新しい学校のリーダーズ、不寛容な社会へのちっちゃな反抗者たち

学校、バイト先、会社など、あらゆる場面で私たちは、何かしらのグループに属している。その集団で逸脱した行動をとれば「アイツは気に入らない」と、バッシングを受けてグループの輪から外されてしまい、ひとりぼっちになる。そうならないために、人は自分自身を抑制してみんなと同じように行動する……今や、SNSの急速な普及によって、何気なく発した言葉が引き金となり集中的な批判を受けるケースも少なくない。しかし、そうやって人目を気にして生活することに、一体何の楽しみがあるのだろうか?

「新しい学校のリーダーズ」は、そんな他人に対して不寛容な社会に一石を投じるグループだ。彼女たちは自らのあり方をこう規定する――「つまらない現代社会を強く・楽しく生きるべく、個性を発揮し、許される自由を見つけることで社会に怒られないレベルでアンチテーゼを投げかけ、【はみ出していく】小さな小さなレジスタンス」。

新しい学校のリーダーズが掲げる「はみ出す」とはどういうことなのか? イマドキの学校生活や若者のSNS事情、彼女たちから見た「大人」や「社会」について話を訊いた。

はみ出すとは、周りの目を気にせず、自分の個性を大切にして力強く生きること。(MIZYU)

―新しい学校のリーダーズ(以下、リーダーズ)は「はみ出す」というテーマを掲げていますよね。改めてどういうことか教えていただけますか?

MIZYU:はみ出すとは、周りの目を気にせず、自分の個性を大切にして力強く生きることです!

SUZUKA:「はみ出す」っていうのは違法的な行為だと思われがちなんですけど、そういうわけではなく。噛み砕いて言うと、「ただ単にやりたいことをやる」「好きなものを好きと言う」――そういった強さのことを「はみ出す」と定義しています。最近の若者ってはみ出しが全然できないので、私たちがエンターテイメントで、若者の背中をガンガン押していきたいんです。それが私たちなりの、はみ出しのあり方というか。

MIZYU:自分の意志を強く持ってほしいなって、若者のみなさまには言いたい。

手前から:MIZYU、SUZUKA、KANON、RIN
手前から:MIZYU、SUZUKA、KANON、RIN

―同じ現代の若者としても、たとえば学校生活のなかで、「最近の若者ってはみ出しが全然できない」と感じることが多いということですか?

RIN:感じますね。

SUZUKA:それで本当にいいのかな? って思っちゃいます。

KANON:女子は特にそうなんですけど、学校ってクラスのなかでグループにわかれるじゃないですか。この子と仲がいいから、他のグループの子とは関わらないようにする、みたいな暗黙のルールがあるんですよ。あとは悪目立ちしないように、本当の自分を出さずに大人しくしているっていう。

―どうして自分を出さない人が多いんでしょうね。

RIN:嫌われたくないとか、悪く見られたくないっていう気持ちが強いのではないかなと思います。実際、自分もそういう時期がありましたし。嫌われないようにする意識は誰もが持っていると思うけど、そこを一歩乗り越えて、自分の意志を伝えることで何かが変わることもあるかなって。だから、はみ出していったほうがいいと思うんです。

左から:RIN、KANON、SUZUKA、MIZYU

―過去のインタビューで、MIZYUさんがリーダーズの活動について、「現代社会における若者の反抗の象徴がテーマ」「こんな狭苦しい世の中ですけど、日々自由を探してます」ってお話していましたけど、「狭苦しさ」ってどこで感じますか?

MIZYU:みんなが自分を出せていないところですね。一人ひとりが自分を出して生きていけたら、世の中から狭苦しさはなくなるのに、閉じ込められたように生活をしている気がするんです。もっと視野を広くしてもいいんじゃないかな、って。

―それこそクラスみたいな小さな世界で、周りの目を気にして、自分らしさを押し殺して生きる必要はないと。

MIZYU:人生は一度きりなんだから、本当の自分を出して、意志を強く持って、やりたいことをもっと自分からやりにいかないと。そうすることで、もっと世界は広く感じられるようになるんじゃないかな。以上です!

MIZYU

―なるほど。お話を訊くまでは、「はみ出す」って大人への反抗というか、尾崎豊的なことだと思ってました。

MIZYU:それ、すごく言われるんです! 「はみ出し=違法行為」だと思われることが多い。あとは、「ふざける=はみ出し」だと思われていて、普通に「おはようございます」って挨拶すると「今日、はみ出してなくない?」って言ってくる人もいます。じゃあ、変な動きをしながら「おはようございます」って言えばいいんですか? みたいな。だから、「ふざける=はみ出し」じゃないんですよ。……まあ、思われがちですね。正直、ふざけているところはあるんで。

―「踊る、セーラー服と奇行癖」と呼ばれているだけに、奇をてらったグループだと誤解してる人は多そうですよね。

RIN:結構思われがちなんですけど、別にそういうワケではないです。「自分たちの感情のままに生きています」って感じ。

社会に出ている人間じゃないけど、不寛容社会だということはわかるんです。(MIZYU)

―ここまでは、対若者視点で「はみ出し」についてお話いただきましたけど、対社会に視点を移すといかがですか?

MIZYU:不寛容社会だなって思います。

―社会って、平たく言うと、いろんな立場の、いろんな価値観の人が生活を営む大きな集団じゃないですか。そこで人が心地よく生きるためにルールが存在する。それは学校も似ているところがあると思うんですけど、どういうところに不寛容社会を感じますか?

MIZYU:社会って、決められたことが多すぎると思うんです。もちろんその人が所属している場所にもよると思うし、自由な場所もあるかもしれないですが。

SUZUKA:大人も、「この会社では自分を出せない」「抑圧されて息苦しい」と思ったら、決められすぎている場所から抜け出してほしいんですよ。日本から抜け出すとか、そういう大きなことではなく。

MIZYU:大人には、上司に怒られるから「〇〇ができない」とか「××はやめておこう」って場面もあると思いますけど、「そんなの気にする必要ある?」って思う。

KANON:もちろん、ルールは守らなければならないですけど。

RIN:そうだね。ルールを守った上で、「どれだけ自分の思っていることを実現するか」っていうふうに考えて生きられると楽しいんだと思います。

左から:KANON、RIN、SUZUKA、MIZYU

MIZYU:「子どもなのに何言ってんだ!」と、思われるかもしれないですよね。ただ、社会に出ている人間じゃないけど、不寛容社会だということはわかるんです。私たちは脱不寛容社会を目指しています。

―社会に出ていなくとも、みなさんが感じ取る時代の空気にどこか不寛容さが滲んでいるんでしょうね。みなさんから見る大人は息苦しそうですか?

MIZYU:はい、そう見えます。

―はみ出してない?

SUZUKA:はみ出している人もいるんですけど、はみ出してない人のほうが多いと思います。

RIN:私たちに関わっている方たちは、はみ出している人も多いと思う。でも電車に乗ってるときに見る大人たちは、息苦しそうな顔をしてるなって。

私は平和主義なので、そもそも約束しないです。(KANON)

―今回リリースされた2ndシングルは、これまで以上にリーダーズのカラーが色濃く出ている気がします。1曲目の“キミワイナ'17”は、「学生時代に誰しもが経験したであろう?マラソン大会の『裏切り』をテーマにした曲」と資料に書いてあります。

一同:はい。

新しい学校のリーダーズ『キミワイナ'17』ジャケット
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―みなさんは裏切る側、裏切られた側にわけるとしたらどちらですか?

SUZUKA:どっちもあるんですけど、裏切っちゃうかも。

RIN:私も裏切るかな……。

MIZYU:「こいつ遅えな」って思ったときに「先に行くから!」って、一言伝えてから走ります。「こいつに合わせてたら、どんだけ時間がかかるんだ」って思っちゃうから。

KANON:私は平和主義なので、そもそも約束しないですね。

―第三の選択肢が出てきました(笑)。約束しないっていうのはなぜですか?

KANON:今までに誰かが裏切ったり、裏切られたりしてる場面を何回も見てきたし、そうなるのはもうわかるじゃないですか。だったら約束をしないで自分ひとりでやるほうが、自分のペースでできるからいいかなと。

RIN:それが一番なのかもしれないですね。

SUZUKA:でも、それを言っちゃうと、この曲は終わるので。

一同:(笑)。

―この曲のテーマを考えたら、裏切る人のほうが人生うまくいくよなって思いました。逆に義理堅く、約束を守る人のほうが損をするのかなって。

RIN:ああ~なるほど。この曲は、裏切られた側の気持ちを描いていますけど、裏切る側も自分の意志を強く持っているわけじゃないですか? 「この人に合わせたら遅くなるから走りたい」と思った気持ちをちゃんと実現するのって、ある意味正しいのかなって。他人に合わせず、自分がやりたいことをやるっていう点から考えると、裏切った側こそはみ出しなのかもしれないですね。

左から:SUZUKA、MIZYU、RIN、KANON

―男視点でいうと、女性社会では、いざというときに裏切れる人のほうが世の中を上手く生きていけるのかなって気がするのですが。

RIN:ああ、確かに! ずる賢い女がね。

SUZUKA:それは感じますね、感じたことがありますわ。

―どんなときに感じますか?

MIZYU:たとえば、ずる賢い人のほうが彼氏できること多くないですか(笑)。

SUZUKA:そうそう。自分は結構考えすぎちゃうタイプなんですよ。だけど、意外とワガママにいったほうが成功するパターンって多くて。ずる賢いっていうか、なんか「うわ、先にいかれた!」みたいな。

RIN:あるある!

―男もそういう女性をコロっと好きになりがちですからね。

SUZUKA:本当にそうなんですよ。

SNSに囚われて、本当の自分を見失ってる人が多いんじゃないかなって気がします。(RIN)

―2曲目の“SNS24時”は辛酸なめ子さんが作詞ですね。

MIZYU:これはSNSに24時間囚われている人に捧げた歌です。今の人はSNSに自分の生活を囚われすぎてるんじゃないかって思います。

RIN:SNSって本当に面倒くさいですよね。みんなSNSに気持ちを左右されすぎてると思います。「あ、こいつにフォローを外された。私も外そう」みたいなこととか。「別に嫌いで外したわけじゃないのに」とか。

―そういうところは大人も子どもも関係ないですよね。代表的なSNSといえばTwitter、Instagram、Facebookが挙げられますけど、10代の方は主にInstagramとTwitterを使っている印象があります。

MIZYU:うんうん、断然そうですね。

RIN:裏アカもTwitterが多いんですよね。少ない文字数ですぐにつぶやけるから。

SUZUKA:Instagramと違って文字だけでいいしね。

RIN:Twitterは感情に任せて、その場の勢いでつぶやく人が多いから、病んでいるのも超わかりやすいですよね。Instagramはキラキラした自分をアピールする人が多い。だから、“SNS24時”でも描いているんですけど、「インスタ映え」を気にしすぎて、Instagramに写真を載せるための生活を送っているみたいな人がいたりして。SNSに囚われて、本当の自分を見失ってる人が多いんじゃないかなって気がします。

私たち、メンバー同士で隠しごとが全然ないんです。(RIN)

―SNSはいかに自分が充実しているかをアピールする、見栄の張り合いって感じはしますよね。「普段、話しているとこういう人じゃないんだけどな。どっちが本当なんだろう?」って。

MIZYU:まさに!

KANON:最近、そういう子がいました。私の後ろの席のクラスメイトなんですけど、普段は全然喋らない、怪しめな雰囲気の子で。プリントを渡すときも小さい声で「……ありがとう」みたいな感じなんですけど、SNSだと「〇〇じゃねえしwww」っていう。

SUZUKA:怖ーい!

KANON:普段とギャップが大きすぎるから、驚いちゃって。

SUZUKA:どっちが本当のあなた……? って感じ。

―みなさんには、「人に見せられない自分」っていますか?

RIN:私たち、メンバー同士で隠しごとが全然ないんです。

MIZYU:本当にプライベートの、奥の奥の奥の奥の奥までつながってます。

―それは素晴らしいですね。リーダーズの四人が、いろんなことを共有できてるのはどうしてなんですかね。

MIZYU:自分たちでもビックリしてます。

RIN:何かあったら、誰よりも先に言う! みたいな感じになってるんで。

SUZUKA:全てそうだしな。

KANON:メンバー四人ともさっぱりした性格だから上手くいってるのかなって思いますね。

MIZYU:気持ちがひとつになっているからこそ、ライブでも伝えたいことが一緒なんだと思います。日々の共有って大事ですよね。

SUZUKA:本当に大事だと思う。たぶん、お互いを信用しているからそこまでできるんじゃないかな。この人に相談したら、自分を励ます言葉をくれる、いい答えをくれるってわかってるから共有できるんだと思います。ぞれぞれ短所もあるけど、みんなでカバーし合ってます。自分が落ち込んでいたら一生懸命励ましてくれて、その度に「このチームでよかった」って思いますね。

若者も大人も自分の意志を貫いて、不寛容社会から抜け出してほしい。(SUZUKA)

―他に活動をしていて喜びを感じる瞬間はありますか。

SUZUKA:同世代の子たちがライブに来てくれてることはすっごく嬉しいですね。ちゃんと私たちのメッセージが届いているんだなって思います。「私もはみ出したくなった」って言ってくれる人もいたりして、単純なんですけど、その言葉が本当に嬉しい。あとは「今日のライブですごく感動して涙を流して、明日から学校を頑張ろうと思えた」とか、そういうことを言ってもらえるのは喜びですね。

―アーティストとしてシンパシーを感じたり、憧れたりしている方っていますか?

SUZUKA:私たちがカッコいいと思うゾーンに入ってるアーティストのみなさんは頭がイっちゃってる……と言ったら言い方が悪いんですけど、いい意味でイってるんですよ(笑)。

―どこか突き抜けているところがある人たちってことですかね。そのカッコいいゾーンにいる人は誰ですか?

SUZUKA:クリトリック・リスさんですね。

―『夏の魔物』に出演したとき、一緒に写真を撮ってましたよね。

MIZYU:そうそう。四人ともすごくよくしてもらってて、親戚のおじちゃんみたい(笑)。

SUZUKA:ライブを観たときに、ライブの途中で客席へ行って、ステージに戻ってきたら背中に引っかき傷がガーって入ってたんですよ。あとで「引っかき傷がありましたけど、大丈夫ですか?」って訊いたら「え? 傷あった?」って言ってて、「この人カッケー!」と思いましたね。

一同:(笑)。

SUZUKA:クリトリック・リスさんはあの熱量がすっごくいいんですよね。

MIZYU:ギャップもいいよね。ステージ上の熱量と私服に着替えてオフになったときの感じとか。

RIN:やりきってるところがカッコいいですよね。

SUZUKA:伝えようとする熱量がすごいんですよ。やっぱり自分の意志を貫いているのが、見ててわかるのは大きいと思います。

―たしかに。音楽のスタイルは違いますけど、自分の意志を貫くっていうのはみなさんと通じますよね。

SUZUKA:そうですね。やりたいことをやっている人とか、一生懸命な人に響く音楽だと思います。

RIN:自分を活かしてるっていうのも、素敵に見えます。ライブ中に自分で「ハゲー!」叫んでたんですよ。「自分の体を活かしてるな~」って。

SUZUKA:たしかに。

MIZYU:個性を最大限に自分のものにしてるなって思いました。

―みなさんは、「自分の意志を貫いて行動する=はみ出すこと」を大事にしてて。その先輩としてクリトリック・リスがいる、と。

SUZUKA:そうですね!(笑)

―今日は「若者」って言葉を繰り返し使ってましたけど、みなさんのメッセージは大人にも響くし、むしろ大人にこそ大切なことなのかなと思いました。

SUZUKA:私は「青春はエンドレス」って常に言ってるんですけど、若者も大人も一緒だと思うんです。今って学校、会社、SNSとかいろんな場所で不寛容社会なんで。だから若者も大人も自分の意志を貫いて、そこから抜け出してほしいですね!

新しい学校のリーダーズ

リリース情報
新しい学校のリーダーズ
『キミワイナ'17』(CD)

2017年10月25日(水)発売
価格:1,296円(税込)
VICL-37326

1. キミワイナ'17
2. SNS24時

プロフィール
新しい学校のリーダーズ
新しい学校のリーダーズ (あたらしいがっこうのりーだーず)

模範的なヤツばかりが評価される時代、くだらない不寛容社会から、個性と自由ではみ出していく踊るセーラー服と奇行癖。その名も「新しい学校のリーダーズ」。攻めの利いたダンスとサウンド、独特なキャラクターとMCを武器に2015年7月から全国各地でライブ活動する傍ら、コイケヤ、UNIQLO、Google Android、ロッテ「Fit's」等の企業と、はみ出し具合が絶妙なコラボや出演を重ね、じわりと若者に刺さりはじめている。



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