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ビリー・アイリッシュの音楽が、時代に深く突き刺さった背景

ビリー・アイリッシュの音楽が、時代に深く突き刺さった背景

ビリー・アイリッシュ『WHEN WE ALL FALL ASLEEP, WHERE DO WE GO?』
テキスト
柴那典
編集:山元翔一(CINRA.NET編集部)

実兄と2人だけで作られた楽曲たちには、「個」の救済が強く宿っていた

ビリー・アイリッシュのやり方は、それら「2010年代のポップミュージックの常識」とは、まったく真逆だった。兄・フィニアスと2人だけで作られる彼女の楽曲は、圧倒的に閉じていた。それでいて、そのサウンドやメロディーや歌声には、他の誰にもない、研ぎ澄まされた美しさが宿っていた。

ビリーが自らの影響源として挙げるのは、Tyler, The CreatorやChildish Gambino、Lana Del Reyといった名前だ。そして先日“bad guy”のリミックスで共演を果たしたジャスティン・ビーバーの熱狂的なファンでもあった。

ビリーアイリッシュ“bad guy (with Justin Bieber)”を聴く(Apple Musicはこちら

彼女自身があからさまにラップをするわけではないけれど、サウンドにしても、フロウにしても、ヒップホップとR&Bが完全にメインストリームになった現在のアメリカのシーンを前提にしている。

だからビリー・アイリッシュの音楽性を軽々しくロックに位置づけることはできない。むしろ、Post MaloneやLil Nas Xらと同じように、ジャンルの定義が曖昧になった今の時代を象徴する存在と言える。

それでも、ビリーの音楽には、僕がたくさんのロックミュージックに惹かれてきた理由と同じ「個」の救いが、とても強く宿っているように感じる。ベッドの下に潜むモンスターの視点から描かれた“bury a friend”を筆頭に、彼女の想像力は、精神の「暗がり」から生まれている。“when the party's over”など多くの曲が、孤独や不安や儚さや痛みをモチーフにしていて、一方で“bad guy”のように、規範には従わない強さをダイナミックに打ち出した曲もある。

アルバムのリリースから数か月。彼女はあっという間に世界中を熱狂に巻き込み、スターダムを駆け上がった。4月には『Coachella Festival』で、6月には『Glastonbury Festival』で、数万人の大合唱が巻き起こった。

コーチェラのステージは、きっとその後も語り継がれることになるだろう。ビリーは宙吊りにされたベッドの上で歌った。

それは、そもそも兄のフィニアスが自分のバンドのために書いた曲だったという“Ocean Eyes”から1stアルバムの全曲にいたるまで、すべての曲が2人だけで書かれ、しかも実家のベッドルームでレコーディングされたものであることの象徴だろう。

ベッドルームで作られた、ささやくようなウィスパーボイスとサブベースの低音で組み上げられたダークでグルーミーな曲が、世界中を塗り替えてしまった。

そこに僕は、ポップミュージックの魔法を感じる。ジャンル名としてではなく、「もう一つの選択肢」という、「オルタナティブ」という言葉の本質的な意味合いを感じてしまう。

ビリー・アイリッシュ『WHEN WE ALL FALL ASLEEP, WHERE DO WE GO?』を聴く(Apple Musicはこちら
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リリース情報

ビリー・アイリッシュ
『WHEN WE ALL FALL ASLEEP, WHERE DO WE GO?』(CD)

2019年3月29日(金)発売
価格:2,376円(税込)

1. !!!!!!!
2. bad guy
3. xanny
4. you should see me in a crown
5. all the good girls go to hell
6. wish you were gay
7. when the party's over
8. 8
9. my strange addiction
10. bury a friend
11. ilomilo
12. listen before i go
13. i love you
14. goodbye
15. come out and play ※日本盤ボーナストラック
16. WHEN I WAS OLDER(Music Inspired By The Film ROMA) ※日本盤ボーナストラック

プロフィール

ビリー・アイリッシュ

2001年12月18日生まれ、ロサンゼルス出身のシンガー・ソングライター。8歳からロサンゼルス少年少女合唱団に所属し、11歳の頃から作曲を始める。13歳のときにレコーディングした「Ocean Eyes」をSoundCloudにアップロードしたところ、まだ13歳とは思えない表現力の高さが話題を呼び、同楽曲でInterscope Recordsよりデビュー。日本には2018年のSUMMER SONICで初来日し、パフォーマンスを披露して話題となった。2019年3月にSpotifyが発表した“世界で最も人気のある女性アーティストTOP20”では、レディー・ガガらを抑えてアリアナ・グランデに次ぐ2位にランクイン(集計期間:2019年1月1日~3月1日)するなど、日々注目を集め続けている。2019年3月29日に発売したデビューアルバム『WHEN WE FALL ASLEEP, WHERE DO WE GO?』は英米両国はもちろん全世界11ヵ国で1位を獲得し、英国では女性ソロ最年少1位、米国シングル・チャートでは14曲同時チャート・インを果たし、カーディ・B、ビヨンセ、アリアナ・グランデらが持つ女性アーティストの同時チャート・イン記録を更新するなど全世界で”現象”と呼べるほどの大ヒットとなっている。

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