特集 PR

ひとりぼっちの美学 倉内太インタビュー

ひとりぼっちの美学 倉内太インタビュー

インタビュー・テキスト
渡辺裕也
撮影:野村由芽
2013/06/04

現在の東京都内を中心に活動するシンガーソングライターの中では、今最もイビツな輝きを放っている存在だと、ここではっきりと言い切ってしまいたい。「倉内太と彼のクラスメイト」名義のデビューアルバムからほぼ半年で届いた2作目『刺繍』を聴き、そうした実感はさらに強くなっている。フォークやロックンロールのマナーを踏まえたソングライティングに乗せて歌われる、どこか頼りなくて人間臭いやつのストーリー。もしかするとそのほとんどは倉内自身のことを歌っているのかもしれないけど、彼の歌から立ち上がってくる男に、思わず自分の姿を重ねてしまう人はきっと少なくないんじゃないか。とにかく今、彼ほど内面の機微に触れてくる歌い手は他になかなか思い当たらない。

『刺繍』からは、劇団「ロロ」の三浦直之が監督を務めた映画『ダンスナンバー 時をかける少女』の主題歌でもある“時を踊る少女”をはじめとして、三浦とのコラボレーションによる影響がいくらかうかがえる。そして新バンド「ネイティブギター」との録音は、この作品に歯切れのよいリズムとグルーヴ感をもたらしている。こうして作品を耳にしただけでも、倉内を取り巻く環境が少しずつにぎやかになっていることが感じられるし、それが彼の音楽活動をさらに充実させたことは間違いないと思う。包帯で指をぐるぐるに巻いた倉内と、ゆっくり言葉を交わしてきた。

今は、一人でどこまでやれるか試したい。

―その指、どうされたんですか。

倉内:ちょっと前にライブでモニターに挟んじゃって骨折しちゃったんですよ。

―しかも左手だし、しばらくギターも弾けないんじゃ?

倉内:それでもなんとかして弾いちゃってるんですけど、痛いですね(笑)。

―変なクセがつくから、無理しない方が……。

倉内:そうなんですけど、つい弾きたくなっちゃって……。なんか今日、うまく声が出なくて。ちゃんと話せるかなあ……。

倉内太
倉内太

―小さい声で大丈夫ですよ(笑)。さっそく新作のお話なんですけど、前作より少し引いた視点から描かれている歌が増えたような気がしました。

倉内:そうですね。あんまり自分について歌うことが見つからなかったというか、なくなってきたのかもしれない。だから、物語みたいな歌の方が楽に作れたんです。

―今回のアルバムは映画作品『ダンスナンバー 時をかける少女』に提供した曲もありますよね。この曲はどういう経緯で作られたのでしょう?

倉内:あの映画に関しては、まず仮のシナリオが送られてきて。その段階でシナリオと似た世界観の曲がすでにあったんです。それが“時を踊る少女”なんですけど、もともとロロの三浦くんとは近いものを感じたし、やりとりを重ねる中でお互いに刺激し合った部分もあったのかもしれない。

―映像作品とリンクした楽曲制作って、実際にやってみてどうでしたか?

倉内:やっぱり頭の中にあるものを現実にしていくのってすごく難しい作業ですよね。自分の曲が使われることもあって、ただ単純に楽しんで観るわけにもいかなかったし、緊張感もありました。

―すごくざっくりした質問ですけど、今倉内さんが一番関心をもっているのはどんなことですか?

倉内:それはやっぱり弾き語りかな。今は一人でどこまでやれるか試していきたくて。

―なにかそう思うきっかけがあったんですか?

倉内:最近ちょっと歌うのがしんどかった時期があったんです。でも、自分が歌うのを止めたらすべて終わりだなっていう気持ちもあるから、なんとしても続けていこうと思っているんです。それで自分がずっと歌を続けられる形を考えると、やっぱり一人だろうなって。

Page 1
次へ

リリース情報

倉内太<br>
『刺繍』(CD)
倉内太
『刺繍』(CD)

2013年5月29日発売
価格:2,310円(税込)
DCRC-0080

1. 時を踊る少女
2. cry max
3. 22.5
4. イライラキラキラ
5. 倉庫内作業員の遊び方
6. 失神させたい
7. どうしようもなく今
8. 愛なき世界
9. キッドのポエム
10. 倉庫内作業員の休日
11. 女の子が笑うと嬉しい

プロフィール

倉内太

1983年埼玉県に生まれる。小学校五年生の時にアコースティックギターを始め、地元でビートルズのコピーパンドに参加。リズムギターを担当する。2005年にロックバンド、ヨーコを結成。後のヨーコヨーコ。現在は解散。 2008年倉庫内作業員のアルバイトに採用されたことがきっかけとなり、意欲的に楽曲制作に取り組み、弾き語りのライブ活動を始める。2009年に自主制作で1stアルバム「倉内太と彼のクラスメイト」を完成させる。2012年新しいバンド「倉内太&ネイティブギター」を結成。2013年2stアルバム「刺繍」を完成。

SPECIAL PR 特集

もっと見る

BACKNUMBER PR 注目のバックナンバー

もっと見る

PICKUP VIDEO 動画これだけは

yahyel“TAO”

音楽と映像、そしてその相互作用によって完成するyahyelの芸術表現が完全に別次元に突入したことを証明するミュージックビデオ。クライムムービーとそのサントラのような緊迫感に終始ゾクゾクする。一体いつ寝てるんですかと聞きたくなるが、監督はもちろん山田健人。「崇高」という言葉を使いたくなるほどの表現としての気高さに痺れる。(山元)

  1. 香取慎吾が「慎吾母」に ファミマ「お母さん食堂」メインビジュアル公開 1

    香取慎吾が「慎吾母」に ファミマ「お母さん食堂」メインビジュアル公開

  2. 森山未來が蒼月潮、山本美月がウテナに、テレ東『このマンガがすごい!』 2

    森山未來が蒼月潮、山本美月がウテナに、テレ東『このマンガがすごい!』

  3. 安室奈美恵の引退日に1回限りのCM放送 安室の「笑顔」集めた60秒映像 3

    安室奈美恵の引退日に1回限りのCM放送 安室の「笑顔」集めた60秒映像

  4. 乃木坂46が『anan』ジャック 表紙は白石麻衣、西野七瀬、齋藤飛鳥ら7人 4

    乃木坂46が『anan』ジャック 表紙は白石麻衣、西野七瀬、齋藤飛鳥ら7人

  5. 「女の子は皆めんどくさい」コレサワが伝える、女子の本性と本音 5

    「女の子は皆めんどくさい」コレサワが伝える、女子の本性と本音

  6. 渡辺あや脚本『ワンダーウォール』、静かに話題呼ぶ京都発ドラマ地上波再放送 6

    渡辺あや脚本『ワンダーウォール』、静かに話題呼ぶ京都発ドラマ地上波再放送

  7. 崎山蒼志が戸惑い混じりに語る、『日村がゆく』以降の喧騒の日々 7

    崎山蒼志が戸惑い混じりに語る、『日村がゆく』以降の喧騒の日々

  8. 高畑充希×山崎賢人がオタク役、福田雄一監督の実写『ヲタクに恋は難しい』 8

    高畑充希×山崎賢人がオタク役、福田雄一監督の実写『ヲタクに恋は難しい』

  9. Corneliusが世界で認められるまで。海外進出のカギは何だった? 9

    Corneliusが世界で認められるまで。海外進出のカギは何だった?

  10. 『ULTRA JAPAN 2018』開催。日本におけるEDM人気の立役者が5周年 10

    『ULTRA JAPAN 2018』開催。日本におけるEDM人気の立役者が5周年