佐藤さん・加藤さん・伊藤さん
文:柏井万作(CINRA MAGAZINE編集長)
佐藤さん・加藤さん・伊藤さんという名の知り合いは何人いるんだろうと疑問に思い、携帯電話のアドレス帳を開いてみると、合わせて20人だった(内訳:伊藤×6、加藤×8、佐藤×6)。恐らく日本人でそれらの名字の知り合いを持たない人はいないと踏んで間違いがなく、そうなるとやはり、誰かと加藤さんについての話をしようと考えた時、「●●の加藤さんがさ」と言うことになるし、たとえば同じ学校に加藤くんが複数人いた場合は、何らかのあだ名がつくのが一般的だろう。
個人的な経験談で言うと、たとえば「加藤ビッグ」というのがそれにあたる。デカイだけという理不尽な理由であり、小さい方の加藤くんは基本点に「ジュンちゃん」と名前で呼ばれていた為、別に「ビッグ」という特定要素を付けて呼ぶ必要はなく、デカ過ぎた加藤くんに対する羨ましさが反転したただの嫌がらせに他ならないような気もしていた。だが、同じ境遇だった同学の横山くんには「ヨコ○ン」とあだ名が付けられていたこともあり、加藤ビッグも自身のあだ名に対してはある種の安堵感をもって納得していたように思う。それに彼自身、自分のデカさに自惚れる節も伺えた。実際に加藤ビッグはその身長に物を言わせ、バスケ部になくてはならない存在になっていたし、自分のデカさを誇らしげに語る場面に遭遇したのも一度や二度の話ではなかったのだ。