んでいる。『幼女X』で『Bangkok Theatre Festival 2014』Best Original Script(最優秀脚本賞)とBest Play(最優秀作品賞)を受賞。

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cero“ロープウェー”

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