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表現とは罪を犯すこと 瀬々敬久×中原昌也対談

表現とは罪を犯すこと 瀬々敬久×中原昌也対談

インタビュー・テキスト
田島太陽
撮影:小林宏彰

事件の「あと」にも人生がある

―本作は、少年犯罪についてのルポである『少年に奪われた人生』という本に影響を受けて作られたそうですが。

瀬々:そうですね。僕は実際にあった事件を題材にすることが多いんですが、これまでは「どうしてその事件が起こったのか」ということが知りたかったんです。でも今回は「事件後に何が残るのか、何が起きるのか」ということを描きたかった。先ほど話に出た2000年あたりから、事件の「あと」に興味が向かったんですね。時間が経つことで被害者も加害者もいろんな人と知り合い、おのずと世界は広がって行く。そういう中で、どのように人生が進んでいくのかということについて考えてみたかった。

中原:被害者にも加害者にも同情せず、フラットに見つめるわけですね。

表現とは罪を犯すこと 瀬々敬久×中原昌也対談

瀬々:ええ。ちなみに映画監督の森達也さんは、この本に登場する光市母子殺害事件の犯人と面会したらしいんですよ。それで彼に「あなたの本をよく読んでます」と言われたと。なぜかと聞くと「僕にはもう時間があまりないので、今は本ばっかり読んでるんです」と答えたそうなんです。それが僕にはちょっとショックでした。これはまさに事件の「あと」の話なんですが、そういった事件後の変化やストーリーに目を向けてみたかったんでしょうね。


―また、今回はいわゆる「自主制作映画」として撮られたそうですが、それはなぜだったんでしょうか?

瀬々:昔ピンク映画を撮っていた頃は、一般作とのボーダーなんてないんだと思って撮っていたし、その境界をなくすことが目標でもあったんです。ピンクは普通の映画よりひとつ下のもの、と思われているのが嫌でした。それがいつの間にか、あらゆるものが均質化してしまい、今は全てのものがノーボーダーに見える。僕が目指していたはずのノーボーダーが、なぜかとても気持ち悪いものに感じられてきたんです。そこで、もう一度自主映画的な姿勢で撮ることで、映画に情熱を込めてみたいと、ある意味直感的にそう思ったのかもしれません。

中原:ただ、観ていて自主映画的な質感は全くないですよね。テレビで放映しててもおかしくないくらいのクオリティに仕上がっています。役者さんもいいんですよね。個人的には光石研さんをもっと見たかったなぁ。

瀬々:光石さんは役柄的にあまり登場させられなかったのが残念でしたね。

中原:いい役者さんですよね。あとは柄本明さんもすごかったなぁ。

瀬々:強烈な顔してました。あの顔は普通の役者さんじゃなかなかできません。

表現とは罪を犯すこと 瀬々敬久×中原昌也対談
©2010ヘヴンズ プロジェクト

―主演の長谷川朝晴さんの演技もとても印象的でした。なぜ主役に起用されたんですか?

瀬々:長谷川さんって「昔この人と一緒に麻雀したことあるなぁ」っていう感じがしませんか?(笑) 良い意味でどこにでもいそうな雰囲気があって、そこが魅力に感じました。彼はほとんど「受け」の芝居だったから大変だったと思いますよ。よく演じ切ってくれましたね。

表現とは罪を犯すこと

―ところで、瀬々さんはピンク映画から出発されていらっしゃいますが、その経験が今に生きている部分はありますか?

瀬々:ピンク映画は好きで、その世界に入ったんですが、最初は大雑把に考えてましたね。語弊があるかもしれないけど、女の人の裸さえ出てくれば「ピンク映画」として成立する。だから残りの場面では実験的なことを展開できるという土壌があったし、そういうふうにも思ってたんです。でも、何本かやるうちに、セックスをちゃんと描かないとダメだなということに気が付いて。人と人とが対峙する場面ってどんな映画にも必要だけど、そのいちばん極限がセックスだから。「人がギリギリで向かい合う感じを描きたい」という思いは、当時も今もずっとありますね。

―今作では「罪と罰」という普遍的なテーマも登場します。ここで、よろしければお2人ご自身が犯した罪について、話せる範囲でお聞きしたいんですが…。

中原:そんなの言えないですよ!

瀬々:色々と問題が生じるよね(笑)。

表現とは罪を犯すこと 瀬々敬久×中原昌也対談

中原:んー…、僕は小さい頃、知らないオジさんに局部をイジられてお金をもらったことがあって。それはもちろんオジさんが犯した罪ですが、でも僕にとってはそれが罪かどうかなんてどうでもいいことなんですよ。

瀬々:え、なんの話ですか(笑)?

中原:いや、これまでに受けてきた教育の中で「罪」とされている行為はありますが、それが本当に悪いことなのかどうかなんて誰も検討しないわけですよね。例えば人を殺す、傷つけるということは間違っていると思いますが、でもそれ以外の罪とはなんだろうと。

瀬々:ちょっと話は逸れますが、若松孝二さんに『俺は手を汚す』というすごい本がありまして。ここには「映画を撮るということは既に罪を犯している」という覚悟が書かれているんですが、そういった感覚は確かに僕にもあるんですね。つまり、表現するということは罪を犯しているということ、ヤバいところに触れざるを得ない部分が絶対にあるんですよ。例えば撮影中にジャマな木の枝を折ってしまうこともそうですが、それを「手を汚す」と自ら告白し、それでも映画を撮るのが大事だと言った若松さんはすごいと思います。自分が決して立派なことをやっているのではないんだっていう自覚がそこにはある。

中原:うん、その覚悟が必要なんですよね。

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イベント情報

『ヘヴンズ ストーリー』

ユーロスペース、銀座シネパトスにて公開中、ほか全国順次ロードショー
監督:瀬々敬久
出演:
寉岡萌希
長谷川朝晴
忍成修吾
村上淳
山崎ハコ
菜 葉 菜
栗原堅一
江口のりこ
大島葉子
吹越満
片岡礼子
嶋田久作
菅田俊
光石研
津田寛治
根岸季衣
渡辺真起子
長澤奈央
本多叶奈
佐藤浩市
柄本明
人形舞台 yumehina
百鬼どんどろ
配給:ムヴィオラ

トークショー

2010年10月21日(木)18:00の回終了後
会場:東京都 渋谷 ユーロスペース
出演:鈴木卓爾監督+熊切和嘉監督+村上淳+瀬々監督

2010年10月26日(火)18:0の回終了後
会場:東京都 渋谷 ユーロスペース
出演:中原昌也+瀬々監督

公開記念ミニライブ+トークイベント
『晩酌の会〜映画を語ろう@しぶや花魁』

2010年10月31日(日)18:00開演 20:00終了予定
会場:東京都 渋谷 しぶや花魁 2F
出演:Tenko、安川午朗、瀬々敬久監督
料金:1,000円(1ドリンク付)
※映画の前売り券または鑑賞後の半券をお持ちの方のみご入場いただけます

プロフィール

瀬々敬久

1960年生まれの映画監督。京都大学在学中に『ギャングよ 向こうは晴れているか』を自主制作し注目を浴びる。その後「ピンク映画四天王」として日本映画界で独特の存在感を放つ。以後、大規模なメジャー作から社会性を取り入れた作家性溢れるものまで幅広く手がけ、国内外で高く評価されている。代表作に『雷魚』(1997)、『HYSTERIC』(2000)、『RUSH!』(2001)、『トーキョー×エロチカ』(2001)、『MOON CHILD』(2003)、『ユダ』(2004)、『サンクチュアリ』(2006)、『刺青 堕ちた女郎蜘蛛』(2007)、『フライング☆ラビッツ』(2008)、『感染列島』(2009)、『ドキュメンタリー頭脳警察』(2009)など。

中原昌也

1970年生まれ。90年代から暴力温泉芸者(Violent Onsen Geisha)名義で音楽活動を開始、現在はHAIR STYLISTICS名義で活動中。映画評論家、小説家としても活躍。『あらゆる場所に花束が・・・』(2001)で三島由紀夫賞、『名もなき孤児たちの墓』(2006)で野間文芸新人賞、『中原昌也 作業日誌 2004→2007』(2008)でBunkamura ドゥ マゴ文学賞を受賞。9月には初の絵本『IQ84以下!』が発売となった。

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シャムキャッツ“Four O'clock Flower”

ただシャムキャッツの四人がフラットに存在して、音楽を鳴らしている。過剰な演出を排し、平熱の映像で、淡々とバンドの姿を切り取ったPVにとにかく痺れる。撮影は写真家の伊丹豪。友情や愛情のような「時が経っても色褪せない想い」を歌ったこの曲に、この映像というのはなんともニクい。(山元)