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若い時は嫉妬しよう。石崎ひゅーいと松居大悟の「孤独」のススメ

若い時は嫉妬しよう。石崎ひゅーいと松居大悟の「孤独」のススメ

『ショートショート フィルムフェスティバル & アジア』
インタビュー・テキスト
柴那典
撮影:鈴木渉 編集:野村由芽、宮原朋之

松居くんは変化球を投げるタイプだと思ってたんですけど、ど真ん中のストレートだった。(石崎)

―石崎さんにとって思い入れのある“花瓶の花”のPVを作るにあたり、松居さんはどのように作り始めていったのでしょう?

松居:やっぱり “花瓶の花”を作った経緯がすごくいいなと。そこから、ミュージシャンがカメラに向かって格好よく歌うようなPVじゃなくて、ひゅーいが誰かのために歌っている姿を描こうと思ったんです。で、結婚式のために作った曲だから、結婚式の話にしようと決めました。

左から:石崎ひゅーい、松居大悟

―PVでは石崎ひゅーいさんは実際に新郎友人役として歌いますね。何故このような演出をしたのでしょうか?

松居:曲のパワーそのものに寄り添って作ろう、という思いがありました。実は初めてそういう作り方をしたんですよね。僕はいつもキラキラした曲だったらハードな映像にしようとか、できるだけ曲を裏切るように作っていたけど、“花瓶の花”は逆だったんです。

―でも、ストーリーの描き方には、すごく松居監督らしさが出ていますよね。新郎新婦ではなく、その家族が主役になっている。蒼井優さんもあえて式場で働いている女の人の役を演じていますね。

松居:実際、新婦を蒼井優にしたほうが真っ直ぐにグッとくるんじゃないかって、何度か言われて。でも、そこは頑として守りました。そうじゃない方がドラマが描けると思ったので。

石崎:頑固でしたね。でも実際、映像として見た時に「やるじゃないか!」って(笑)。

松居:蒼井優が新婦を演じた場合、その新婦のために歌っても狭くなってしまう。主役のまわりにいる、新婦の弟を演じる村上虹郎や、式場で働く蒼井優が、その歌にグッときているところが伝わるといいなと思ったんです。

左から:石崎ひゅーい、松居大悟

―石崎ひゅーいさんは、出来上がった映像を見てどう感じました?

石崎:自分も母親を亡くしているんですけど、そういう時のわーっとくるような感情に似ていて、ものすごくよかったです。普通に松居くんを尊敬しました。松居くんは変化球を投げるタイプだと思ってたんですけど、ど真ん中のストレートだった。

松居:ひゅーいのこの曲なら、真っ直ぐに作ろう、寄り添ったほうがいいなって思えて、そうできたんです。

PVは一旦降伏してから自分なりの表現を作ります。まず「お前には負けたよ」って思って、「でもこっちにはこっちのやり方があるんだよ」と考える。(松居)

―さきほど、“花瓶の花”はこれまでになく、曲に寄り添ってPVを作ったという話がありましたが、松居監督はいつもはどのような心構えでPVを制作されているのでしょう?

松居:楽曲制作の意図は聞きますが、あまりそこは気にしないようにしています。あと、ミュージシャンが演奏しているだけのようなものにはしたくない。自分が映像をやるからには、曲だけを聴いた時とは違うニュアンスを与えないと視覚化して見せる必要はないと思っているので、ひたすら曲を聴きまくって、自分から出てきた感情から作っていきますね。

―あえて曲とは違うニュアンスを与えることが多いですか?

松居:そうですね。自分は音楽をやってこなかったし、どんなにいい舞台とか映画を作っても、最後に主題歌に持っていかれるのがすごく悔しくて。PVは真っ向勝負だと思うから、「音楽VS映像」っていう意識でいつも作っているんですね。だから今回のような作り方は珍しいんです。

松居大悟

―“花瓶の花”は個人的な思いを書いたものだけれど、結婚する人、家族を亡くした人、いろんな人にとって自分のこととして突き刺さる曲だと思うんです。それくらいのポテンシャルのある曲だからこそ、こういう作品になったのかもしれないですね。

松居:そうですね。僕自身、今年の6月に兄貴の結婚式があったんです。そういうのを準備していたから、弟の目線になったというのもあるかもしれない。

―石崎ひゅーいさんはこの曲以外でもいろんなPVを発表していますが、PVにおける曲と映像の関係はどう捉えていますか?

石崎:今はみんなYouTubeで音楽を聴くし、そこが入口になるから、昔よりPVが大切ですよね。ただ、自分のPVとして表現する方法は、いろいろ自由であっていい。凝り固まらずにいろんな挑戦をしていいんじゃないかと思います。

―“ピーナッツバター”は自ら監督を手掛けています。PVを作る側としてはどうでしょう?

石崎:作ったって言っても、ふんどし一丁になって浜辺を走って、それをワンカットで撮っただけですから(笑)。

石崎ひゅーい

―先ほど松居監督は「真っ向勝負だと思って作る」と言いましたが、その感覚はどういうところが原点になっているんでしょう?

松居:嫉妬というか、敗北というか、降伏というか。そういうところから、自分なりの表現を作ります。だから好きなアーティストとしか作れないんです。いいなって思う曲だからこそ、自分にしかできないものを作れる。まず「お前には負けたよ」って思って、「でもこっちにはこっちのやり方があるんだよ」って考える。

―松居監督のやっていることは境界線がないと思うんですね。今回の“花瓶の花”に関しても、PVというものの既成概念を壊していると思います。どこまでがPVでどこからがショートフィルム、どこからが映画なのか、その枠組みを広げていますよね。

松居:「らしいもの」が好きじゃないからですね。PVっぽいもの、ショートフィルムっぽいもの、映画らしいものが好きじゃない。そういう風にやると恥ずかしくなっちゃうんです。そこを避けながらやっていると、「PV? 映画? これはなんだろう?」というものが出来上がる。

自分自身は演劇にも映画にもPVにも、どこにも重心を置いていないんです。でも周りの人は「結局何がやりたいの?」って枠にはめたがる。そのほうが安心するからだと思うんですけど、はまらないほうが面白い。ただ、そうなるとどんどん居場所がなくなって、仲間がいなくなっていく気がする(笑)。

―石崎ひゅーいさんはそういう松居監督の作風についてどう思います?

石崎:僕は松居くんのそういうところがすごい好きなんですよね。不良だなって思います。

―共通している感覚もきっとあるんじゃないかと思うんですが、お二人はお互いのアーティスト性、作家性をどう捉えていますか?

松居:僕、ひゅーいと居るとすごくリラックスするんですよね。クリープハイプの尾崎くんとは緊張感があるというか、ピリピリするんです。なんでだろうって思うんですけど。

―尾崎世界観さんと松居監督は似たようなところがありますよね。同じように、復讐心や悔しさが表現の原動力になっているところがあるんじゃないですか。

石崎:そこは似てるなって思いますね。たしかに。

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公募情報

『ショートショート フィルムフェスティバル & アジア2017』

ミュージックビデオ部門
国内外のアーティストによるオフィシャルミュージックビデオを紹介する部門

ミュージックショート部門
エントリー楽曲を使用して、クリエイターが自由にオリジナルのショートフィルムを制作する部門

応募締切:2017年3月15日(水)
賞金:30万円

『ショートショート フィルムフェスティバル & アジア』
『ショートショート フィルムフェスティバル & アジア』

俳優の別所哲也が代表をつとめる米国アカデミー賞公認の国際短編映画祭。1999年に東京・原宿で誕生し、2017年6月で19回目の開催を迎える。これまでに延べ34万人を動員。オフィシャルコンペティションをはじめ、「音楽」「環境」「CGアニメーション」など、様々なカテゴリーのプログラムで構成されており、グランプリ作品は、次年度のアカデミー賞短編部門のノミネート選考対象になる。

作品情報

『アズミ・ハルコは行方不明』

2016年12月3日(土)から新宿武蔵野館ほか全国で公開
監督:松居大悟
原作:山内マリコ『アズミ・ハルコは行方不明』(幻冬舎文庫)
主題歌:チャットモンチー“消えない星”
出演:
蒼井優
高畑充希
太賀
葉山奨之
石崎ひゅーい
菊池亜希子
山田真歩
落合モトキ
芹那
花影香音
柳憂怜
国広富之
加瀬亮
配給:ファントム・フィルム

プロフィール

松居大悟(まつい だいご)

1985年生まれ、福岡県出身。劇団ゴジゲン主宰。09年、NHK『ふたつのスピカ』で同局最年少のドラマ脚本家デビュー。12年2月、『アフロ田中』で長編映画初監督。以降、『自分の事ばかりで情けなくなるよ』『スイートプールサイド』など枠にとらわれない作品を発表し、『ワンダフルワールドエンド』は第65回ベルリン国際映画祭正式出品。『私たちのハァハァ』は『ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2015』2冠受賞。原作を手掛けた漫画『恋と罰』が連載中。

石崎ひゅーい(いしざき ひゅーい)

本名。母親がDavid Bowieのファンで、その息子がZowie(ゾーイ)という名前だったことから、もじって、Huwie(ひゅーい)と名付けた。2012年7月25日にミニアルバム「第三惑星交響曲」でデビュー。感情のままに歌うまっすぐな声と全てのエネルギーを爆発させるライブパフォーマンス。ソロアーティストとしてのスケールを無視する規格外なシンガーソングライター、石崎ひゅーいが出現した。松居大悟監督・蒼井優主演「アズミハルコは行方不明」にてスクリーンデビュー。

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Suchmos“PINKVIBES”

Suchmosがアルバム『THE KIDS』より“PINKVIBES”のPVを公開。山田健人(dutch_tokyo)との久々のタッグとなるこの映像。余裕すら感じるシュアな演奏シーンやふとした表情が絶妙なバランスで映し出される。燃え盛るピンクの炎と、それに向けるメンバーの強い眼差しを見ると、Suchmosがこれからどんな風景を見せてくれるのか期待が高まる。(飯嶋)