ミラノに生まれた新しいデザインアワードと伊東豊雄&平田晃久による巨大インスタレーション『amazing flow』

世界最大の国際家具・デザインの見本市


今年も『ミラノサローネ国際家具見本市2013』と『ミラノ・デザインウィーク』(ミラノ市内全域にわたる、この時期のデザインイベントの総称)の季節がやってきた。この時期のミラノは、世界最大の国際家具・デザインの見本市を一目見ようと、世界中から集まるインテリアデザイン関係者で大変な賑わいを見せる。

そんななか、「ムゼオ・デッラ・ベルマネンテ」にて、4月10日〜14日の4日間行なわれた『LEXUS DESIGN AMAZING 2013 MILAN』は、LEXUSがブランド理念として掲げる「人間と自然との共生」というテーマに対し、新たなアプローチを提案する展覧会。昨年から始まった国際的なデザインコンペティション『LEXUS DESIGN AWARD』の授賞式と、展覧会趣旨に賛同した建築家・伊東豊雄が監修し、若手建築家・平田晃久が空間構成を担当して制作されたインスタレーション展示『amazing flow』の様子を取材した。

『LEXUS DESIGN AMAZING 2013 MILAN』会場風景
『LEXUS DESIGN AMAZING 2013 MILAN』会場風景

「流れ」を体感するデザイン


「車の背後にある哲学を表現した」という『amazing flow』は、約330平方メートルの空間に置かれた、5.5メートルもの高さがある大型インスタレーション。イタリア・ベニスより運んだ天然木を、連続したランダムな曲線状に配置し、「流れ」を作り出した。

『amazing flow』 監修:伊東豊雄、空間構成:平田晃久
『amazing flow』 監修:伊東豊雄、空間構成:平田晃久

地形・風・水など自然と融和した「流れ」の中で、デザインがいかにあるべきかをテーマとしたダイナミックな展示で、実際に作品内の一部分が歩ける(登り下りと言った方がよいかもしれないが)ようになっている。それにより、身体的な体験ができることも狙いだ。さらには、光を浴びた霧と巨大扇風機によって作られた風によって、視覚だけではなく触覚でも「流れ」を感じられる演出になっている。

次世代を担う才能を発掘


国際的なデザインアワードは色々あるが、今回が第1回目となる『LEXUS DESIGN AWARD』は、入選者に対するメンタリング制度を通して、作品のプロトタイプ制作に取り組むことが特徴だ。若くて将来有望なクリエイターを見つけ出し、国際的に活躍する人材を支援していこうというこの試み。「Motion」がテーマの今回は、1,243点の応募作品から、最終的に12作品が選ばれ、実際にミラノの会場で2点のメンタリング作品に展示機会が与えられた。審査員でありメンターをつとめた、プロダクトデザイナー・サム・ヘクトと、建築家・石上純也の指導を受けながら、それぞれの制作は行われていったようだ。

『Making Porcelain With an ORIGAMI』
『Making Porcelain With an ORIGAMI』

白い陶器による作品を展示していたのは、応募当時まだ多摩美の学生だった五十嵐瞳さん。石上純也のメンタリングによって、紙製の型枠を使った陶器『Making Porcelain With an ORIGAMI』を制作した。今回生まれて初めてコンペに出品したという五十嵐さんは、「繊細な表現にしたかったので、紙製の型枠を使いました。焼成の際に紙は焼けて無くなってしまうので、これは一度きりの形です。工業製品として生産ラインに乗せられるよう改良もしていきたいし、食器以外のものにも応用していきたい」と、これからの意気込みを語る。

五十嵐瞳
五十嵐瞳

一方、『INAHO』というインテリア照明作品のプロトタイプ制作を行ったのは、これが初めてのプロジェクト制作となるtangent。イギリスのロイヤル・カレッジ・オブ・アートの博士課程に在籍する吉本英樹さんと、電通でアートディレクターをつとめる小野恵央さん。イギリスと日本の2か国を跨いで活動しているユニットだ。元々、工学系の研究をしていたという吉本さんが技術的な部分を担当。そこに小野さんがデザイン的な要素を加える。

『INAHO』
『INAHO』

先端にランプが付いた細長い棒に、人の動きに反応するファイバーを埋め込むことで、人が近づく度に稲穂のような動きを作り出す。光と動きによる「流れ」を感じさせる、インタラクティブな作品だ。

tangent(左:吉本英樹、右:小野恵央)
tangent(左:吉本英樹、右:小野恵央)

他の10点の入選作品は、パネル展示が行われた。受賞者は世界中から選ばれ、電動スクーターやランプなどのプロダクトから、橋やテント型シェルターなど建築寄りのものまで、幅広い作品が受賞した。

『Slides Bridge』zhufei
『Slides Bridge』zhufei

日本からは他に2作品が選ばれた。日常にあるデザインの役割を再認識させてくれるのが『World Clock』という作品。「会社の壁に6つの国の時計が並んでおり、これをシンプルにできないかなと思ったのが発想のきっかけ」とは、TOTOで働く石川雅文さんの弁。時計本体を回転させることで、世界中の時間が分かる。非常にシンプルだからこそ強いプロダクトだ。

『World Clock』石川雅文
『World Clock』石川雅文

ATELIER OPAは『The drinking fountain』という、蛇口から流れる水を使って、蝶やトンボなどの形を作る作品で受賞した。以前は、大きな噴水を使ってモニュメントを作ろうとしていたこともあったそうだが、身近な世界に注目したことで生まれたのがこの作品だ。

『The drinking fountain』
『The drinking fountain』

「流れ」ていくもの


「流れ」というのは物質が融合し変化していく、その瞬間に存在するもの。それは次々と新しい才能が生まれ、新陳代謝が繰り返されていくデザイン界にも当てはまるのかもしれない。注目を集める若手建築家・平田晃久による『amazing flow』。暗い空間の中で、木材という重い素材を使用しているにも関わらず、どこか軽やかな印象を感じさせるのも、やはりそこに「流れ」の存在を感じさせるからなのだろう。そして今回12組もの若手クリエイターをフックアップした『LEXUS DESIGN AWARD』も、デザインを未来へ向かうための、新しい「流れ」を作り出す原動力になっていくはずだ。デザインの本場ミラノで、今後ますます素晴らしいアーティストが発掘され、育っていくことを期待したい。

「LEXUS DESIGN AWARD」12組の受賞者たち
「LEXUS DESIGN AWARD」12組の受賞者たち

イベント情報
『 LEXUS DESIGN AMAZING 2013 MILAN』

2013年4月10日(水)〜14日(日)
会場:イタリア ミラノ 「ムゼオ・デッラ・ペルマネンテ」
企画:Lexus International 



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