
佐藤にとって、絵を描くという触知的な体験と、そこから生まれ出た無数の描線は、決まったかたちや意味を持たない「言葉」とも言えます。言葉の連なりはやがて手紙となり、「机の下」という親密な空間の力を借りて「ラブレター」へと変容していきます。本展において、佐藤は天井高6メートル、総面積約260㎡のアサヒ・アートスクエアのメインフロアを巨大な机の下に見立て、これまで経験してきた物事やイメージを編み合わせた巨大な絵画空間を作り出します。これまでの展示ごとに描かれた、時に全長数メートルにも及ぶドローイングのほぼ全点を展示空間に配置し、同時に会期の約半分の日程をかけて新作を描き進めます。
この試みは、一人の美術家の「これまで」と「これから」のドローイング/ペインティングを出会わせるための構築方法の模索でもあります。文字や植物のように繁茂するラブレターという名の絵画世界は、やがてアサヒ・アートスクエアを呑み込み、新たな風景を生み出すでしょう。(プレスリリースより)