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チェコ映画を岡田利規とペトル・ホリーが語る。テキトーさが魅力

チェコ映画を岡田利規とペトル・ホリーが語る。テキトーさが魅力

『60年代チェコスロヴァキア映画祭 チェコスロヴァキア・ヌーヴェルヴァーグ』
インタビュー・テキスト
島貫泰介
撮影:沼田学 編集:久野剛士、野村由芽

映画には技術やシステムの発展で、失われるものがある。(岡田)

―今回、もう一本のニェメツ作品『愛の殉教者たち』が日本初公開ですね。こちらはいかがでしたか?

岡田:謎でした。2回見たけど全然わからなかった。まあ、2回見たからといってわかるという映画じゃないのは重々承知してたんですけど。

左:岡田利規

ホリー:あれは「わかる」タイプの作品ではないです。

岡田:ただ僕の中で、目撃したり覗かれたりする「視線」の感覚がすごく残っています。3本の物語が入ったオムニバス作品ですが、それぞれに異なる視線のねっとりさがある。不思議ですよね。

ホリー:『愛の殉教者たち』もノーアクターの作品で、のちにニェメツ監督と結婚する歌手のマルタ・クビショヴァーが出演しています。同作の脚本・衣装などを担当しているエステル・クルンバホヴァーは、じつは当時の監督の奥さんで、プライベートでみんながつながっているのも、チェコらしさですね(笑)。

『愛の殉教者たち』の一場面(©State Cinematography Fund)
『愛の殉教者たち』の一場面(©State Cinematography Fund)

岡田:フランスのヌーヴェルヴァーグっぽいですね。主演女優と付き合うゴダールの女性遍歴をなぞっているというか。真似しようとしてできることじゃないけど(笑)。

ホリー:ニェメツ監督は最後まで素晴らしい女性たちに恵まれた人でした。作品に起用する女優も、明らかにそのとき好きな人が多いです。

岡田:当時の映画界らしいなあ。映画って、技術やシステムの発展と共にクオリティーを高めていきますよね。それはよいと思うんですが、一方で、それで失われてしまうものもあると思うんです。

ホリー:わかります。1960年代って「匂う」時代なんですよね。演出も演技も、洗い落とさずに提示される時代だった。もちろん作品として洗練しようとする意識はあったと思いますが、生のものを撮ることが表現において重要だったんです。

右:ペトル・ホリー

岡田:現代の日本の特に東京の人なんかは、これらの映画のテキトーな風通しのよさを受け取ったらいろいろ感じるところが出てくるんじゃないかと思います。息が詰まってる感覚がパカっと開くというか。今日は「テキトー」って言い過ぎてる感じがあるんだけど……。

ホリー:どんどん言ってください(笑)。

岡田:社会の精度が上がっていくときに、どのような種類の感性が欠けていくか失われていくかということに気をつけたほうがいいと思うんです。それはある種の「テキトーさ」で維持されるものなんですよね。僕にとってチェコスロヴァキア・ヌーヴェルヴァーグはそれを味わう機会になりましたね。今回、集中的に作品を見る機会を得られて、とてもよかったです。

『愛の殉教者たち』の一場面『ひなぎく』の主人公マリエ達が友情出演(©State Cinematography Fund)
『愛の殉教者たち』の一場面『ひなぎく』の主人公マリエ達が友情出演(©State Cinematography Fund)

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イベント情報

『60年代チェコスロヴァキア映画祭 チェコスロヴァキア・ヌーヴェルヴァーグ』
『60年代チェコスロヴァキア映画祭 チェコスロヴァキア・ヌーヴェルヴァーグ』

2017年11月11日(土)~12月1日(金)
会場:東京都 渋谷 シアター・イメージフォーラム
Aプロ『パーティーと招待客』(監督:ヤン・ニェメツ)
Bプロ『ひなぎく』(監督:ヴェラ・ヒティロヴァー)
Cプロ『愛の殉教者たち』(監督:ヤン・ニェメツ)
Dプロ『狂気のクロニクル』(監督:カレル・ゼマン)
Eプロ『大通りの商店』(監督:ヤーン・カダール、エルマル・クロス)
Fプロ『受難のジョーク(冗談)』(監督:ヤロミル・イレシュ)
Gプロ『火葬人』(監督:ユライ・ヘルツ)
Hプロ『つながれたヒバリ』(監督:イジー・メンツェル)
Iプロ『闇のバイブル/聖少女の詩』(監督:ヤロミル・イレシュ)

※下記会場では、A~Cプロのみ上映
2017年12月2日(土)~12月8日(金)会場:名古屋シネマテーク
2018年1月13日(土)~1月26日(金)会場:京都みなみ会館
2018年3月10日(土)~3月23日(金)会場:神戸アートビレッジセンター
大阪シネ・ヌーヴォ

『生誕100年 ブルデチュカ映画祭』
『生誕100年 ブルデチュカ映画祭』

2017年12月2日(土)~12月15日(金)
会場:東京都 阿佐ケ谷 ユジク阿佐ケ谷
上映作品:
『レモネード・ジョー 或いは、ホース・オペラ』(監督:オルドジヒ・リプスキー)
『皇帝の鶯』(監督:イジー・トルンカ)
『ほら男爵の冒険』(監督:カレル・ゼマン)

書籍情報

『チェコスロヴァキア・ヌーヴェルヴァーグ』
『チェコスロヴァキア・ヌーヴェルヴァーグ』

2017年10月27日(金)発売
価格:1,944円(税込)
発行:国書刊行会

イベント情報

『三月の5日間』リクリエーション
チェルフィッチュ
『三月の5日間』リクリエーション

2017年12月01日(金)~12月20日(水)
会場:神奈川 KAAT 神奈川芸術劇場 大スタジオ
作・演出:岡田利規
出演:
朝倉千恵子
石倉来輝
板橋優里
渋谷采郁
中間アヤカ
米川幸リオン
渡邊まな実
舞台美術:トラフ建築設計事務所

プロフィール

岡田利規(おかだ としき)

1973年横浜生まれ、熊本在住。演劇作家、小説家、チェルフィッチュ主宰。活動は従来の演劇の概念を覆すとみなされ国内外で注目される。2005年『三月の5日間』で第49回岸田國士戯曲賞を受賞。同年7月『クーラー』で「TOYOTA CHOREOGRAPHY AWARD 2005ー次代を担う振付家の発掘ー」最終選考会に出場。07年デビュー小説集『わたしたちに許された特別な時間の終わり』を新潮社より発表し、翌年第2回大江健三郎賞受賞。2012年より、岸田國士戯曲賞の審査員を務める。初の演劇論集『遡行 変形していくための演劇論』と戯曲集『現在地』を河出書房新社より刊行。2015年、初の子供向け作品KAATキッズプログラム『わかったさんのクッキー』の台本・演出を担当。2016年よりドイツ有数の公立劇場ミュンヘン・カンマーシュピーレのレパートリー作品の演出を3シーズンにわたって務める。

ペトル・ホリー

1972年、プラハ南西に位置するドブジーシュ市生まれ。プラハ・カレル大学哲学部の日本学科に入学。17歳の時に日本から送ってもらったビデオで三代目市川猿之助の『義経千本桜』に触れ、歌舞伎の魅力に開眼した。数度の日本留学を経て、早稲田大学大学院にて歌舞伎を研究、博士課程を修了。大学院在学中からシュヴァンクマイエルの映画字幕作成やカレル・チャペックの翻訳監修など、チェコ文化紹介も積極的に行ってきた。早稲田大学第一文学部助手を経て2006年からチェコセンター東京所長を7年間務める。現在は埼玉大学教養学部兼任講師として歌舞伎を講じながら、「チェコ蔵」主宰者として、日本におけるチェコ文化発信に尽力している。

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