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ちっぽけな僕らは如何に生きる? MOBYインタビュー

ちっぽけな僕らは如何に生きる? MOBYインタビュー

インタビュー・テキスト
金子厚武
2013/10/04

MOBYの名が世間に知れ渡るきっかけとなったのは、『ツイン・ピークス』のテーマ曲をサンプリングし、1990年代初頭にクラブヒットとなった“GO”だが、日本の音楽ファンにとって特になじみ深い作品を挙げるとすれば、それはやはり1999年の『PLAY』と、続く2002年の『18』だろう。1998年にFATBOY SLIMが『You've Come A Long Way, Baby』を発表し、ビッグビートブームの余波が残る中、その要素を内包しつつも、ゴスペルやブルースといった黒人音楽を取り込み、最終的には世界で1,000万枚以上のセールスを記録するモンスターアルバムとなった『PLAY』。そして、メランコリックかつソウルフルな歌に重点を置き、やはり世界的なヒット作となった『18』。これら2作は共にエレクトロニックミュージックの範疇を軽々と飛び越え、多くの音楽ファンを魅了し、MOBYという音楽家の地位を絶対的なものとした。

では、なぜ彼の作品がそれほどまでにリスナーの心をつかんだのかと言えば、その音楽的なクオリティーの高さはもちろん、何より彼の作品に通底する「ヒューマニティー」の感覚こそが一番の理由なのではないかと思う。リベラルな思想家としても知られ、「すべての人間は自由な生き方を選べる」と語る彼の生み出す作品には、常に人間に対する温かみと厳しさを伴った独自の視座が含まれている。長年住み慣れたニューヨークを離れ、通算11作目にして初めて外部のプロデューサーを招くなど、彼にとっての新たな一歩を示す作品となった新作『Innocents』も、「人間を人間たらしめる条件は何か」という問いに対する、MOBYなりの解答が示された作品になっている。

さて、MOBYといえば、デビュー当時に彼がヴィーガン(完全菜食主義者)であり、クリスチャンであり、マルクス主義者であることが話題となるなど、そのユニークな人物像もよく知られるところ。日本のカルチャーや思想にも造詣が深く、『Innocents』には「侘び寂び」の概念が大きな影響を及ぼしたと言い、また好きな映画監督として北野武の名前を挙げていたりもする。今回の取材では、『Innocents』という作品の背景を探ることはもちろん、MOBYの人間的な面白さを改めて探るような質問も多めに用意し、インタビューを行った。うーん、やっぱり相当面白い人です。

万物は衰退し、いずれ消滅するのだと受け入れる発想、またそれと向き合うことが、僕を音楽制作に向かわせる大きな動機になっているんだ。

―ヴィーガンであったり、ヨガをなさっていたりするあなたの精神性は、音楽にも色濃く反映されていると思います。何か座右の銘はお持ちですか?

MOBY:一番気に入っている言い習わしは「自分をあまり重く受け止めないこと」だね。もちろん、自分と真面目に向き合うときもあるよ。でも、所詮我々は50億年も前から存在しているこの星で、たった数十年の命なんだ。あれこれ心配するのは簡単だし、自分のことを真面目に考えすぎるのも簡単だ。でも、そこからは何も生まれないと思う。

―本作の背景には、日本の「侘び寂び」の概念があるとのことですが、あなたはいつその概念について知ったのですか?

MOBY:僕は長年ニューヨークに住んでいたんだけど、ニューヨークには日系アメリカ人も多く住んでいて、その文化的影響は大きいと思う。あとは、個人的にさまざまな日本文化に興味があるんだ。茶道や禅といった伝統文化もそうだし、北野武の映画といった現代カルチャーにも興味がある。そういう日本の文化について学ぶ中で、「侘び寂び」の概念を知ったんだ。僕たちが生きるこの世界を表す素晴らしい概念だと思ったのと、僕が知る限り西洋思想には欠けている概念だとも思った。

―西洋思想との違いというのは?

MOBY:西洋の英語で最も意味の近い表現が「entropy」だと思う。「宇宙の物質やエネルギーの拡散化、一様化」とか「社会や体系内で不可避に起きる無秩序化、衰退」とかって意味なんだけど、その「entropy」も科学的な定義でしかなく、性質的な意味までは含んでいないんだ。

―「侘び寂び」の概念は作品にどのような影響を与えましたか?

MOBY
MOBY

MOBY:その影響が顕著に出ているのは、今作で主に使ったのが古い、正常に作動しない機材だったということ。すごく「侘び寂び」っぽい音楽の作り方だと思った。それと、僕がこれまでずっと学び続けているのは「人間であることの意味」なんだ。つまり、人間とその周りの世界、他人、宇宙、自分自身との関係性だ。その「人間であること」には不安や心配が多く存在しているように思える。なぜなら、我々が生きる世界が常に変動し、我々自身も常に変化しているから。我々は常に年をとり続け、大切に思っているものを失い続ける。そういった非永続性、あらゆる物が老化することも含め、万物は衰退し、いずれ消滅するのだと受け入れる発想、またそれと向き合うことが、僕を音楽制作に向かわせる大きな動機になっているんだ。

―さきほど北野武の名前が挙がりましたが、彼のどんな部分に魅力を感じていますか?

MOBY:彼の作品はこれまで5本か6本見たけど、『HANA-BI』が一番気に入ってる。彼の作品のどこに魅力を感じるかというと、彼が描く登場人物や物語って、一見型にはまっているように思えるんだけど、よく見てみると非常に変わっていて、特異だってことに気付く。あと、彼のユーモアのセンスも好き。彼の作品の一筋縄じゃいかないところが好きなんだ。中には、一見ありきたりのギャング映画かと思うものもある。でも、見れば見るほど、驚くほど独特な世界観があることに気付く。彼がいかに知的で、ユーモアのある思慮深い人かというのが伝わってくる。

―最新作の『アウトレイジ ビヨンド』はご覧になりましたか? あの作品はまさにギャング映画であり、激しい暴力的な描写も多い作品でしたが。

MOBY:その作品はまだ見てないんだけど、暴力シーンは確かに穏やかじゃない。でも、彼の作品の場合、ただ無節制に暴力を描くのではなく、暴力シーンも暴力に対しての批評のように感じる。アメリカ映画の多くは内省的要素がまったくなくて、ただ暴力的だけど、彼の映画の場合、暴力もまた観客に対して「なぜこんなに残忍な暴力を平気で受け入れる社会になってしまったのだろう?」という問いを投げかけているように感じるんだ。

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リリース情報

MOBY<br>
『Innocents』国内2枚組限定生産盤(2CD)
MOBY
『Innocents』国内2枚組限定生産盤(2CD)

2013年10月2日発売
価格:2,400円(税込)
BEAT RECORDS / BRC-397DLX

[DISC1]
1. Everything That Rises
2. A Case For Shame(with Cold Specks)
3. Almost Home(with Damien Jurado)
4. Going Wrong
5. The Perfect Life(with Wayne Coyne)
6. The Last Day(with Skylar Grey)
7. Don't Love Me(with Inyang Bassey)
8. A Long Time
9. Saints
10. Tell Me(with Cold Specks)
11. The Lonely Night(with Mark Lanegan)
12. The Dogs
13. The Perfect Life(with Wayne Coyne)(Moby's M-90 edit) [Bonus Track for Japan]
[DISC2]
1. I Tried
2. Illot Motto
3. Miss Lantern
4. Blindness
5. Everyone Is Gone
6. My Machines

MOBY<br>
『Innocents』国内通常盤(CD)
MOBY
『Innocents』国内通常盤(CD)

2013年10月2日発売
価格:2,100円(税込)
BEAT RECORDS / BRC-397

1. Everything That Rises
2. A Case For Shame(with Cold Specks)
3. Almost Home(with Damien Jurado)
4. Going Wrong
5. The Perfect Life(with Wayne Coyne)
6. The Last Day(with Skylar Grey)
7. Don't Love Me(with Inyang Bassey)
8. A Long Time
9. Saints
10. Tell Me(with Cold Specks)
11. The Lonely Night(with Mark Lanegan)
12. The Dogs
13. The Perfect Life(with Wayne Coyne)(Moby's M-90 edit) [Bonus Track for Japan]

プロフィール

MOBY(もーびー)

世界的大ヒット・アルバム『Play』や続く『18』を筆頭に、2000万枚ものトータル・セールスを記録しているマルチ・ミリオンセラー、モービー。音楽作品、パフォーマンス、ビデオ作品のすべてにおいて、グラミー賞を含む様々な世界的音楽アワードで受賞およびノミネートされている他、マット・デイモン主演の映画『ボーン』シリーズ、マイケル・マンの代表作『ヒート』、『007 トゥモロー・ネバー・ダイ』への楽曲提供、レオナルド・ディカプリオ主演映画『ビーチ』主題曲「Porcelain」の大ヒットなど、映画界からも信頼度は厚い。

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