この時代に「謎のカセットテープ」を配布するTAMTAMとは?

今春のメジャーデビューを控えた「21世紀型ダブバンド」TAMTAMが、1月21日から全国のタワーレコードで「謎のカセットテープ」を無料配布している。昨年発表の最新作『Polarize』が『MUSIC MAGAZINE』誌の年間ベスト企画で日本のレゲエ部門1位に選ばれるなど、ただでさえ話題豊富な中、なぜ彼らはこの時代にわざわざ「カセットテープ」を配布するのか? そしてそもそも、そのカセットテープには何が収録されているのか? 3月にはプレデビューシングル『クライマクス & REMIXES』のリリースも決定した彼らの魅力を改めて紐解くと共に、「謎のカセットテープ」の正体を追求した。

驚きをもって迎えられた、「ダブバンド」のメジャーデビュー

昨年の10月、「21世紀型ダブバンド」と呼ばれるTAMTAMが、ビクターのスピードスターレコーズからメジャーデビューすることが発表された。斉藤和義やくるり、星野源など良質なアーティストが数多く所属するレーベルだとはいえ、彼らのような「ダブバンド」のメジャーデビューは稀なことで、このニュースは大きな驚きをもって迎えられたように思う。

TAMTAM
TAMTAM

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しかし、ルーツと最先端を同時に視界に捉え、現在進行形のダブを鳴らすTAMTAMにとって、ジャンルのカテゴライズはあまり意味を成さないと言っていいだろう。CINRAでは、彼らの初の全国流通盤『meteorite』発表時に、いち早く紅一点のボーカリストkuroと、ベーシストのjunet kobayashiにインタビューを行っているのだが、その時点でkuroはこんな風に語っている。

kuro:これ(『meteorite』)を聴いてルーツっぽいと思う人もいてほしいし、ロックっぽいと思う人もそれはそれでいいから、とにかく自分たちがグッとくるものをやって、「それがTAMTAMのダブです」っていうスタンスでいようと思ってます。

また、kobayashiはこんな風にも語っていた。

kobayashi:高校生とか、自分たちよりももっと若い人にも届くと一番嬉しいですね。次の世代を担う……って僕らが言うのもなんだけど(笑)、もっと下の世代にも「こういう音楽どう?」って伝えたいですね。

愛するダブをより広く、幅広い世代に届けるために。彼らにとってメジャーデビューは、その目標を果たすための大きな挑戦なのだ。

ルーツと最先端を同時に捉えた、現在進行形のダブバンド

ではここで、彼らの経歴を簡単に振り返っておこう。2008年12月、中南米の音楽を演奏することを目的とした大学のサークルでメンバーが出会い、バンドを結成。kuro、kobayashiの他に、ギターのyuthke suzuki、キーボードのtomomi kawamura、ドラムのaffee takahashiが名前を連ねる。2011年2月にミニアルバム『Come Dung Basie』を自主制作で完成させると、それがバンド「あらかじめ決められた恋人たちへ」のダブPAでもある石本聡の耳に留まり、翌年彼のレーベルであるmaoから、LITTLE TEMPOのHAKASE-SUNをプロデューサーに迎えた『meteorite』を発表。このアルバムをたまたま耳にしたBase Ball BearのメンバーがTwitterで絶賛するなど、この時点で彼らにはジャンルの壁をもろともしない魅力があったと言えよう。

2013年には3月にミニアルバム『Polarize』を発表、10月にメジャーデビューを発表したわけだが、12月には『MUSIC MAGAZINE』誌の特集「ベストアルバム2013」で、『Polarize』が日本のレゲエ部門1位を獲得。選者の大石始から「レゲエというフォーマットをグイッと引き寄せ、伸び伸びと自身の世界を描いてみせた」と評され、メジャーデビューへの期待が一層膨らむこととなった。

なぜこの時代にカセットテープなのか?

そんなTAMTAMが昨年のクリスマスに「謎のカセットテープ」の無料配布を発表。「なぜこの時代にカセットテープなのか?」「何の曲が収録されているのか?」と大きな波紋を呼んだが、この時点では「ここには来春発売予定の新作に関わる重大なヒントが隠されています」とのコメントのみ。そして、年明けの1月15日、全国のタワーレコード17店舗で、1月21日からテープの配布が開始されることが発表され、今現在ではすでに入手困難との話も聞く。

では、「なぜこの時代にカセットテープなのか?」という話。CDからデジタルへと音源の発表方法が移行する中、まずアメリカでCD以前のメディアであるアナログレコードやカセットテープが見直され始めた。特にカセットテープに対しては、上の世代はノスタルジーを、下の世代は真新しさを感じ、コレクターズアイテム的な意味合いも含めて愛されるようになると、その流れは世界へ広がり、もちろん、ここ日本にも到着。この1〜2年ほどで、カセットテープを作るインディーバンドが少しずつ増え始め、短冊形のCDシングルを見直すといった、日本独自の動きも起きている。実際のところ、「えー、カセットテープなんて聴けないよ」という人がほとんどだとは思うが、その多くにはダウンロードコードが付属していて、ネットを通じてその曲が聴けたりと、こういったあたりは非常に現代的。つまり、今熱心な音楽ファンにとって、カセットテープはクールなアイテムというわけだ。

さらに言えば、ダブという音楽が、アナログなメディアとの接点が強い音楽であることも関係しているように思う。ダブにはダブプレートというアナログレコードの文化があり、プロモーション用に作られた希少盤であるダブプレートが、その珍しさによってDJの武器になったという歴史がある。また、「ダブ」とはつまり「ダビング」であるように、録音環境がデジタルに移行する以前は、マルチトラックレコーダーを用いてテープを加工することが一般的だった。つまり、「謎のカセットテープ」とは、こういったダブという文化の一側面を象徴したものだと言えるかもしれない。

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3月にプレデビューシングル『クライマクス & REMIXES』を発表

では続いて、「何の曲が収録されているのか?」について。実際に手に入れたカセットテープを見てみると、ラベルには曲名の表記は一切なく、バンド名とSoundCloudのURLが記載されているのみ。早速A面から再生してみると、木琴のような音を配した、ダンストラック寄りの楽曲が聴こえてくる。歌はしっかり聴こえてくるが、ところどころエディットが施され、かなりジャンルレスだが、耳に残る強烈なフックを伴う1曲だ。続けてB面へと行くと、ぶっといベースとこもった音色のスネア、ディレイでかなり飛ばされたボーカルと、こちらはいかにもダブらしい雰囲気を漂わせる。SoundCloudで試聴をすることはできるが、フルバージョンを聴けるのは現時点でテープのみ。手に入れることができた人は、ラッキーだと言っていいだろう。

さらにTAMTAMの勢いは止まらない。カセットテープの配布がスタートした1月21日、今度は3月5日にタワーレコード限定のプレデビューシングル『クライマクス & REMIXES』のリリースを発表。表題曲の“クライマクス”に、あらかじめ決められた恋人たちへの池永正二と、junet kobayashiによるリミックスを加えた3曲入りだそうだが……ん? クライマクス? そういえば、A面に収録された曲の中で、kuroははっきりと「クライマクス」と歌っているような……あら恋の池永とkobayashiのリミックス……なるほど、そういうことか。いや、実際に僕はこの収録曲の正解を知らないので、断定は避けておこう。しかし、僕の予想が当たっているのならば、“クライマクス”という曲は、かなりのキラーチューンであるはず。プレデビューシングルでいきなりクライマクス? いやいや、きっと彼らはそれすらも超えていくはずだ。

イベント情報
『TAMTAM I DUB YOU TOUR2014』

2014年3月16日(日)OPEN 17:30 / START 18:00
会場:愛知県 名古屋 池下CLUB UPSET
出演:
TAMTAM
jizue
egoistic 4 leaves
料金:2,800円(ドリンク別)

2014年3月23日(日)OPEN 17:30 / START 18:00
会場:大阪府 アメリカ村 CLAPPER
出演:
TAMTAM
psybava
and more
料金:2,000円(ドリンク別)

2014年4月6日(日)OPEN 18:30 / START 19:00
会場:東京都 下北沢 SHELTER
出演:
TAMTAM
THE OTOGIBANASHI'S
料金:2,500円(ドリンク別)

プロフィール
TAMTAM (たむたむ)

存在感のある歌声を軸に、レゲエを土台にしつつ雑多なビートを咀嚼したリディムセクションが太くうねるようにボトムを支え、バレアリックで時に空間的なギター、メロウなキーボードが彩りを添える21世紀型DUB BAND。ライブでは常にDUB PAを帯同し、生演奏に絡みつくようなリアルタイムのディレイ、リバーブ処理が空間を歪ませる。



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