パク・チャヌク監督『別れる決心』に磯村勇斗、小島秀夫、佐久間宣行ら38人がコメント

2月17日から公開されるパク・チャヌク監督の最新作『別れる決心』に寄せた著名人コメントが到着した。

同作は、昨年『カンヌ国際映画祭』コンペティション部門で監督賞を受賞。刑事ヘジュンが、崖から転落死した男の妻ソレの調査を開始することから物語は始まる。取り調べが進む中で、いつしか刑事ヘジュンはソレに惹かれ、彼女もまたヘジュンに特別な想いを抱き始めるというあらすじだ。ヘジュン役をパク・ヘイルが、ソレ役をタン・ウェイが演じる。

【桐野夏生のコメント】
凄まじい恋愛映画である。完璧な刑事が恋することによって自己崩壊してゆく。
その妄想すらも完璧で、女は男の崩壊の破壊力に怖じる。
だが、どこかおかしみがあるのは、完璧さそのものが滑稽だからだ。

【横山秀夫のコメント】
心に棲みつく映画だ。事件の罪と惹かれ合う罪。行き止まり（デッドエンド）を約束されたこのロマンスは、それゆえ初恋のように初々しい。

【磯村勇斗のコメント】
ロマンスであり、サスペンスでもある、大人の危険なラブストーリー！
観終わった後すぐに「もう一度観たい！」と思うほどハマってしまいました。
2人の駆け引きや、惹かれ合っていく時の表情・セリフが凄く好きです。

【桜庭一樹のコメント】
人生が困難でままならない時期に始まってしまう恋愛は、デコボコの台の上に荷物を乗せたような不安定さで、平坦な地面に置いたときとはまるで違う。それでもそのまま運命的な崩壊に向かって走るしかなかった……わたしはそのような物語として観ました。

【島本理生のコメント】
何が起きているのか、どこへ向かっているのか、まったく分からないまま、映像から目が離せなかった。愛と呼ぶにはあまりに自覚的で美しい被疑者の物語だった。

【吉田恵輔のコメント】
この世界観は一体何なんだ！異様な演出。独特な物語運び。遊び心満載なのに、最後には深く尊い愛が残った。

【行定勲のコメント】
唯一無二の恋愛映画だ。恋に堕ちた男の滑稽さ、そんな男を弄ぶ女の悪魔性に魅了される。
こんな男と女のロマンチックな道行を発想する、パク・チャヌクの独創的な映画センスにため息しかでない。

【小島秀夫のコメント】
パク・チャヌク監督作品の中では、最も静かで美しいサスペンス映画である。過度の暴力や扇状的な性描写はない。まるで自らの映像スタイルに“別れる決心”をしたかのように。まさに愛と喪失を描くパク監督版「めまい（Vertigo）」。それは”高所恐怖症“による”眩暈“ではなく、現代の我々が抱く”恋愛恐怖症“がもたらす”酩酊“なのだ。

【古家正亨のコメント】
あるはずのない、IT企業のような洗練された警察署。ヘジュンのデスクは、清廉な彼らしい美しさを誇っていた。
登場人物の心情と美術のシンクロニシティに酩酊。チョン・フンヒの歌う「霧（안개）」が2人の行く末に広がるそれ、そのものだったとは…。ストレートな描写なしで、監督史上最も“官能的”な映画に仕上げて見せたその手腕。
パク・チャヌク監督の、限りないその才能に酔いしれた。

【橋本稜（スクールゾーン）のコメント】
次のシーンのカット演出などに目が離せなく、派手じゃないコメディー要素が素敵で一度見ただけでも何度も見てしまいたくなる作品だなと思いました。パク・チャヌク監督作品でまた好きな作品が増えました。

【佐久間宣行のコメント】
軽やかに、豊かに、この映画は見てるものの予想を裏切り続ける。最後に残るのは、圧倒的な面白さ。

【北村一輝のコメント】
細部に渡り、巧妙に仕組まれた2人の距離感。アングル、編集、音、衣装、美術を駆使し、スマートウォッチを使い進んでいく物語も斬新で作品を際立たせていた。美しいタン・ウェイも魅力的だ。言葉では伝えきれない、これこそが映画というものだ。

【玄理のコメント】
“독한년”（えげつなく強い女）、そして“불상한 여자”（かわいそうな女性）に溺れたエリート警察官。
彼は幾度も「どうして俺が君を好きかわかるか?」と聞く。映画を見る前から、私は答えを知っていたような気がする。
湧き上がってくるような生命力、魅力、色気。言葉も国も越えていくタン・ウェイはずっと私のミューズです。

【ハリー杉山のコメント】
パク・チャヌクに人生を変えてもらった2003年。『オールド・ボーイ』で僕は彼の世界観に完全に心を鷲掴みされ、韓国のエンターテインメントは世界を制すと思いました。そしてオスカーを取り、人種の壁を越えるスーパーグループも生まれました。
ずっと楽しみにしていた巨匠の新作。それは全てにおいて究極。シネマトグラフィー。音楽。演出。滲み出る狂気。
そして様々な文明や王国を破壊させる愛という存在。もうたまらない。
文句なしの100点満点です。

【金承福（チェッコリ）のコメント】
愛することがどういうことかを久々に全身で感じた。切実に知りたい相手の気持ち。
抑えきれないときめきが二人の俳優の目つきに、波打つ海に、雨降る山の中に、前が見えないほどの霧の中に、すすり泣くような歌の中に本当にいっぱいだ。
映画を何度も観て、その切ない愛をもっと感じたくて脚本集まで買って読んでしまった。文字の奥の世界もすごい。

【宇垣美里のコメント】
言語の隔たりがある2人の間で交わされる"愛してる"は、直接的ではないからこそ、妖しく、美しく、鮮やかで。
パズルのように散らばった彼らの足跡を辿るうち、官能的な映像に惑わされ、溺れてもう息ができない。
ああ、これが大人の恋だと言うのなら、もう二度と、人を好きになんてなれやしない。

【山崎まどかのコメント】
物語の行方と運命を操る側のはずなのに、愛の不条理に惑う「宿命の女」と、彼女が迷走する道筋をスマートフォンで辿って相手の実像を探ろうとする男。
これほどドラマティックな幕切れでもなければ、断ち切れない絆もある。

【宇野維正のコメント】
1回目は予期せぬストーリー展開と登場人物の感情の変化に翻弄され、2回目以降は完璧にデザインされた画面の細部に酔いしれる。「劇場で観る映画」でしか伝えることのできないものが凝縮した、夢（悪夢？）のような2時間18分。

【村尾泰郎のコメント】
エリート刑事と美しい容疑者の禁じられたロマンス。なのだが、先が読めない展開、奇妙なユーモア、トリッキーな映像に幻惑されて、気がつけば登場人物たちと一緒に愛の迷宮をさまよっている。こんな不思議な映画が撮れるのはパク・チャヌクだけ。

【斉藤博昭のコメント】
一本の映画がここまで、観る人を動揺させるのか……。
そんな感覚に久々に襲われ、最後の最後まで心がざわめき続けていた。
大胆かつ挑発的、刺激的な演出の数々が、禁断の扉を開けるように主人公たちの危うすぎる関係に引きずり込む！

【立田敦子のコメント】
愛に侵食されゆっくりと“崩壊”していく男の心模様を、真綿で首を締めるように、華麗な演出で描き出す。
激しいバイオレンスもセックスもないが、紛れもなくパク・チャヌク史上最も残酷な愛の物語。

【下田桃子（「MOVIE WALKER PRESS」）のコメント】
テンプレートに禁断の愛を描くことはしない。安易な共感も寄せ付けない。
この世にたった一つの愛だ、そう思わせるタン・ウェイとパク・ヘイルの説得力がすごい。
こういう作品を観に、映画館に詰めかけてほしい！

【平井伊都子のコメント】
カンヌでのプレミア以来繰り返し観ているが、まだ五里霧中に彷徨している。
あと何度観たら、この映画と“別れる決心”ができるのだろうか。

【折田千鶴子のコメント】
一体どこへ行き着くのか、真実はどこにあるのか、目が逸らせぬまま翻弄され続け――
やがて訪れるラストの衝撃、狂気、悲しいほどの詩情！
何だ、このハードボイルドなメロドラマは。エグくも陶酔させる“そそられ感”にクラクラ！

【相田冬二のコメント】
進んでも光が見えないトンネル。歩いてもどこまでも遠浅の海。
背徳感にも不思議な脱線があることを、わたしたちの指先は知り、初めての安堵に出逢う。
パク・チャヌクは、映画以上に人間の感覚を進化させている。

【小野寺系のコメント】
霧の中に消えゆく女と、その姿を追い求める男。あえて古典的なノワール世界のスタイルにとどまりながら、“ファム・ファタール”を現在の方向へとゆっくりと反転させてみせるパク・チャヌク。
その停滞と進歩の葛藤こそが、この作品を映画的な官能へと導いている。

【くれい響のコメント】
男を惑わすファムファタールなタン・ウェイが還ってきた！とはいえ、今度はパク・チャヌク仕込み
手強いことは分かりつつ、果たしてマジなのか？　すっとぼけてるのか？
そう思った瞬間、自分も彼女の手中にハマってしまった!!

【中山治美のコメント】
タン・ウェイの『ラスト、コーション』の“艶技”再び！彼女なら主人公だけでなく、観客の心をも惑わすこと間違いなし。何より鬼才パク・チャヌクの創作意欲を刺激し、ゾクゾクするような脚本を書き上げさせてしまうとは。
あぁ、小悪魔が過ぎる。

【相馬学のコメント】
飄々としつつも不穏。危険でありながらロマンチック。
人を食ったようでいて、ふと愛憎の深淵が垣間見えてはドキリとさせる。
パク・チャヌクが描くオールドボーイとお嬢さんの恋物語は、想定内には収まらない！

【山縣みどりのコメント】
破壊力がすごいパク・チャヌク版「ロミオ&ジュリエット」。
男を愛で崩壊させ、永遠のミステリーとなって彼の心に残る女。
タン・ウェイのエロティックな魅力はまさに永遠なり！

【高橋諭治のコメント】
愛の妄執は道徳観念を吹き飛ばし、不眠症は現実認識を狂わせる。そのふたつに同時に襲われたら、何もかも崩壊するしかない。この底なし沼のようなミステリー・ノワールは、観る者の理性までも奪う甘美な毒をはらんでいる。

【小川知子のコメント】
深い霧に包まれ、山から海へと漂う二人の本心が、合成音声にのって一歩ズレて再生されたとき、そのリアリティのある物悲しさと可笑しみの沼に嵌ってしまった。
そして、今だにそこから抜け出せないでいる。

【四方田犬彦のコメント】
『別れる決心』はつねにわたしを苛立たせ、当惑させ、最後に置き去りにしてしまう。
人は人を狼だと思い、互いに疑いあう。これはウイルスの不安の中で撮られた『ツィゴイネルワイゼン』だ。

【高山亜紀のコメント】
心の奥底にしまってある禁断の欲望を
こじ開け、解放させるパク・チャヌクの世界
人ってこんなにも残虐になれるのか
人ってこんなにも大胆になれるのか
人ってこんなにも夢中になれるのか
箍が外れた大人の恋は天国で地獄

【新谷里映のコメント】
愛を惑わす仕掛け満載、でも描いている愛はものすごく純粋。
恋という沼に落ち、抜け出せないほどの愛に侵食されていく。
この余韻は、またしても私の中に居すわり続ける。恐るべし、パク・チャヌク。

【桑畑優香のコメント】
こんなにも、狂おしくも愛おしいラブストーリーがあっただろうか。
「愛してる」という平凡な告白を排除し、「崩壊」という単語で究極の純愛を表現する非凡さに脱帽。

【氏家譲寿／ナマニクのコメント】
性と生と精が香る繊細な“画”の連続。こんなに穢らわしく情欲的なのに切ない気持ちにさせられるとは。肉欲を伴わないプラトニックな激情は心を破壊する。
これは不適切な恋愛だ。

【今祥枝のコメント】
出会ってはいけない二人、決して結ばれてはいけない運命。
心の奥底に静かに渦巻く愛の妄執を、このようなミステリーとして描き切るとは。
完璧に計算しつくされたラストシーンに、ただただ言葉を失った。
やはりパク・チャヌクは一筋縄ではいかない。