「#SaveTheCinema」記者会見。6万超の署名提出を報告

4省庁に署名と要望書を提出

『#SaveTheCinema 「ミニシアターを救え!」』プロジェクトによる記者会見が、4月15日に開催された。

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、多くの映画館が営業自粛を余儀なくされる中、経営の危機に直面する小規模映画館を救おうと立ち上がった『#SaveTheCinema 「ミニシアターを救え!」』プロジェクト。政府からの緊急支援などを求める要望書を作成し、4月6日から賛同者の署名を募っていた。

集まった署名は、4月14日までの9日間で66828筆。本日4月15日、同プロジェクトは、内閣府、経産省、厚労省、文化庁をめぐり、署名とともに国に緊急支援を求める要望書を提出した。記者会見にはプロジェクトの呼びかけ人らが出席。会見はZoomを使用して行なわれた。

ミニシアターを救うことの緊急性、ミニシアターの芸術的価値を訴える

会見の冒頭では、呼びかけ人の1人である映画監督の諏訪敦彦が、要望書の趣旨を語った。

諏訪は、日本の映画館のスクリーン数は88%がシネコンに占められ、残りの12%が他の映画館であると述べたうえで、「ミニシアターは大手シネコンに比べると経営基盤が脆弱。コロナ以前からそれぞれの工夫でかろうじて生き残っていたが、今回のことで3月からどんどんと観客が減少し、大きなダメージを被っている。非常に緊急的に映画館を救わなくてはならない、これを政府に強く要望していきたい」と説明。

また「ミニシアターの芸術的、文化的意義を訴えたい。なぜ守られなくてはいけないかを伝えたい」とし、「日本で上映される年間1300本ほどの映画のうち、1000本くらいはミニシアターで上映されている。スクリーン数は12%なのに、そこで日本の映画文化の多様性が守られている。こういう映画館が閉じてしまったら、その地域の損失は膨大だと思う」「憲法では『健康で文化的な最低限度の生活』が権利として謳われている。健康に生活することと、文化的に生きること、どちらかではない」と危機感を示した。

さらに要望として、「映画館はいま感染防止の観点から閉じなくてはいけないが、再開するときは支援も必要。もう一度、映画館に観客を呼び戻すために映画館独自の力だけでなく、公的な援助をぜひお願いしたい」と訴えた。

映画監督の諏訪敦彦

「ミニシアターは全国の映画の興行収入の1%ほど。この1%を将来のために生かしていきたい」

続けて、北條誠人(ユーロスペース支配人、一般社団法人コミュニティシネマセンター理事)は映画館の実情について「4月7日に緊急事態宣言が発令され、5月6日までの休館を余儀なくされている。私たちは1か月のあいだ、一切の収入がなくなってくる。感染防止のためにどうしても必要なことだが、収入がないということが私たちに恐怖を与えている。5月までこの状態が続けば、多くの仲間の映画館が廃業を余儀なくされるのではないか。もしくはそれをかろうじて免れても、今まで通りの状態に回復するには多くの時間がかかることが想像に難くない」と窮状を明らかにした。

そして「いまのミニシアターの文化は、1970年代から50年間かかって作り上げてきた、世界的にも例のない特異なもの。様々な時代、ジャンル、国籍の映画を観続けることで多くの映画監督が育ち、その監督が世界の映画祭で賞を獲り、多くの人々に日本映画や映画の面白さを伝えてきた。若い監督やこれから映画を志す人たちがミニシアターで映画を観ることで、未来の映画産業を支えていくのではないかと思う。ミニシアターは全国の映画の興行収入の1%ほどを担っているが、この1%を将来のために生かしていきたい。そのためには支援、協力金などを出していただくことで、これからの日本映画の産業をなんとか支えていける。そして近々の私たちの映画の仕事を守っていきたい」と述べた。

映画の撮影現場、フリーランスのスタッフが置かれている現状も。「途方に暮れている」

また白石和彌監督は映画の撮影現場の現状を説明。

白石はゴールデンウィーク明けに長野で新作のクランクインを予定していたが叶わず、6月頭で調整しているがそれも厳しい状況だという。また周囲の話を聞いても、軒並み撮影の中断や無期限の中止といった状態に追い込まれていると話した。

そして「映画のスタッフは9割くらいフリーランスのスタッフに支えられているが、現状フリーの人々の働く場がなくなっている。映画はプロジェクトが動いていないと、緊急事態宣言が明けた翌日から働けるというものでもないので、フリーのスタッフはいつ映画の仕事が自分のところにくるのかほぼ見えない状態。それぞれが途方に暮れている」と制作現場のスタッフが置かれている現状にも触れた。

さらに「ミニシアターがなくなって、規模の小さい映画がなくなっていくと、スタッフも働く場をのちのち失っていくことにつながる。監督やスタッフ、これからキャリアを積む俳優さんたちなど若い才能の活躍する場、映画を作っていく土壌がこのままだと奪われていく。ミニシアターがなくなることは、映画の人材を供給していくことの根源的なものがなくなることにつながるのではないかという危機感を、日々強めている」と「#SaveTheCinema」に参加するに至った思いを述べた。

映画監督の白石和彌

小林三四郎(太秦株式会社)は配給会社の立場から「映画は春、ゴールデンウィーク、夏、正月の四期に集客を大きく稼ぐもの。今回は春からゴールデンウィークまでかかってしまっているので、配給および劇場にとって年間を通して大きな損失」と語る。

「政府からセーフティーネットが提示されているが、それは借金です。給付ではありません。借金は猶予期間が過ぎたら確実に重くのしかかってきます。ただこの困難を乗り越えるにはそれを活用しなくてはいけないだろうと思う」と話したほか、「うちの会社は天皇制や戦争責任、戦争犯罪、差別、そういった作品をやるが、それを引き受けてくれるのはミニシアターしかありません。また大陸との関係で自国では公開できない作品を引き受ける存在としても日本のミニシアターがありました。ミニシアターの存在はアジアにとって、とても貴重な場所であると認識しています。日本国内の問題にとどまらず、アジアの共に生きている人たちの情報発信する場所であると私は考えているので、そういう場を失ってはいけないと思っています」と日本のミニシアターの存在意義について触れた。

省庁の対応は「まだまだ危機感が足りない」

また本日、厚労省と文化庁を訪ねたという 西原孝至監督は「国は自粛要請や緊急事態宣言を出しているが、行政権をもって映画館を開いていけないと命令を出している状況、損害を負わせている状態だと思います。それに対して社会として補償をしないというのは、国と国民の権利関係において成り立っていないのではないか。そのあたりは今後も声を上げなくてはいけないと思っています」と述べたほか、本日対面した省庁の対応について「正直、まだまだ危機感が足りない。現場の声を知らない。悠長なことばかり言っていたので、いま危機的状況にあることを可視化させて、もっとこの運動を大きくしていきたい」と話した。

映画監督の西原孝至

署名は引き続き募集。クラウドファンディング「ミニシアター・エイド基金」は2日間で8000万円に達する

「#SaveTheCinema」の今後のアクションとしては、署名への賛同を引き続き呼びかけるとしているほか、来週から補正予算の審議が始まることを踏まえ、省庁だけでなく、審議を行なう国会議員にも働きかける考えもあるという。(署名ページはこちら

また「#SaveTheCinema」と連動する動きとして、4月13日には深田晃司、濱口竜介が発起人となったクラウドファンディングプロジェクト「ミニシアター・エイド基金」がMotion Galleryでスタートしている。

本日の会見に参加した深田は「行政の支援を待っていても間に合わない、この1〜3か月で潰れてしまうミニシアターもあるはずだという状況を受けて、クラウドファンディングで一般の方から応援を集めてミニシアターに届けようという活動をすることになった」と説明。目標の1億円に対し、開始から2日足らずで8000万円以上の支援が集まったことについて「本当に驚いている。ミニシアターがなくなったら困るという人がこれだけ潜在的に日本中にいたということ。ミニシアターが応援されているというだけでなく、映画そのものが応援されているのだと励まされている」と述べた。

「ただこれはあくまで緊急措置。本来なら国がセーフティーネットを作ったり、平時のときから諸外国と同じレベルで助成を出していれば、1、2か月で潰れるという状況にならなかったかもしれない。映画業界のなかでも互助する仕組みが欠けていた。そういった問題も今後は解決しなくてはいけない」と強調した。



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