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  • 2017年9月23日(土)〜2017年11月26日(日)

『試論:栄光と終末、もしくはその週末 / Week End』

撮影:田村友一郎
撮影:田村友一郎

「人間が同じ一つの場所に何十年も、何百年も住み着いて、こつこつと自分たちの生活を築いて行くことから文化が生れる。」とは、戦前から戦後にかけて世界の様々な都市に暮らした英文学者の吉田健一のことばです。これまで私たちの生活とそれを支える文化は、長い時間をかけて、それぞれの土地の環境に応じてゆっくりと発展してきました。

現在の世界は、たった50年前と比べても人口は既に2倍以上に達し、様々な技術開発がなされ、交通手段も飛躍的に発達し、人は自由に世界を往来するようになりました。とくにこの十数年のインターネット環境の発展によって国境を超えたコミュニケーションを容易にしたことは、土地と人と文化の関係に大きな転換点をもたらしました。

国内の状況に目を向けると、先祖代々の土地を離れる人も増え、大都市とその近郊に人が集中しています。日本の生活圏の大きな部分を郊外が占めるようになり、郊外はどこも似たような風景が広がっているというのは、多くの人が経験的に得ている実感でしょう。また、様々な地域で国内の移住者だけでなく外国人居住者も増加している現在、同じ地域に長く暮らしてきた人々と、外から来る人々が有機的に交わる状況はあるのでしょうか。むしろ場所を超えたコミュニケーションを可能にするインターネットなどの登場により、その断絶は進んでいるのかもしれません。そのような現在において、地域独自のコミュニティや文化の形成は果して可能なのでしょうか。

本展が実施される小山市立車屋美術館は、旧日光街道(現国道4号)沿いのかつての間々田宿に位置し、旧街道沿いには宿場の面影が所々に残されてはいますが、おしなべて日本のどこにでもあるロードサイドの風景が広がり、典型的な郊外都市という印象を受けます。小山市は、東京都心まで電車で約1時間半とアクセスもよく、10年程前と比較すると数千人規模で人口がなだらかに増加しており、郊外には珍しい右肩上がりの都市と言えるかもしれません。しかしその一方で日本全体に目を移せば、2011年を境に人口は少しずつ減少に転じています。少子高齢化はますます進み、都市部においても空き家増加の深刻化や貧困など、様々な問題が発生しています。そのような状況を考えると、現在成長傾向にある都市であっても、長いスパンで考えれば、近い将来の様相は決して楽観視はできないのかもしれません。

それらの状況を踏まえ、本展は、バブル期を経て今日に至るまでの社会の変動によって、都市の風景や私たちの生活がいかに移り変わり、今後私たちはどのような未来を描くことができるか、小山市立車屋美術館が立つその場所性や歴史、また美術館を取り巻く環境や建築の特異性といった要素を通して、あらためて考える契機とするものです。

ゲストキュレーターとして本展を企画する服部浩之は、建築を学んだ背景から、社会の諸問題と都市の風景、そこに根付く生活文化に関心を持っています。本展では、都市/生活/身体/メディアなどをキーワードにこれらの諸問題をより探求すべく、アーティストの田村友一郎を招いて新たなプロジェクトに取り組みます。田村は、写真と映像を専門的に学び、アーティストとして活躍する以前は「暮しの手帖」編集部でカメラマンとして働いたユニークな経歴をもつなど、まさに「都市/生活/身体/メディア」の関係を探求してきたアーティストと言えます。

服部と田村は約一年前から小山市を定期的に訪れ、観察し、議論を重ねてきました。そのような過程で、服部は小山市立車屋美術館の成り立ちや独自の規模感、そして美術館に内包されるプライベートとパブリックが侵食しあう特異なあり方に興味を持ち、公共施設としての美術館の可能性を改めて考えています。対して田村は、美術館の公用車である「日産グロリア」に着目しました。戦後の高度経済成長から導かれた豊かな生活を象徴する存在であった車から、日本の地方都市の現状や、将来の姿へと切り込んでいきます。本展では、この日産グロリアを起点にしつつも、小山市にゆかりのある著名人へのインタビューや車屋美術館を舞台とした映画の制作などを通して、交わることはあり得ないと思われる複数の出来事や物語が接続していくことで、現在を逆照射するパラレルワールドを築きます。

ますます先の見えににくくなりつつあるこれからの社会に対して、私たちはどう過去と折り合いをつけ、より良い生活のあり方を見出すことができるのでしょうか。芸術という術を介して考えていきたいと思います。(プレスリリースより)

『試論:栄光と終末、もしくはその週末 / Week End』

2017年9月23日(土)~11月26日(日)
会場:栃木県 小山市立車屋美術館
時間:9:00~17:00(入館は閉館の30分前まで)
休館日:月曜、第4金曜、祝日の翌日
出展:田村友一郎
企画:服部浩之
料金:一般400円 高大生250円
※中学生以下無料

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