写真家として活動を続け、これまでにミュージシャンやアイドル、俳優やアーティストなどの表現者を中心とした数多くの人物と、それぞれのスタイルで向き合ってきた鳥居洋介氏と新保勇樹氏。人の生きるエネルギーを瞬間的に捉えてきたふたりが、今回展示テーマとして挑んだのが、ヌード写真。「ヌード写真とは何ぞや」というシンプルな概念とあらためて向き合い、各々の哲学に則って作品を制作した結果、二人展『NAKED』では、見事なほどに両極端な作品が展開されている。
鳥居氏は今回、自らと接点のない一般女性をモデルに起用した。そして、彼女たちができるだけカメラの存在を気にせず撮影ができる特殊なセットの中で、モデルとのコミュニケーションも最小限に留め、静かに、そして厳かにシャッターを切った。今回の撮りおろし作品は、ヌードのポートレートでありながら、物理的かつ心理的な距離感があることによって、独特のやわらかな美しさと、どこか手の届かないものへの眼差しのようなものが写りこんでいる。
一方、新保氏の作品はというと、日常の中で切りとられた女性との時間。撮りおろしというより、今回のためにセレクトされた、と言った方がふさわしいが、その中に裸の女性はどこにもいない。しかしながら、そのモノクロの世界にシュリンクされているのは、被写体との間にある生っぽく、艶っぽく、どこか刹那な空気感。そして、なんとも言えない男女の温度が、そこにはまだ漂っている。そんな写真たちを目の前に「これらは、自分自身がヌードになってしまった瞬間」と彼は言う。
言うなれば、これは「ヌード写真の因数分解」。どちらか一人の作品では完結しない、二人の作品をどちらも味わってはじめてわかる、その魅力がこの二人展『NAKED』には存在している。一枚の中に写るのは、被写体の「NAKED」だろうか、生物学的な「NAKED」だろうか、写真家の「NAKED」だろうか、それとも―。
本展では、鳥居洋介氏と新保勇樹氏による新たな作品と共に、二人の作品の間にある立体的な概念をぜひ、体感してほしい。(KATAウェブサイトより)
鳥居洋介・新保勇樹 二人展
『NAKED』
2017年9月15日(金)~9月24日(日)
会場:東京都 恵比寿 KATA
時間:12:00~20:00(9月15日は19:00~22:00)
料金:無料