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ライブハウス界隈に敢えて苦言を呈す

文:柏井万作

今のライブハウス界隈はどうも、「観客」の存在を忘れているのではないかと思う。それは何故か。

ほとんどのライブハウスの営業システムは、音響システムとスペースをバンドに提供することで利益を上げている。そして、そこを使用するバンドは観客を動員して利益を上げる。チケットの売り上げが「ライブハウスの使用料=ノルマ」を上回ればバンドは利益を得るし、下回れば足りない分の使用料をライブハウスに支払わなければならない。ライブハウスにとってのお客様はバンドであって観客ではないから、観客へのサービスは不十分になる。

「ライブハウスにノルマを払ってライブをやるっていうのは、お客さんにもバンドにも負担になって、ライブハウスだけがなんとか維持出来るっていうだけのシステムのような気もする」

と語ってくれたcryv森下さんの言う通り、ライブハウスとバンドと観客の3者関係はかなりギクシャクしている。バンドが増えれば増えるほどライブハウスも増えるわけだが、肝心の観客が比例して増えていない。だから今、バンドがライブハウスに使用料を支払うことが圧倒的に多くなっている。でもそれはライブハウスやイベントの問題というより、バンドの音楽表現の魅力が足りない、もしくは魅力を一人でも多くの人に伝えようとしていないのが原因だろう。音楽性に時代がついて来ない状況も確かにあるだろうが、その音楽性を心底愛して選択したのであれば、表現を磨き、一生懸命伝え、時代を変えていくしかない。拓人さんがSWAN SONG COUNCILにおいて常にabout tessとして出演している背景には、「まずabout tessが伝えていく」という姿勢が見えてくる。

観客はライブハウスのサービスが不満だし、バンドは使用料に不満を持つが、ライブハウスとしては困ったものだ。特に悪いことをしているわけではない。バンドが観客を呼んでくれないのが悪いと思う。観客が少なければサービス向上も望めない。でも、ライブハウスを使用するバンドはいて、使用料は支払われるからライブハウスは潰れないし、むしろどんどん増えている。そうなれば、1つのライブハウス/イベントに集まる観客数の平均値も下がっていくだろう。 要するに、この悪循環を打破するには観客数を増やす為の動きが必要なのだ。良い音楽を作ること、良い環境を作ること、良い音楽を伝えること。ひとつひとつの地道な作業の積み重ねでしか、この状況を打破していく術はないだろうと思う。ライブハウスやそこで行われているイベントには、素敵な音楽を感じられる夢のような瞬間が存在する。そんな素敵な瞬間をもっと多くの人に感じてもらう為に、バンドとライブハウスが手を組んで観客を増やす努力をしなければいけないのだろう。

今回取り上げたSWAN SONG COUNCILとCLOSERは、泥水飲みながらも、「お客さんを増やしたい」「知らない人に観てもらいたい」と必死で努力している。そして、そんな思いを共にする人同士で繋がり、輪を広げていこうとしている。

バンドやイベントがお客さんを集めようとするのは当たり前の姿勢だけれども、何だか今、そこが疎かになっている気がする。それは今回の「鶉野拓人インタビュー」を読んで頂ければ少しは感じ取ってもらえるだろう。悪循環に陥っている今の現状では、誰もが他者や環境、そして時代のせいにしてしまいがちだが、それでは何も好転しない。拓人さんや森下さんの他にも、本当に音楽を楽しんで、その魅力を伝えていこうとする人は多いし、そこにはしっかり観客が集まり始めている。音楽や観客に対する真剣な思いが実を結び始めているのだ。だから今、「観客が集まらない」ことを何かのせいにする前に、自分自身の気持ちを見つめ直す必要があるのではないだろうか。この状況を変えるのは、環境やシステムではなく、“人”だと思う。特定のコミュニティーの身内ノリで終わらず、「音楽が好き」という純粋な気持ちが、もっともっと純粋に繋がっていって欲しい。

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