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ぼくのりりっくのぼうよみに質問攻め。でも何度もはぐらかされる

ぼくのりりっくのぼうよみに質問攻め。でも何度もはぐらかされる

ぼくのりりっくのぼうよみ『ディストピア』
インタビュー・テキスト
武田砂鉄
撮影:永峰拓也 編集:矢島由佳子

もう明らかにCDの時代は終わろうとしている。だって、どう考えてもサブスクにはサービスとして勝てないですから。

―『ディストピア』の裏ジャケットには、強烈なメッセージが込められていますね。CDを遺影に見せている。しかもアーティスト写真では、実際に遺影に見立てたものをご自身で掲げている。これらについて、「『時が流れるに従い、様々なものが生まれたり失われたりしていく』ということの象徴として、CDというフォーマットの終焉を表現しようと思いました」とコメントされています。

ぼくのりりっくのぼうよみアーティスト写真
ぼくのりりっくのぼうよみアーティスト写真

ぼくのりりっくのぼうよみ『ディストピア』ジャケット
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ぼくりり:単純に、アーティスト側からこういうことを言う人がいないじゃないですか。変わるものは変わります。レコードだって廃れていったし、もう明らかにCDの時代も終わろうとしている。だって、月額いくらのサブスクに、どう考えてもサービスとして勝てないですから。そこに目を背けていても仕方がない。

―周りの同世代の人たちは、ほとんどCDを買っていないですか?

ぼくりり:まあ、買わないですよね。CDショップは、インストアライブとかやってるときとかくらいしか行かないです。観に行く、みたいな。

―こうやってパッケージや写真として提示されると、とてもラディカルな主張として受け取られます。もしも愉快犯との側面があったとしても、メッセージが先立つ可能性はありますよね。

ぼくりり:そうですね。僕自身は「別にCDを買う必要なんてない」って思っていますけど、もちろんそう思っていない人もまだたくさんいる。だから、せっかくCDを出すのであれば、「新しい試みをしてます感」を出したいなと思って。

―そもそも今回、アルバムから約半年で早くもEPを出すことになったのは、こうして、挑発的な作品を、との思いがあったからなのですか?

ぼくりり:いえ、僕、あんまりスケジュールに関与してなくて、「あっ、出すんですね」みたいな感じで締切日を聞きました(笑)。「○○日までですね、はい、じゃあ、書きます」って。それは別にネガティブな意味ではなく、締切に向けて作る、というのが、僕にとってはとてもやりやすいんです。

ぼくのりりっくのぼうよみ

個々人の能力がどんどん落ちていくよ、という現象を書きたかったんです。

―今作の1曲目“Newspeak”では、ジョージ・オーウェル『一九八四年』をモチーフにされていますね。

ぼくりり:近年、人々の語彙が少なくなり、考えられる思考に限りが生じてきていますよね。それは多分、僕もそうなんだと思いますが。

―以前、お話を聞いたとき、「最近は何事に対しても『ヤバい』としか思わなくなってきました」と言っていましたよね。ジョージ・オーウェルが小説内で提示している「ニュースピーク」とは、全体主義国家の下で人々の思考を統率するために制限される言語のことで、言葉が排除され思考が奪われていく恐怖を書いています。でも、ぼくりりさんは「ヤバい」しか出てこないことを、すごく楽しそうにお話しされていましたよね。人々の言葉がしぼんでいる実感というのは、別に恐怖ではないんですか?

ぼくりり:恐怖かどうかというよりも、その恐怖という概念もなくなっていく、ということです。

―『一九八四年』は、現代社会の諸問題を考える上でも頻繁に持ち出されます。監視カメラや、最近ではマイナンバーの議論を受けて、国に監視される社会が来るぞと警戒するときに「あの小説世界みたいに……」として例示される。

ぼくりり:監視強化というよりも、個々人の能力がどんどん落ちていくよ、という現象を書きたかったんです。今、機械によって自分を高めることも簡単だし、機械に頼ることで自分の知性を大幅に低下させることも簡単ですよね。後者のほうに向かっている人たちが多いのではないかと感じています。簡単に手に入るもので満たされてしまう。

ぼくのりりっくのぼうよみ

―でも、オピニオンを込めるのではなく、「そうなっちゃうよね」とだけ伝えたい?

ぼくりり:はい、「そうなるよね」です。そういう歌詞に行き着くことが多いですね。「こうしろ」などとは、あんまり言えないんです。だって、その人の人生だし、って思ってしまう。引き気味というか、及び腰というか……「生きろ!」「お前の人生には価値がある!」みたいなことなんてなかなか言えないじゃないですか。

―ぼくりりさんの歌詞は、メッセージを消しているとも言えるわけで、意地悪な言い方ですが、消すという作業って、とても作為的なことですよね。

ぼくりり:そうですよね。あったものを消すわけですから。でも、その消すことも含めて、勝手に思ってもらう分には何でも構わないですし、誤解が生じるのも面白いなって思っています。どんどん知らぬ間に解釈が広がっていったりするんです。それをTwitterで見て、ああ、こんな風に受け取られるんだ、と思ったり。

―ぼくりりさんの場合、ひとつの問いを投げても「面白いから」という答えだったり、何かの意図を問うても「そこに意味はないです」って返してくることが多いですよね。そうすると、前回の自分も含めインタビュアーは、やっぱり歌詞を勘繰るしかねぇ、となる(笑)。歌詞の一部分を抽出して、「ここはこういう意味なんじゃないんですか」と問われることが多かったはずですが、その問いかけってどう受け止められたんですか?

ぼくりり:ほほう、なるほど、そうなんですね、みたいな(笑)。やっぱり人それぞれですよね、みたいな感じ。

―そこでまたかわされてしまう。

ぼくりり:ただ今回のEPに限っては、分かりやすく伝えられるものにしようという意識はありました。実際に分かりやすくなっているのかは分からないですけど。

ぼくのりりっくのぼうよみ

―またしても歌詞から分析するならば、新曲が3曲入っているなかで、「クオリア」(感覚質)という言葉が重ねて出てくる。このあたりは極めて意図的なのかなと感じました。これは作品全体に覆われているものですか?

ぼくりり:はい。前回の作品は意図というものはさほどなかったんですが、歌詞自体をどれだけ正確に読み取ってくれている人がいるのかな、と気にしつつも、今回はちょっと寄せてみよう、少しは分かりやすくしてみよう、という意識がありました。

―『一九八四年』の「ニュースピーク」では、A群・B群・C群と、言葉を3つの群に区分けします。ぼくりりさんの言葉の選び方も、区分けしたところから言葉を選び、繋ぎ合わせていく感覚がありますよね。

ぼくりり:そうですね。意識している言葉と、そうではない言葉を繋ぎ合わせていくことをやっています。でも、シチュエーションに合わせた言葉選びは、誰もがやっていることではあると思いますよ。友達といるときと、こうしてインタビューに答える場では、使う言葉が異なりますからね。

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リリース情報

ぼくのりりっくのぼうよみ『ディストピア』初回限定盤
ぼくのりりっくのぼうよみ
『ディストピア』初回限定盤(CD)

2016年7月20日(水)発売
価格:1,728円(税込)
VIZL-1012

1. Newspeak
2. noiseful world
3. Water boarding
4. sub/objective(remix)
※書き下ろし短編小説、次作アイデアノート封入

ぼくのりりっくのぼうよみ『ディストピア』通常盤
ぼくのりりっくのぼうよみ
『ディストピア』通常盤(CD)

2016年7月20日(水)発売
価格:1,296円(税込)
VICL-37199

1. Newspeak
2. noiseful world
3. Water boarding
4. sub/objective(remix)

プロフィール

ぼくのりりっくのぼうよみ
ぼくのりりっくのぼうよみ

この春高校を卒業したばかりの大学一年生、18歳。早くより「ぼくのりりっくのぼうよみ」、「紫外線」の名前で動画サイト等に投稿を開始。高校2年生の時、10代向けでは日本最大級のオーディションである「閃光ライオット」に応募、ファイナリストに選ばれる。提携番組であるTOKYO FM『SCHOOL OF LOCK!』で才能を高く評価されたことで一躍脚光を浴び、高校3年生だった2015年12月、1stアルバム『hollow world』でメジャーデビューを果たす。その卓越した言語力に裏打ちされたリリック、唯一無二の素晴らしい歌声、ラッパー/ボーカリストとしての表現力が大きな話題を集め、日本の音楽シーンに一石を投じる新たな才能の登場として、各方面から大きな注目を集めている。

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