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暴かれたネットの理想と現実。細分化された個を繋ぐfhánaの挑戦

暴かれたネットの理想と現実。細分化された個を繋ぐfhánaの挑戦

fhána『calling』
インタビュー・テキスト
金子厚武
編集:山元翔一
2016/08/08
  • 97

今はメジャーレーベルとかマスメディアの影響力の大きさが再確認される時期に入っていると思っていて。僕の周りでも「メジャーにいきたい」って思う人が増えた感じがします。(kevin)

―いろんなものを繋げるはずだったインターネットが、逆の作用を見せるようになってしまったっていうのは、皮肉な話ですよね。

佐藤:最初からインターネットで繋がっていれば、自分がいいと思ったものを聴いているだけでも、同じものを好きな人と出会うことができるから、そこで完結するわけですよね。そうなるともともと知らないものや、興味がなかったものに新しく出会う機会が減る。それで異質なものが入ってきたときに、「何だこれ?」って排除して、保守的になる。とはいえ、インターネットがなかった昔だったら自分のところまで届かなかったような情報や文化が圧倒的に増えていて、それって言ってみればノイズみたいなものなので、実際は膨大なノイズに晒されているわけなんですよね。そのノイズの中から、何か新しい発見をして世界が広がればいいけど、そうはならなくて、ノイズから身を守ろうと、自分が既に知っている慣れ親しんだ世界に引き篭もろうとする人の方が多いんじゃないかと。

これってインターネットだけの話じゃなくて、現実の世界全体で起きていることでもあって、グローバル化によって人もお金も情報も地続きに繋がった反動とも言える動きが目立っていて。ヘイト感情の高まりとかも、そういうことだと思うんです。今はいろんな意味でよくないところが取り沙汰されるタイミングなんだろうなって思います。

佐藤純一
佐藤純一

―kevinくんは今のネットレーベル周りをどのように見ていますか?

kevin(PC,Sampler):今の方がネットで作品を発表することが簡単にできて、自分たちでDIY的に動画を投稿してプロモーションするなり、音楽を作って自由に聴かせるなりできるわけじゃないですか? でもここ最近は逆にメジャー志向の人が増えている気がします。自分たちで創意工夫してプロモーションをすることもできるけれど、今はメジャーレーベルとかマスメディアの影響力の大きさが再確認される時期に入っていると思っていて。僕の周りでも「メジャーにいきたい」って思う人が増えた感じがします。

佐藤:それもインターネットが特別な場所ではなくなったからですよね。「マスにアピールしなくても、インターネットっていう楽園があるからこれでいい」っていう感じだったけど、今では誰もがスマホからインターネットにアクセスしていて、しかもそれがインターネットであるということも理解しないまま、当たり前のものとして使っている。つまりはインターネット自体がただのインフラであり、マスになった。そうなると「ネットという特別な場所」に向けての方法論は意味がなくなって、メジャーの力を必要とするようになるのかなって思いますね。

kevin:今はメジャーの人たちも普通にネットを使うわけじゃないですか? ネットを使うことによるアドバンテージがなくなると、個人でできるプロモーションに限界を感じるようになる。「大人の力を借りることも必要だ」ということを、インターネット上で活動しているクリエイターたちが感じ始めている印象です。より大衆に向けてアプローチしたいという機運が高まってる気がしますね。

kevin mitsunaga
kevin mitsunaga

―fhánaは「多様性を認める」というネット文化から生まれたわけですが、言ってみれば、今はその逆の動きが起きているように思える。そう考えると、これから改めてfhánaの存在意義が問われるように思います。

佐藤:そういう話で言うと、fhánaの良さって間口の広さだと思うんですよね。アニメ好きも、ロック好きも入れるし、メジャー志向じゃないインターネット周りのカルチャー好きも、fhánaには通じる部分を感じることができるはず。そこは昔から変わっていないので、バラバラになっているものを繋げる、多様な人たちが様々な楽しみ方をすることができる、そういうバンドでありたいと思いますね。

セカンドアルバム『What a Wonderful World Line』より

セカンドアルバムを出したことで、アーティストとしてやっとスタートできたかなって感じています。(towana)

―前回のアルバム取材では佐藤さんと作詞の林英樹さんに対談(孤独とは? オザケンや『エヴァ』ともリンクするfhánaの歌詞談義)をしていただきましたが、今回のシングル『calling』について伺う前に、佐藤さん以外の三人からアルバムとその後のツアーに対する手応えを話していただけますか?

yuxuki:客観的に見ても、ファースト(『Outside of Melancholy』)より完成度の高いものができたと思います。ファーストのときはライブで「CDの音をちゃんと再現しなきゃ」みたいな意識があったんですけど、セカンドは最初からライブで再現する気がない曲もあったので(笑)。そのおかげで結果的にダイナミクスが出たので、いい方向に働いてよかったと思います

kevin:セカンドの曲は、ファーストを出す前の自主制作盤の頃にやっていた音の作り方を結構踏襲していたので、それがちょっと懐かしかったしエモかったです(笑)。セカンドは書き下ろしの新曲が増えたので、本腰入れてアルバムを作っている感覚がすごくあったのも楽しかったです。

towana(Vo):ファーストはシングル曲が5曲入ってたし、忙しさに飲まれていた部分もあったと思うんです。佐藤さんは最初から見せ方のビジョンがあってやっていたと思うんですけど、私は正直、「何とかこなした」っていう部分もあって。でもセカンドに関しては、自分が思う「こう見てもらいたい」とか「こういう表現をしたい」っていうものが歌に乗せられるようになってきたので、アーティストとしてやっとスタートできたかなって感じています。

towana
towana

―では、佐藤さんは今回のツアーの手応えをどのように感じていますか?

佐藤:Zepp DiverCityの追加公演がすごくよかったんですよね。fhánaでデビューをしてから、それなりにライブをやってきましたけど、すごくいいライブができたっていう手応えを初めてちゃんと感じたのが、今回の追加公演(素晴らしい世界には「あなた」が必要だ。fhánaが掲げる理想主義)だったんです。これだけの手応えを感じたのは、デビュー前(2012年)に下北沢ERAでやったとき以来だったんですよ。

でも、あの追加公演の日はすごく特別な時間が流れていたというか、魔法がかかっている感じがしたんですよね。それは「演奏が上手くいった」みたいな単純な話ではなくて、fhánaとお客さんとスタッフ含め、全体の空気がすごくよくて、何か感覚を共有できているような感じがしたんです。

fhána

―そういうライブができたっていうのは、やっぱりセカンドアルバムを作ったからこそだと思うのですが、佐藤さんの中では何が一番変わったと感じていますか?

佐藤:ファーストのツアーのときと比べて、お客さんがちゃんと音楽を聴いてくれているというか、fhánaの世界観に溶け込んでくれているとすごく感じました。ファーストのツアーのときはもっと単純に、「アニソンでぶちあがりたい」みたいな感じのお客さんもたくさんいたと思うんですけど、今回はそれだけじゃなくて、より深く、もう一歩fhánaの世界に入ってきてくれてる感じがしたんですよね。

yuxuki:今回は演出とか照明に関しても、大元のアイデアは全部自分たちで考えて、それを元にスタッフさんに作ってもらったんです。そういう意味でもZepp DiverCityでのライブはやりたいことができたし、今後のfhánaのライブにおけるひとつの指針になるようなライブだったかなって思いますね。

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リリース情報

fhána『calling』アーティスト盤
fhána
『calling』アーティスト盤(CD)

2016年8月3日(水)発売
価格:1,296円(税込)
LACM-14509

1. calling
2. アネモネの花
3. calling -Instrumental-
4. アネモネの花 -Instrumental-

fhána『calling』アニメ盤
fhána
『calling』アニメ盤(CD)

2016年8月3日(水)発売
価格:1,296円(税込)
LACM-14510

1. calling
2. Relief (Japanese Ver.)
3. calling -Instrumental-
4. Relief (Japanese Ver.) -Instrumental-

プロフィール

fhána
fhána(ふぁな)

佐藤純一(FLEET)+yuxuki waga(s10rw)+kevin mitsunaga(Leggysalad)のインターネット3世代によるサウンドプロデューサーと、ボーカリストのtowanaによるユニット。2013年夏、TVアニメ『有頂天家族』のED主題歌『ケセラセラ』でメジャーデビュー。これまでに8枚のシングルをリリースしており、その表題曲のすべてがテレビアニメのタイアップを獲得している。そして9枚目となるニューシングル『calling』は、TVアニメ『テイルズ オブ ゼスティリア ザ クロス』のEDテーマとなっており、9作品連続でのタイアップ獲得を果たし、注目を集めている。

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