広報・人事・営業・ディレクター職の人も必見。「伝わる文章」作成メソッド

プロフィール
松井謙介

株式会社ONE PUBLISHING取締役、メディアビジネス本部長
北海道札幌市出身。20年間雑誌やWEBメディアの編集に従事。現在はメディア運営のマネジメントをしながら、コンテンツの多角的な活用を実践中。自社メディアのみならず、企業のメディア運営や広告のコピーライティングなども手がける。また、立ち上げたばかりの新会社ONE PUBLISHINGでは広報部門も担当し、リリースの作成業務なども行っている。

企業とユーザーのタッチポイントが、SNSやオウンドメディアなどによって多様化している現在。「文章」で情報発信をする機会が非常に増えています。いまや文章を書くことは、ライターや編集者だけでなく、人事や広報、営業やディレクターにまで求められるスキル。だけど、「何をどう書けば良いの?」と困っている人も多いのでは?

そこで今回は、編集者として数々のメディア運営を手がけている、株式会社ONE PUBLISHING取締役・松井謙介さんに、誰にでも実践できて「きちんと伝わる」文章作成のメソッドを教えてもらいます。

編集職だけじゃない。あらゆる職種に求められる「文章を書く力」

こんにちは。ONE PUBLISHINGの松井と申します。2020年は、新型コロナウイルスの影響により、リモートワークを導入した企業も多かったのではないでしょうか。

「会わないこと」を前提としたビジネスが浸透する一方で、あらためてその価値がクローズアップされたビジネスワークがあります。それは「文章作成」。「会って話をする機会」が大きく減ったいま、表情や態度、会話の流れでやんわりと意思を伝達する、「あ・うんの呼吸」のような日本人的なコミュニケーションは大変難しくなっています。その代わりに、文章で正しく意図・意思・情報を伝えることの重要性がぐんと高まっているといえます。

これは、広報・人事・営業・ディレクター職など、あらゆる職種に言えること。業務の一例を挙げましょう。

・企業SNSの運用
・プレスリリースや社内報の執筆
・「note」などを使った、自社サービスの情報発信
・求人サイトへ掲載するための紹介文の執筆
・メディアタイアップ記事の校正
・ECサイトへ掲載する商品紹介文の執筆
・イベント台本の執筆

このように、商品やサービスの「認知」フェーズから、「購入」を経て「共有」に至るまで、カスタマージャーニーにいつも寄り添っているのが「文章」なのです。つまり、いまは編集者以外の職種でも、相手に伝わる文章を書くスキルが求められるのです。

今回は、このようにビジネスシーンのど真ん中にあるにも関わらず、ほとんど研修されることがない「文章記述」のメソッドをザッと解説していきます。広報・人事・営業・ディレクター職の方でも、「なるほど! 文章ってそういうふうにつくるんだ」と思っていただけたら、この記事は価値があるものといえるでしょう。

TOPIC
1. 良い文章の9割は「書く前の準備」で決まる
2. 「相手」を思いやってこそ、わかりやすい文章になる
3. 誤解されない文章を書くコツ
・まとめ

1. 良い文章の9割は「書く前の準備」で決まる

文章を書き慣れていない人から受ける相談に、「書くべきことはなんとなくわかっているけど、いざパソコンの前に座ると、何から書けば良いのか迷って手が動かない」というものがあります。これは「文章作成」を、「書くだけ」の行為として成立させようとしているのが原因でしょう。文章は、ある日突然、頭の上で光る電球のように、降って湧くものではありません。文章を「書く」行為は、あくまで最後のアウトプット。良い文章を書くには、それ相応の手順を踏む必要があるのです。

▼文章作成のフレームワーク
① 情報収集
② 情報分析
③ 企画
④ 制作(文章作成)

パソコンの前で「何を書けば……」と悩んでいる方の多くは、いきなり④の「制作」から入っていることがほとんど。そうではなく、文章は、「①情報収集=どんなネタがあるか」「②情報分析=世の中でどんなネタがウケているのか」「③企画=そのネタをどんな切り口で表現するのが良いか」、この三つのフィルターでろ過されたものであるべきなのです。

文章作成のフレームワーク。いきなり書こうとせずに、この手順を守ることが大切(画像提供:ONE PUBLISHING)

例えば、新商品のプレスリリース作成を題材に考えてみましょう。まず書き手である方は、その商品の魅力・特徴を、事業部や商品企画部などにヒアリングして、情報収拾をするはずです。次に、その魅力や特徴は、いったいどのようなユーザーに、またはどのような状況で使ってもらったら響くのか、市場調査などをとおして商品の訴求ポイントを分析。そして企画で、「市場調査データや企業代表のコメントを入れる」「有識者の推薦コメントを取ってくる」など、リリースのアウトラインが固まります。ここまでやって、ようやく「文章作成」が始められるというわけです。

誤解を恐れずに言うと、①~③の作業がしっかりできていれば、文章はもう90パーセント完成しているといえます。この三段階を飛ばしていきなりキーボードを叩き始めるのは、基礎トレーニングをせぬまま、トライアスロンの大会に参加するようなもの。フレームワークの各ステージですべきことをイメージして、文章作成に取り組んでみてください。

2. 「相手」を思いやってこそ、わかりやすい文章になる

「何を書くか」が見えたら、次は「どう書くか」に気を配りましょう。この「どう」には、「どうわかりやすく表現するか」「どう気持ち良く読んでもらうか」というニュアンスが込められています。いくら正しい日本語で文章を書いても、構成が破綻していれば、わかりづらくなるうえ、読者も興味をなくして閲読をスパっとやめてしまいます。逆に、構成がしっかり組み立てられていたとしても、文法が破綻していては、説得力のない文章になり、正しい情報が伝えられません。「わかりやすく、気持ち良く読み進められる文章」をつくるために、以下のことを意識してみましょう。

▼「わかりやすく」するために
① 全体的な話からはじめ、徐々に具体的な話題になるよう、「マクロからミクロを意識する」
② 一文が長すぎると、読者が意味を理解するまでに時間がかかってしまうため「短文を活用する」

▼「説得力」を増すために
① まどろっこしい文章は、内容が正しく伝わらない可能性があるので「前置き・余分・曖昧な表現は排除する」
② 「~される」「~考えられる」といった受動表現は、主語がはっきりせずモヤっとした印象になるため避ける

▼「興味を継続」させるために
① ネガティブな内容からポジティブな内容へ、または、真面目な内容から不真面目な内容へといった「ギャップ」を創出する
② ただの事実や情報の羅列ではなく、その情報にどんなことが起きるのかといった内容まで触れ、「読み手の想像力」を刺激させる

記憶に残る文章にするためのメソッド(画像提供:ONE PUBLISHING)

今回はこの文章作成メソッドのなかから、「マクロからミクロを意識する」について説明します。文章をわかりやすく、伝わりやすくするためには、「大視点」から「小視点」への変化を意識するのが鉄則。なぜなら、その構造が「因果関係」を示す場合が多いから。「大→小」の流れの文章は、「原因→結果」となっているケースが多く、文章をすっきり理解しやすくなるのです。

以下の三つの視点を例に考えてみましょう。


・世界的に新型コロナウイルスが蔓延している
・日本でも2020年4月に緊急事態宣言が発出した
・多くの飲食店が苦境に立たされている

例えばこの三つを、小さい視点から、大きい視点の順で構成すると、下記のようになります。

■良くない順序(小→大)
現在、日本国内では多くの飲食店が苦境に立たされている。2020年4月に発出された緊急事態宣言の影響が大きいのだ。世界的に新型コロナウイルスが蔓延し、衰える様子を見せていない。

これでも意味はわかるでしょう。しかし、「結果→原因」という文順になっているため、読むと「理解がいちいちつっかえてしまう」印象です。これでは読み手に負担をかけてしまいます。それでは、大きいものから小さい順にするとどうでしょう。

■正しい順序(大→小)
世界的に新型コロナウイルスが蔓延し、衰える様子を見せていない。日本でも2020年 4月に緊急事態宣言が発出されるに至った。その結果、国内では多くの飲食店が苦境に立たされている。

こちらのほうがスムーズに読めて、読み手の理解も邪魔しないのではないでしょうか。もちろん意図的に逆順にすることはあります。「日本の飲食店が危ない!」というような書き出しにすることで、結論を鮮明に際立たせるテクニックは多く見かけるものです。ただし、こうしたテクニックは、基本を知ったうえで活用するもの。まずは、「大視点」から「小視点」を徹底しましょう。

3. 誤解されない文章を書くコツ

より文章術に磨きをかけるために、具体的な表現手法も意識してみましょう。文章をわかりやすくするためには、以下の5つが重要です。

▼意識したい表現手法
・読点
・並列
・修飾
・主語
・「は」と「が」

今回はこのなかから最も大事な「主語と述語の関係」について説明します。

日本語は英語と違い、主語を省略しても良い言語です。しかし私は、主語を大切にしない文章を良い文章だとは思いません。それは、主語と述語の関係がねじれていると、読者に情報が正しく伝わらない危険性があるから。主語を省略しても構いませんが、下記の2点を守ることが基本です。

▼主語の大原則
①主語と述語は、必ず呼応するということを忘れない
②二つの文において、主語が同じ場合のみ、主語を省略できる

例として、これらが守られていない文章を紹介します。

■悪い例
株式会社ONE PUBLISHINGは、このコロナ禍の状況でコンテンツを適切にユーザーに届けるべく動画配信事業をスタートし、雑誌事業にとって代わるひとつの柱にまで成長した。

主語と述語がずれている文章です。「ONE PUBLISHINGがスタートした」のは良いですが、ひとつの柱に成長したのは、「ONE PUBLISHING」ではなく「動画配信事業」です。主語を省略したことによるこのねじれ現象は、よく見かけるエラーです。

それではこのねじれた主述関係を修正してみましょう。

■修正例:その1
株式会社ONE PUBLISHINGは、コロナ禍の状況でコンテンツを適切にユーザーに届けるべく動画配信事業をスタートし、雑誌事業にとって代わるひとつの柱にまで成長させた。

最後を「成長させた」とし、主語を「ONE PUBLISHING」に統一。これにより、後半の主語を省略しています。これでも十分わかりやすいですが、少し文章が長くなってしまいました。「ONE PUBLISHING」と「成長させた」の距離の遠さは、読み手に理解の負担を強いるもの。文を分け、二文目の主語を「この新事業は」としてみてはいかがでしょう?

■修正例:その2
株式会社ONE PUBLISHINGは、コロナ禍の状況でコンテンツを適切にユーザーに届けるべく動画配信事業をスタート。この新事業は、雑誌事業にとって代わるひとつの柱にまで成長した。

グッと読みやすく、誤解を生まない文章になったのではないでしょうか。

まとめ

いかがでしたでしょうか? 今回ご説明できたのは、ごくわずかなメソッドでしたし、読んでみれば「なんだそんなことか」という印象だったかもしれません。ただ、その「そんなことか」を言語化しておき、「常に意識できる状態にすること」が大切です。「あ~、なんかこの文章ヘンだなぁ」という感覚を、ロジカルに説明できる知見を持っておけば、修正への道筋が見えるのです。

文章の構成や文法を身につければ、パソコンを前にして「何を書こうか」「どう書こうか」と途方に暮れることはきっとなくなるはずです。この記事が、みなさんの文章作成の一助となることを願って、一旦脱稿といたします!

今回のおさらい(画像提供:ONE PUBLISHING)

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