レビュー

関和亮、三輪士郎、YKBX、水尻自子、青山裕企、kz……トップクリエイターによるコラボ作品の裏側

阿部美香
2015/02/10
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関和亮、三輪士郎、YKBX、水尻自子、青山裕企、kz……トップクリエイターによるコラボ作品の裏側

クリエイティブ業界も注目のトークセッション。覆面姿の三輪士郎も参加

去る2014年12月18日、秋葉原のパンダスタジオハリウッドにて、映像作家の関和亮、イラストレーターの三輪士郎、アートディレクターのYKBX、アニメーション作家の水尻自子、写真家の青山裕企、ミュージシャンのkz(livetune)ら異ジャンルのクリエイターが集結し、1つの映像作品を合作したプロジェクト「Cintiq Creators Mash-Up」のトークセッションが開催された。


豪華かつ意外な組み合わせに各方面から驚きの声と注目が集まっていた同プロジェクトだが、じつはクリエイター全員が顔を合わせるのは今回が初めて。各ジャンルにおいて今やカリスマ的存在となった個性派クリエイターがコラボレーションしただけでなく、ファンの前に顔を出してトークをするという試みは、クリエイティブワークに興味のある人々には興味津々に違いない。

さて、いったいどんなトークが繰り広げられるのかと筆者も興味津々で会場に足を運ぶと……まず驚かされたのが、普段は顔出しがNGゆえに自前のマスクを付けて登場した三輪の姿! 同時配信されたニコニコ生放送に書き込まれたコメントでも、視聴者が騒然となっていた様子が見てとれた。そんな見た目だけでも、会場はまさにクリエイターの個性と個性がぶつかり合う「異種格闘技戦」といった様相を呈していたのが面白かった。

覆面姿の三輪士郎(左)、青山裕企(中)、水尻自子(右)
覆面姿の三輪士郎(左)、青山裕企(中)、水尻自子(右)

クリエイターが子ども時代から培った「人となり」と作風の関係が垣間見られた質問コーナー

各クリエイターの紹介とオープニングトークに続いて、クリエイター同士の質問コーナーが設けられていたのも、同プロジェクトならではの試み。日頃の作品作りなどテクニカルな質問の応酬になるかと思いきや……唯一の女性クリエイターであるだけでなく、ストレンジなアニメーション作品で異彩を放った水尻には、関や青山から「好きな感触は?」「子どものころにした遊びは?」というプライベートな問いが集まり、いきなり盛り上がる。身体や素材に対するフェティッシュな感性が光る作品性が特徴の水尻と青山が、「餅のぷにぷにした感触」の魅力について意気投合していたのも「さもありなん!」と、聞いているほうがつい納得してしまった。

kz(livetune)(左)、関和亮(右)
kz(livetune)(左)、関和亮(右)

他にもkzから青山に対して「写真の青みがかった不思議な色合いはどうやって作っているのか?」という問いに、青山が「ライティング機材は持ってるが、ほとんど使ったことがない。全て自然光のみ」と答え、全員が驚くなど、聞いてみなければわからない作品作りのノウハウも語られていた。彼らの独特の作風の裏には、その人なりの感性が息づいていることがよくわかっただけでなく、クリエイター独特の個性というのは、子ども時代から培った「人となり」が如実に反映されているのだということも理解できる面白いコーナーだった。まさに「作品は人なり」。人柄こそが、クリエイティブなセンスというものなのだろう。

左から三輪士郎、青山裕企、水尻自子、kz(livetune)、関和亮

また、続いて行なわれた「くじ引きトーク」のコーナーで、他では触れることのできないクリエイターの裏事情が飛び交っていたのも本イベントらしい試み。関に「ただの罰ゲーム!(笑)」と言わしめたこのコーナーでは、「業界の景気は良くなっているんですか?」という質問クジを引いた青山が、「誰もがカメラマンになれる今、写真業界は斜陽で景気も最悪」と正直に答え、「こういうクライアントはできれば避けたい……」という質問クジを引いた水尻は、「○○さんらしい、自由な作品をお願いします! というクライアントはかえってやりにくい」と、こちらも率直に答えるなどの本音トークが繰り広げられ、全員が頷いていたのが印象的だった。ニコニコ生放送の全世界中継(笑)がなければ、もっと過激な本音が飛び出していたかも?

それぞれの制作を、実際の作品データで実演紹介

なごやかなトークの後は、「Cintiq Creators Mash-Up」コラボ作品のメイキング紹介へ。ステージ上の「Cintiq 24HD touch」を使って、各自の制作過程や作業のポイントを本人自らが解説してくれるレアな機会に、会場に集まったファンも興味津々の面持ちだった。

なお、本プロジェクトのテーマの1つは、制作にワコムの液晶ペンタブレット「Cintiq」シリーズを使って仕上げていくこと。クリエイターにとって、使用ツールに制約がある中での創作と聞くと、素人目にはそれがクリエイティブ自体の制約となり、各自本来の持ち味を活かすことが難しくなるのではないか? と思ってしまうが、普段から直感的な操作のできる液晶ペンタブレットを使用している関のディレクションにより、液晶ペンタブレットが全体の演出として盛り込まれるなど、逆にクリエイティブのきっかけを生み出していたことは、今回の作品そのものが証明済み。では実際どのように「Cintiq」を使用して作品を仕上げていったのか? 普段見る機会のない有名クリエイターの制作を間近に見られるチャンスが得られたのは、それぞれの作品についての理解を深める意味でも、とても有意義だった。

作品メイキングを紹介する関和亮
作品メイキングを紹介する関和亮

トップバッターはディレクターの関。「Final Cut Pro」でタイムライン編集作業を実演しながら、各クリエイターとのコラボレーションについて本人との会話を挟みながら紹介。関の仕事場に3日間缶詰になった三輪がイラストを完成させるまでを動画で記録して編集された、などの秘話も登場。青山のフォトレタッチ実演では、普段はシンプルな作品作りを心掛け、撮影後のレタッチはあまりしないという青山が、女子高生のソックスが動くシーンで肌につく靴下の跡を強調するレタッチに凝る様子を見せるなど、その人なりのこだわりが紹介されていたのも印象深い。ちなみに、青山が撮影に使用したカメラは「PENTAX 645Z」だそうだ。

作品メイキングを紹介する青山裕企
作品メイキングを紹介する関和亮

kz(livetune)は、イベント会場で音楽制作環境を再現することができなかったため、自宅での作業風景写真でメイキングを紹介。音楽制作で液晶ペンタブレットが使われる機会は珍しいが、kzは学生時代、すでにペンタブレットをエフェクターのように使って音楽制作に取り組んだことがあったのだとか! 音楽媒体では語られない、そんな驚きのエピソードが聞けたのも本イベントならでは。最も苦労したというYKBXパートの倍速リズムトラックの拡大画面などが観られたのも嬉しいプレゼントだった。

kzが制作したYKBXパートのリズムパート
kzが制作したYKBXパートのリズムパート

YKBXもSkypeで出演。三輪士郎は追加のキャラクターをアドリブで実演制作

続いては、別の仕事のため、当日会場に来られなかったYKBXがSkype映像で出演し、kz同様にメイキング風景を写真で紹介。それによれば、YKBXパートに登場する女の子のキャラクターは、「Adobe After Effects」のパペットツールを使って、身体パーツを微細にアニメーションさせて呼吸をするような演出を施し、生命感を吹き込んでいるのだとか。このあまりに細かい演出については、関も「知らなかった!」とビックリ。またYKBXは、Windows 8が搭載された「Cintiq Companion」を使用。3DCGソフトの「Maya」や「Adobe After Effects」を同時に立ち上げてもストレスなくオペレーションできる「Cintiq Companion」のスペックの高さに驚いたそう。これから液晶ペンタブレットの導入を考えているクリエイターにとっても、このメイキング紹介コーナーは、役立つ情報が満載だった。

『Cintiq Creators Mash-Up』、YKBXパート
『Cintiq Creators Mash-Up』、YKBXパート

YKBXに続いては、水尻が手描きアニメーションの線画制作を実演。今回の動画は秒間12フレームで制作され、「Adobe Photoshop」の動画編集機能を使い、レイヤーを重ねて少しずつ動きをずらしながら各コマを制作していったそう。1枚仕上げるのにかかる時間は10~20分ほどだと言いながら、実際の線画制作をサラサラと進めていく水尻の筆さばきに、他クリエイターたちも「すごい!」を連発していた。

作品メイキングを紹介する水尻自子
作品メイキングを紹介する水尻自子

そしてメイキングコーナーの最後は、画力の高さに定評のある三輪が登場。配信によるメイキング生中継は、イラスト好きのファンにとっても貴重な機会でもあり、ニコ生のコメントも大きな盛り上がりを見せていた。三輪は完成画のレイヤーを遡りながら、黒と白をテーマカラーにした2人の女子高生キャラクターの制作過程を紹介したが、いつもは線画から描くが今回はブラシで色を塗り込むように制作したことなど、三輪流の液晶ペンタブレット制作術が語られた。さらに三輪はその後のイベント進行中もそのまま「Cintiq 24HD touch」を使い続け、気がつくとその場で思いついたという第3の女の子キャラクター(もちろん、本邦初公開!)をスイスイと描き足した。この三輪のアドリブには、登壇したクリエイター陣も「おおっ!」という表情で、三輪の執筆作業をじっくりと見守っていた。

作品メイキングを紹介する三輪士郎
作品メイキングを紹介する三輪士郎

希有な異ジャンルコラボプロジェクトはここで一旦完結。気になる今後の展開は……

テクニックやコンセプトなど、「Cintiq Creators Mash-Up」の動画制作に直接まつわる話だけでなく、それぞれのクリエイターの制作へのこだわりなどにも触れることができた『Cintiq Creators Mash-Up トークセッション』。関は最後に「動画ができあがってから、クリエイターのみなさんと会う機会は今日が初めて。初めて会う人同士もいて、ようやくこれで作品が完成したなという気持ちで一杯という想いがある。液晶ペンタブレットの使い方や、制作に向かう心持ちも人それぞれ。ワコムのペンタブレットファンは多いので、みなさんのこれからの作品にも期待してほしいと思います」とコメント。関が話している間も、三輪のライブペインティングが続いていたのも、本イベントのリラックスムードありきの出来事だったのだろう。そんなファンサービスあふれたハプニングに出会えるなら大歓迎。日頃、交流する機会のないクリエイターの創意工夫とチャレンジにあふれたコラボレーションとなった『Cintiq Creators Mash-Up』。ぜひ第2弾も実現して欲しい。そう思ったのは、筆者だけではないはずだ。

イベント情報

「Cintiq Creators Mash-Up Powerd by Wacom」トークセッション
『Cintiq Creators Mash-Up Powered by Wacom』トークセッション

2014年12月18日(木)19:00~21:00 ニコニコ生放送で配信(放送終了)
出演:
関和亮
三輪士郎
YKBX
kz
青山裕企
水尻自子

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