cinra mail-magazine「真裸」 contents
VOL.134
発行日 2007年7月30日 発行数698部
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2007 7/30 (MON)
from cinra
根元から突き動かされる感覚
文:杉浦太一

クラムボンの曲に「バイタルサイン」というアップビートな曲がありまして、ぼくはよく移動中にその曲を聴いています。

昨日、日帰りの強行スケジュールで行ってきたフジロック。クラムボンがこの曲の演奏に入る前に、ベースのミトさんによるMC(曲の間にしゃべること)が入りました。新潟の度重なる被災を受けた方々に向けて勝手だけど演奏します、という涙ぐみながらのMCで曲がはじまりました。

聴いているだけでグワっと感情がこみ上げてきて、ぼくも勝手に新潟の被災地の方々のことを想い、そこから浮上する人の命の力強さとモロさを感じます。そして、今までのこの曲に対するイメージは徐々に、確実に塗り替えられていきます。会場の多くの人も、涙を流しながら同じような感情の化学反応を体験していました。

音楽には色んな力があって、フジロックという空間にはその色んな形が転がっていて、来た人はそれぞれ自分の好きな形を受け取りにいく。それがどんな形であっても、ライブで音楽と向き合う時に感じるパワーというのは、実にすさまじいものです。根元から突き動かされる感覚。そういう体験は、最近なかなかできるもんじゃない。この曲のライブ映像がYoutubeにありましたが、あえてリンクは貼りません。やっぱり全く別物なんです。

cinra magazine vol.14
MUSIC特集:今こそリスナー再入門!

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News Of This Week
MUSIC
toeとstimの2マンライブ決定!

もやは説明不要、国内のインストゥルメンタル・ロックを代表するtoeが、taichi率いるstimと9月24日に2マンライブを行う。

今回toeと2マンライブを行うstimというバンドをご存知だろうか?
未だ音源をリリースしていないからご存知ない方も多いかもしれないが、GROUPの主要メンバーとして(現在は脱退)、時にはソロ・アーティストとしても注目を浴びているドラムのtaichiを中心に、元DCPRGのSax.後関好宏、FREDERIQのBa.松崎幹雄、KOWLOONのKey.中村圭作の 4人が奏でるインスト・ミュージックは必聴です。



MOVIE
「第3回ブラジル映画祭2007」開催

21賞受賞のウォルター・サレス製作作品のプレミア上映や、アマゾンに生きる子どもたちの短編ドキュメンタリー、ユーモアのセンスが光る“粘土アニメ”、ビッグアーティストのミュージック・クリップ同時上映など、見どころ満載のブラジル映画祭をお見逃しなく!

期 間: 2007年9月5日(水) 〜 9日(日) (5日間)
会 場: 東京国際フォーラム【ホールD1】

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レビュー
東京シティバレエ団「コッペリア」
文:吉田悠樹彦

志賀育恵というバレリーナを知っているだろうか。今、最も面白いバレリーナの一人である。彼女がプリマを務める東京シティバレエ団がバレエ「コッペリア」を上演し、志賀は主役のスワニルダを踊った。原作はドイツロマン派の文学作家のE.T.A.ホフマンの「砂男」。時にはアレンジされて日本でも上演されるポピュラーな作品だ。

老人形師コッペリウス(金井利久)の家の二階には時折窓辺に本を読む少女が現れる。この少女は実は男が作ったコッペリア(秋吉秀美)という人形だ。町の人々はこの人形があまりに良くできているのでコッペリアの事をこの老人の娘だと思い込んでいる。コッペリウスの家の反対に住む娘、スワニルダ(志賀育恵)はこの頃不機嫌だ。いいなずけのフランツ(穴吹淳)がこの窓辺に時折現れる少女のことが気になっていようだからだ。一波乱あったあと、女は恋敵の娘の家に忍び込んでいく。そしてついに恋敵の娘が人形であることをつきとめるのだが、家に戻ってきた老人の前でスワニルダは人形になりすまし、ぎこちなく人形の様に踊るユーモラスな場面も。(写真)そんな一騒動を描いた人間愛あふれる作品だ。

志賀は優雅で現豊かな情景を踊ることもできるが、愛らしい表情や好奇心旺盛で活発な表情を見せたら得意中の得意といえる。例えば第一幕では娘たちのリーダーとして大胆にもコッペリウスの家に入っていくし、第二幕では人形に変装してこの老人形師をだます。(写真)有名なこのシーンではあたかも人形のように動いたと思えば、一人の女になり恋人のことを心配する。好奇心旺盛で悪戯好きなスワニルダとこの芸術家の個性が見事にはまった。

志賀は今年の秋から1年間文化庁派遣在外研修生としてオーストラリアで研修をする。オーストラリアはパフォーミングアーツが盛んな国であり、バレエでも時にはユーモラスだが、志賀と同じように演技力あふれる身体表現を得意としている。バレエの歴史は日本と同じぐらいの長さだそうだ。ヨーロッパに目がいく踊り手が多いが、新世界に好奇心を持ち続け、さらにその世界に磨きをかけてくるのが楽しみだ。

志賀育恵ウェブサイト / 東京シティバレエ団
志賀の2007年度国内最後の舞台:
Sym's BALLET公演「ロミオ&ジュリエット」

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時事コラム「全裸-zenra-」
No. 134
こいつ誰だか分かんない友人について
文:武田浩和

さて、合コンというものをしたことがないのである。飲み屋の隣席がそんな感じの団体で「はい!席替え!」と幹事らしき男が声を張り上げては「イエーイ」とレスポンスする他大勢。中にはそんな掛け声にもお構い無しの2人なんてのも早速いて、「ええと」と口ごもるか、「おいおいそこの2人、早いよ〜」とテンションで乗り切るか、幹事はその2人の対応を判断しかねている。

自己紹介、というものがなかなかしにくくなった。自己紹介のフォーマットがあったとすれば大学生の時までで、社会人になると、社会人生活などたかが知れているにも関わらず、その自己紹介を自由に着色されて距離を測られてしまう。就職にあたって初めて関西から出てきた友人は嘆く。「友達を作ろうにも、その新しい友達って何だか最初から距離が定まっているような気がするんだよね。仲良くなっても、仲良くならなくても、その一定の距離は変わらない。こっちで意識して縮めたり離したりしてるつもりなんだけど、それじゃあダメなんだね。振り返ってみれば友達って、あくまでも自然にその距離が縮んだからこそ友達なんじゃないかと」。ふーむ。ピュアな意見で嫌いじゃない。そうかもしれぬ。大学名や社名で距離を測るなんてのは、まだ残っているらしいと感じつつもさすがに旧時代的だが、問題は、互いに色の着いた状態で出会うというのが、もうどこかで距離設定が行われているという感覚じゃないか。要は、「こいつ誰だかよく分かんない友人」に出会いにくくなったという事なのだろう。

自己紹介とは、誰でもよく分かるような貴方の説明を、という事である。「こいつはこんな奴」という把握を最初に持たせておくという、友達作りとして最もインスタントである。3分で出来る、食べられる。合コンに行ったとして、自己紹介を、と言われたら何と答えようかと考える。会社名を言って出身大学を言って趣味を言って、それで大枠を決められちゃうのか。ああイヤだと、小心者は思う。しかし、自己プロモーションとはこの後からなのだろう。それとこれが同じとは思わないが、昨今、「オレって○○な人じゃん?(例:オレって結構マメにメール返信する人じゃん?)」なんていう「知らねーよ、んな事」というアプローチが実利を上げているらしいのであって、ああそうか、彼らは自己紹介という機会自体を適当に処理しているのだろうと想像する。距離を測るではなく、距離を操作できるか否かを楽しめるのだ。ちょっとばかし羨ましい。

どこぞの週刊誌の編集長だったか忘れたが、「1日1人は初対面の人と会うようにしていた」と言っていた。こりゃまあ、ストイックな修行である。合コンでもいいわけである。そこから最も遠くにいるのは「こいつ誰だか分からない友人に出会えなくなった」なんて机上で嘆いている自分のような奴じゃないのか。人付き合いなど自然と分かりにくくなる、そして、そっから面白くなる、という事に気付けていないのである。

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