アルコールを飲み過ぎて酷く頭が重い翌日は大抵決まっていつかの遠いところへ思いを馳せる。
中華屋の赤いテーブルに染み付いた汚れ、履き潰したスニーカー、風に揺れて凪いだ枝、刷り硝子の向こうで青く明ける夜、死んだ花、車窓から見えたピンク色の屋根、雨の匂いのする古い廊下。
いつの情景だろうか、そこに時間軸はなくイメージだけがこびりついている。奥歯にずっと砂がつまっているようなその感覚は、じゃりじゃりと少しづつ不快に私を追い詰める。
写真に写してしまうと今、目の前にあるものでさえとても遠く感じることがある。本当は何もかもが初めから遠く、日々の中ではそれに気付かない、もしくは気が付かないふりをしているだけなのか。写真によってその距離を一枚の真実として突きつけられた時、私は果てのない宇宙に一人取り残されているような気分になるのだ。
雑音が混ざり合った中にある一瞬の寂しさ/ノイズの中にふと現れる冷たさ
あらゆる場所でたくさんの人々が生まれ、それぞれの人生を送る。一時的な喜びも慢性的な悲しみもすべてを過去にしながら働き、暮らし、そして死んでいく。
忘れることは死よりも遠く、未来はここにある。
この度、私自身二冊目となる写真集のリリースに伴い展示をさせていただきます。線路沿いの日当たりの良い素敵なギャラリーです。皆様ぜひお越しくださいませ。(草野庸子ステートメント・QUIET NOISE arts and breakウェブサイトより)
草野庸子
『EVERYTHING IS TEMPORARY』
2017年3月1日(水)~3月13日(月)
会場:東京都 池ノ上 QUIET NOISE arts and break
時間:11:00~20:00
定休日:火曜
料金:無料