同世代に向けたシュプレヒコール DUSTZインタビュー

メンバー3人全員が日本人とフランス人のハーフ。それぞれが端正な顔立ちを持ち、バンド活動の一方で役者やモデルとしても活躍…というプロフィールはひとまず脇に置いて、まずは英語とフランス語と日本語がミックスされたオリジナリティの高い楽曲と、LADY GAGAのマスクを手がけたことでも知られる小島穣二をはじめとしたデザインチームとのコラボレーションによる鮮烈なビジュアルを、耳で、目で、体で体感してほしい。昨年6月にメンバーの脱退を経験し、結成当初の幼馴染3人組に戻ったDUSTZが放つ約1年半ぶりのシングル『Criez』は、まさに新章の幕開けを告げる1枚。フランス語で「叫べ」を意味する『Criez』は、再び動き出した彼らの産声であると同時に、無欲な同世代への覚醒を促すシュプレヒコールでもあるのだ。さあ、今こそ叫び出せ! Criez!

監督も脚本も演者も全部やれるっていう意味で、バンドはいいなって思ったんです。

―バンドを組んだのが2005年で、Rayくんがきっかけだったみたいだけど、その頃にはもう役者もやってたわけだよね? でも、どうしても音楽をやりたかったの?

Ray:一番最初のキッカケは学園祭でチャリティライブをやろうって話だったんです。ちょうど音楽を聴き始めて、バンドかっこいいって思っていた頃だったんで、2人を誘ってバンドを始めたんですよ。

―それは2005年よりも以前にってことだよね?

Ray:以前です。ちょうどその後すぐに事務所に入ったんですけど、役者の表現活動が面白くて毎日がただ夢中で。それで、「あ、俺音楽やりたいんだった」って気づいたのが2005年です(笑)。それですぐ2人に連絡して。

―(笑)。でも、役者としても順調にキャリアを積んでいたなかで、それでも音楽に戻ってきたのは何故?

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Ray

Ray:役者って、もらった役に合わせて、自分とは別人を演じるじゃないですか? もちろん、役に自分のキャラクターだったり、自分がやる意味をつけたりするんですけど、100%自分ではないんですよね。それに、映画は監督のものだったりするけど、バンドは監督も脚本も演者も全部自分でやれるのがいいなって思ったんです。


―連絡を受けた2人はどうしたの?

Gus:俺は1週間待ってくれって。Rayはもう芸能の世界に入ってる人だったんで、自分が一緒にどういう風にやっていくか想像つかないじゃないですか? なのでよくいろいろ考えた上で、自分の中で決心しました。俺も音楽好きだし。

―KenTくんは?

KenT:そのときはやりたいことも決まってなかったんで、「いいよ」って速攻で言っちゃいましたね。

―KenTくんもモデルとして活躍しているけど、音楽活動とモデルの活動に関しては、どう気持ちを切り替えてるの?

KenT:マイペースなんで、あんまり気にしてないんですよ。言われたこと、できることをやってるって感じですね。

―Gusくんも音楽以外に何かやってるの?

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Gus

Gus:僕はいまのところ音楽だけですね。

―じゃあ逆に2人のことをどう見てる?

Gus:めちゃめちゃ器用だなとしか思えないです。俺は多分できないっすね。学業も高校で飽きたっていうか、「もういいかな」って(笑)。でも、音楽はずっと好きだったんです。親のお陰もあって、小さい頃からいろんなライブに連れてってもらったりとか、わりと音楽が身近にあったっていうのも大きいですね。


―漠然と音楽の方向に進めたらなっていうのはあった?

Gus:ありましたね。お金にできるできないは別として、趣味でも絶対やってたかなって思います。

2/4ページ:他の人に出せないものを作るしか表現者として生きる道はないんだろうなって。

他の人に出せないものを作るしか表現者として生きる道はないんだろうなって。

―3人全員がハーフっていうのはやっぱりDUSTZの特徴のひとつで、フランス語と英語と日本語が混ざった今回の曲っていうのはそれをすごく活かしてると思うんだけど、逆にハーフだからこそ苦労する部分っていうのもあるんですか?

Ray:日本人でもありフランス人でもあるっていうのは、逆に言うとどっちも故郷じゃないし、どっちからも外人に見られるんですよ。特に日本は鎖国的で、俺らが何を言っても「いや、お前ら(俺たちとは)違うじゃん」とか、「お前らそんなに苦労してないだろ?」っていう風に取られることもあって。だから、それに対してはずっと挑戦し続けてきたつもりです。それにロックって、マイナスをプラスに変える力があるじゃないですか。マイナスのものを吐き出して、それが相手のマイナスと融合してプラスになる音楽だと思うんですよ。

―うん、そういう側面はあるよね。

Ray:そういう意味でも、去年の春にドラム(日本人)が脱退したんですけど、それでハーフ3人組になって、逆に割り切れた部分があるんです。ハーフである俺らの強みやオリジナリティを出そう、周りから何を言われようが関係ないって思えて。あとこれは個人的なことですけど、音楽以上に役者仕事には「ハーフ」っていうのがすごく影響するんです。だって、日本人の役は日本人がやったほうがいいじゃないですか?

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―確かにそうだね。それに関しては、どう考えを切り替えたの?

Ray:切り替えるっていうか、自分の価値を上げるしかないんです。だからどんどん色んなものを吸収して、他の人に出せないものを作るしか表現者として生きる道はないんだろうなって。前例があんまりないんで。

―フランス語と英語の曲がシングルっていうのは、確かに前例がないだろうからね。

Ray:それはもう、それを出してくれるうちのレコード会社もすごいと思うんですけど(笑)、すごく作り手にとって勇気にもなってて、ありがたいですね。

「ハイ、僕らDUSTZです」っていうよりは、「俺らがDUSTZだコラ!」っていうぐらいの(笑)

―メンバーが抜けたことに関しては、どういう経緯だったの?

Ray:ミュージシャンとして紹介されたんですけど、彼も役者だったんですよね。「役者やってて、音楽もそんな好きなんだ? じゃあ、同じ気持ちだから、一緒にやろうよ」って感じで始まったんですけど、役者同士が同じバンドにいると、スケジュールが合わなかったり(笑)。でも彼からは色んなものを学んだし、バンドとしてのことを沢山教えてもらいました。

―リーダーであり、プロデューサー的なポジションでもあったんだよね?

Ray:ぼくら3人は幼なじみなんで、外部の人を入れて、その人にリーダーをやってもらうっていうのはすごい意味があったと思ってて。まったく違う考え方が入ったときに、俺ら3人の中ではオッケーとされてることがそうじゃなかったり、いろんなことが見えてきたんです。だけど、色んなことが重なって動けないっていう状態だったんですよね。それでフラストレーションもたまって、今回この形で3人になって、爆発して叫び出したってことですよね(笑)

―じゃあ、ホントに新たな始まりのシングルって感じだね。

Ray:そうですね。元々この3人が核だったんで、戻ったと言えば戻ったんですけど、ただ戻っただけじゃなくて、これまで関わってくれた人たちが教えてくれたことを携えた上での戻りなので、まったく新しいものができるんじゃないかって。

―今の心境としてはフレッシュな気持ち?

Ray:というよりは勢いでいった感じというか、「ハイ、僕らDUSTZです」っていうよりは、「俺らがDUSTZだコラ!」っていうぐらい(笑)、突っ込んだ感がありますね。シングルを出すのも久しぶりなのに、1曲目からフランス語と英語が混じった歌詞じゃないですか? 完全にファンには媚びてないんで(笑)

3/4ページ:国籍にこだわるんじゃなくて、「俺ら人間なんです」ってぐらいの立ち位置でいきたくって。

広がりがほしかったら英語だし、フランス語は濁音が多いんでリズムっぽいのが合うし、日本語はエモーショナルなものや、逆にやわらかいイメージにも合う。

―3つの言語が混ざった歌詞っていうのにはやっぱりすごくこだわったの?

Ray:こだわりましたね。3人になったんだから、3人とも対等に意見を出し合おうと思ったんですよ。これまでは俺が1人で歌詞を書いてたんですけど、これからは曲だけじゃなくて歌詞も3人でやってみようと。(Gusは)フランス語が上手いんだし、(KenTは)なんか面白いこと言い始めるんで、それを合わせてみたら案外上手くいって。曲も歌詞も3人でやったらおのずとバンドに一体感も出たし。

―2人は作詞してみてどうだった?

Gus:めちゃめちゃ面白いと思いました。多分3人で考えてるから楽しいっていうのもあったと思うけど…。

Ray:そうだよ、1人書いてるとひたすら辛い(笑)。第1稿目は自分の言葉だったり、書きたいことがあるんでスラスラ行くんですよ。でも1回出して、「ここがなあ…」って言われちゃうともう、「えー、そこが好きなんだけど」って意地になってくる(笑)。でも3人だと第一稿の時点で3人の意見が混ざってるんで、バランスが取れてるというか。

―KenTくんはどうだった?

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KenT

KenT:やっぱ歌詞もやってその上で曲ができると達成感が違いますね。でも、しんどいのもわかりました(笑)。

Ray:でも、この2曲はそこまで歌詞しんどくなかったよね?

KenT:君からしたら多分そうなんだろうけど…。

―(笑)

Ray:でもホントに上手くいきましたね。“Criez”の歌詞をフランス語と英語にしたっていうのも、歌を楽器として聴かせたかったっていうか、ノリとして聴いてほしかったんです。意味なんてわかんなくても感じられるものってあるじゃないですか? ビートがずっと4つ打ちでドッドッドッって鳴ってたら、誰だってリズムを感じられるはずだし。逆にカップリングでは、言葉の意味をちゃんと伝えたいところは日本語にしたりして、言語によってキャラクターが違うんですよね。

―なるほど、ただ3つの言語が使われてるだけじゃなくて、ちゃんとその言語のキャラクターに合った使い方をしてるわけだ。

Ray:そうですね。広がりがほしかったら英語のほうが乗りやすいし、フランス語は濁音が多いんでリズムっぽいのが合うとか、日本語はエモーショナルなものだったり、逆にやわらかいイメージにも合うとか。最初は狙ってなかったんですけど、途中から「あ、こういう風になるんだ」って新たなに発見していったし、これは俺らだからできることなんだなって思いました。

国籍にこだわるんじゃなくて、「俺ら人間なんです」ってぐらいの立ち位置でいきたくって。

―では、非常に印象的なビジュアルについても教えてください。どういう経緯で作られていったんですか?

Ray:3人になって、どういう風に見せるのが一番いいかなって考えてたんですよね。この3人は顔もキャラクターも相当濃いんで(笑)、それに負けないアートワークって考えてたときに、ちょうど(小島)穣二さんの作品を見て、「この人に頼んだら面白いんじゃない?」って。年も近いって聞いてたんで。

―そうなんだよね。DUSTZもそうだし、デザイン関係の人もみんな20代前半から中盤なんだよね。

Ray:そうなんですよ。それでレコード会社の方から連絡を取ってもらったんですけど、DUSTZのことを面白いって言って戴けて、逆にびっくりしてうれしくて(笑)。三位一体っていう言葉のイメージで、3人の顔がマスクでくっついてるって面白いねって話になって。

―実際に仕上がったマスクを見てどう思いましたか?

Ray:感動しましたね。「どうやって被るの?」とも思いましたけど(笑)。こういうビジュアル的なものって、色使いとか形とか質感とか、すごく感性が出るじゃないですか? そういう意味でもすごく信用のおける方だったんで、光栄ですね。

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―国を超えて活躍してるっていうのもDUSTZのイメージに合うもんね。

Ray:無国籍感は意識してたんですよね。僕らは「フランス人ハーフ」って言われてますけど、フランスって移民が集まってる国なんですよ。純粋フランスと純粋日本のハーフは俺ぐらいだし、そもそもそういう国籍にこだわるんじゃなくて、「俺ら人間なんです」ってぐらいの立ち位置でいきたくって。あのマスクは、そういうところも反映してくれたんじゃないかなって。

4/4ページ:全てが揃ってることによって、無欲になってると思うんです。

全てが揃ってることによって、無欲になってると思うんです。

―確かに、ヨーロッパっぽい雰囲気もありつつ、能面のようにも見えなくもないなあ。さっきも言ったけど、やっぱり近い世代で新しい価値観を見せたいっていうのもあったのかな?

Ray:同年代で固めたいってわけではなくて、僕らの世代で感じることって…すごいデカイ話になりますけど…。

―どうぞ、ぜひ。

Ray:なんでラルクとか一世を風靡したバンドの次が、僕らの世代から出て来ないんだろうって考えたときに、僕らの世代にはやっぱり向上心がないと思うんです。便利過ぎて、何でも与えられて生きてきてるんで。それって僕らの世代にしかわかんないことだと思うんですけど、与えられ過ぎてることの不幸っていうか、もちろんありがたいことなんですけど、全てが揃ってることによって、無欲になってると思うんです。

―なるほど。

Ray:なんとなく大学にいって、なんとなく就職できるところに就職して、好きとかそういうわけじゃないけど、お金もらえるから仕事してるみたいな、俺の周りにはそういう人がホントに多いんですよ。こんなに可能性に満ちてるのに、それが見れない人がホント多くて。例えば、昔の仮面ライダーと今の仮面ライダーって雲泥の差があるんですよ。今のはドラマがしっかりしてて、映像がきれいで、すごい完成されてるんです。そういうものを見ながら育ってきた俺たちが出せるものって、何かあるはずなんですよ。

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―ホントに今、Rayくんが言ったみたいに可能性はいくらでもあって、実際今回参加してるデザイナーさんは20代半ばでLADY GAGAとか世界的な仕事をしてるわけだもんね。

Ray:ちょっとしたきっかけの差だったりするんですよね。

―それこそLADY GAGAってアートとかファッション性っていうのをホントに一般レベルにまで知らしめた久しぶりの人で、それに感化されてる若い人もいっぱいいると思う。DUSTZもそういう存在になれたらいいよね。

Ray:やれればいいですねえ…生肉のコート着るか(笑)

―いや、それじゃパクリじゃん(笑)。

Ray:なんか自分にプレッシャー与えてるみたいだけど(笑)、がんばります。

―じゃあ最後に改めて、今回の作品に託した思いを、1人ずつ話してもらえますか?

Gus:“Criez”はアップテンポで、上げるために作った曲なんで、聴いて、気分を上げて、ライブに来て盛り上がろうぜっていうのはありますね。音楽は家で聴くだけじゃないんで、ライブ会場で一緒に盛り上がれたら嬉しいですね。

KenT:言いたいことを言わずに心の中にしまって、それがストレスになっちゃう人って多いのかなと思うんで、ライブに来て、それを吐き出して、ストレスを発散してもらえたらいいかなって。

Ray:今回のシングルでDUSTZってこんなバンドですっていうのが見せられたと思うんで、聴いていただきたいのはもちろんなんですけど、さっきも言ったように、ライブで、場を一緒に共有したいですね。僕らは1年間充電していたんで、そこから叫びだしたのと同じように、みんなで一緒に叫べば何かが変えられたり、自分の気持ちの中で革命が起きると思うんです。

リリース情報
DUSTZ
『Criez』

2011年4月6日発売
価格:1,200円(税込)
ESCL-3484 / Epic

1. Criez
2. Swallow

プロフィール
DUSTZ

2009年『Break & Peace』でメジャーデビュー。同年、フランスの音楽祭に招聘され、数千人を動員する。2010年ドラムが脱退、メンバー全員が日仏ハーフに。世界的なクリエイティブチームによる新キービジュアルを発表し、音楽業界のみならずファッション業界でも大反響を呼ぶ。2011年4月『Criez』をリリース。フランス語×英語×日本語で展開される新世代ハイブリッドロックの誕生。



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