自立せよ
文:柏井万作(CINRA MAGAZINE編集長)
父親から「そろそろ家を出て自立しろ」と言われ、「余裕だぜ」と捨て台詞を吐いてから早くも2年。掃除も洗濯も料理もすべて自分でやる。実際のところそれは、余裕どころか苦労の連続だったのだ。日付が変わる頃に帰宅し、そこからまた仕事を始める。気がついたら寝ていて、起きたらもう、すぐに出ないと遅刻しちゃう時間。ヤバい、すぐに出ないと! と思った矢先に気がつく。あっ、今日は週1回の不燃ゴミの日だ。あっ、流しには3日前のグラスが…。どうする、どうしようか。それで結局、見てみないフリをする。自己嫌悪と戦いながら、来週こそゴミを出そう、帰ってきたら食器を洗おう、なんて考えている。
仕事とか自分のやりたいことを頑張っている人はそれだけでエラいように思っていたけど、完全に誤りだった。そうした全てが日常生活の上に成り立っていることを忘れていた、というよりも知らなかったに近かったわけで、自分がやらなきゃ洗濯物も洗い物も無くならない。当たり前の生活が保証されないという危機感。「そろそろ家を出て自立しろ」という言葉が重くのしかかるのでした。