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メジャー映画の限界を知り転機をつかんだ入江悠が前川知大と語る

メジャー映画の限界を知り転機をつかんだ入江悠が前川知大と語る

『太陽』
インタビュー・テキスト
麦倉正樹
撮影:西田香織 編集:野村由芽

面白いと思って作っているのに、なぜ面白いのかはよくわからない。その感覚って、実は『SR サイタマノラッパー』以来なんです。(入江)

前川:はじめに監督が言った、日本映画でできることとできないこと――それはネガティブな意味ではなく、自分たちができることをちゃんとやって、その結果全然見たことがないものが作れるってことだと思うんですね。「キュリオ」が暮らす村の風景にしても、今の日本ではない別のどこかであるような。もちろん、どこで撮ったかは知っているんですけど(笑)、まるで違った世界のように見えるじゃないですか。

『太陽』 ©2015「太陽」製作委員会
『太陽』 ©2015「太陽」製作委員会

―確かに、日本のどこかのようでいて、どこでもない風景になっていますよね。

前川:あとはやっぱり、自然描写ですよね。僕、監督に言われて「なるほど」って思ったんですけど、「キュリオ」の村には、まったく音楽が流れていないんですよね。だけど、自然の音は溢れている。それは演劇にはまったくない要素だったので、ちょっと驚きました。

前川知大

入江:そもそも『太陽』っていうタイトルが、強烈なものとしてあるじゃないですか。『太陽』と言っているからには、何とかして太陽を表現しなきゃいけないと考えていたんですけど、やっぱり太陽っていうのは、カメラを向けても、なかなか映らないわけです。

前川:それ、面白いですね(笑)。太陽は撮ろうとしても撮れないっていう。

入江:そうなんです(笑)。だから、自然のなかにあるススキのざわめきや鳥の声、そういう自然音によって、頭上にある太陽を感じせることを意識して。神木くんとか門脇さんの顔に泥がついているのも、そういう演出の一つなんですよね。太陽の力によって、泥がだんだん乾いていく過程を見せられたらいいなっていう。

『太陽』 ©2015「太陽」製作委員会
『太陽』 ©2015「太陽」製作委員会

―なるほど。あと本作を見ていて思ったのは、非常にSF的な作品でありながら、難解さみたいなものがほとんどないということでした。

入江:そうですね。でも、それって前川さんがやられている一連の舞台もそうですよね。もちろん、現象的なところである種の飛躍はありますけど、決して難解ではないという。それって何かやっぱり、ご自分でラインを決めているんですか? これ以上いくとヤバくなるみたいな。

前川:あります、あります(笑)。これ以上やったら、絶対お客さん、置いていくなっていうラインが。昔は、「うすうす気づいてはいたが、面白がっているのは俺だけだ」みたいなことが、やっぱりあって。若いときは「それがいいんだよ」みたいな感じがあったけど、それは違うなってだんだん思うようになって。わかりにくいところは、ちゃんと伝わるようにしないとダメというか、伝わってないことの不毛さって、やっぱりあると思うんですよね。

左から:入江悠、前川知大

―結果的に、冒頭で入江監督が言ったように、これまでの日本映画であまりなかったような、シリアスなSF作品でありながらも、伝わるものになっていますよね。

入江:そうですね。日本映画ではあまり見ないタイプの映画になったのは間違いないと思います。あと、この映画が自分にとって、すごく大事な作品になったと思うのは、『太陽』っていう原作の何を自分が面白いと思っているのか、いまだに言語化できないところなんですよね。つまり、それだけ深くて普遍的なことが詰まっていて、作ったあとも多分いろんなお客さんからの反応や感想を聞いて、自分が発見することもあるんだろうなっていう。そういう意味で、すごく開かれた作品だと思うんです。「あ、そういう見方もできるのか」とか「こういうことを考えたのか」っていうのを、これから僕が受け取っていって、それによって自分のなかで少しずつ完成していくというか。そういう感覚って、実は『SR サイタマノラッパー』以来なんですよね。

―ほほう。

入江:面白いと思って作っているのは間違いないんだけど、なぜ面白いと思っているのかは、よくわからない。あとは、お客さんに任せてしまえっていう(笑)。その感覚って、ホント10年ぶりぐらいだったんですよね。だから、この映画は、僕にとっても、何か転機となるような作品になったんじゃないかと思います。

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作品情報

『太陽』

2016年4月23日(土)から角川シネマほか全国公開
監督:入江悠
脚本:入江悠、前川知大
原作:前川知大『太陽』
出演:
神木隆之介
門脇麦
古川雄輝
綾田俊樹
水田航生
高橋和也
森口瑤子
村上淳
中村優子
鶴見辰吾
古舘寛治
配給:KADOKAWA

プロフィール

入江悠
入江悠(いりえ ゆう)

1979年生まれ。神奈川県出身、埼玉育ち。日本大学藝術学部映画学科在学中から映画祭で注目を集める。短編映画がゆうばり国際ファンタスティック映画祭オフシアター・コンペティション部門に2年連続入選し、2006年に初の長編映画『JAPONICA VIRUS』が全国劇場公開。埼玉でくすぶるヒップホップグループの青春をリアルに描いた『SR サイタマノラッパー』は、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2009オフシアター・コンペティション部門グランプリをはじめ数多くの賞を受賞。その後、『SR サイタマノラッパー』は続編が2作制作された。2010年に第50回日本映画監督協会新人賞を受賞。2011年には『劇場版 神聖かまってちゃん ロックンロールは鳴り止まないっ』で高崎映画祭若手監督グランプリを受賞。オリジナル作品から大作まで手掛ける、日本映画界に欠かせない若手監督の一人。

前川知大
前川知大(まえかわ ともひろ)

劇作家・演出家。1974年生まれ。2003年に結成した、劇団イキウメを拠点に、脚本と演出を手がける。イキウメは、「日常に潜んでいる不思議なこと、その理屈や答えを舞台ででっち上げてみよう」、という会。SFやホラー、オカルトなど、市民生活の裏側にある異界を、超常的な世界観で描く演劇作品を作っている。読売演劇大賞、芸術選奨新人賞、紀伊國屋演劇賞など国内の演劇賞を多数受賞している。映画の脚本を手がけるのは今回が初。舞台「太陽」の脚本は第63回読売文学賞 戯曲・シナリオ賞を受賞。脚本とは別に小説「太陽」を執筆、2016年2月KADOKAWA刊。

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