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菊地成孔×湯山玲子対談 「文化系パリピ」のススメ

菊地成孔×湯山玲子対談 「文化系パリピ」のススメ

『晩餐会 裸体の森へ 第二回』
インタビュー・テキスト
黒田隆憲
撮影:三木匡宏 編集:久野剛士 撮影協力:resonance

ペペの音楽を聴くと、「これは恋だ!」と思う。(湯山)

―「夜会服でご参加を」としている点も、「大人の遊び場」というイメージがあります。が、ちょっと躊躇してしまう人もいるかもしれません。

菊地:「大人の遊び場」といっても、排他的な高等遊民の遊びにする気はもちろんなくて。何か一点でもルールを決めてオシャレして来るのは、その場を一緒に作り上げている感じもあって楽しいじゃないですか。

それに、カジュアルではなくフォーマルであることは、僕は地球環境にもいいと思っているんですよ。何故なら、人間は品位を失ってしまうとどこまでもエゲツなく不潔になってしまう生き物だから。

湯山:それは本当にその通り。

『晩餐会 裸体の森へ 第二回』前菜の「タスマニアサーモンのミキュイ オレンジの香り」
『晩餐会 裸体の森へ 第二回』前菜の「タスマニアサーモンのミキュイ オレンジの香り」

菊地:たとえば、引きこもって家が片づけられなくなり、ゴミ屋敷になるという悪循環が始まるのは、品位を失っているんですよ。そういう人が増えれば街も自ずと汚くなっていく。そういう意味で、フォーマルであることは、地球環境に最も必要なことだと思っていて。

湯山:フォーマルであること、すなわち品位を保つことは、実は「心の体力」が要るのよ。なぜなら、この装いは絶対に「他人に自分がどう見えるか」というコミュニケーションやサービス精神が必要だから。ここがコスプレと違う。コスプレは「自分が楽しければそれでいいじゃん」という子どもの欲求。フォーマルはそことは違うんですよ。

湯山玲子

菊地:そう。それにカジュアルウェアばかり着ていると、単純に姿勢が悪くなりますよね。フォーマルでいると姿勢も良くなるし、健康にもいいんです。

―湯山さんは、ペペ・トルメント・アスカラールの演奏についてはどのような印象をお持ちですか?

湯山:ペペのライブを観ると、いつもエロスを感じるんですよ。最近、「セックスがオワコン」と言われて形骸化していく中で、恋愛は消滅の一途をたどっていますよね。もう私なんて恋愛戦線からは完全に離脱しているんだけど、ペペの音楽を聴いていると、「ああ、ここにあるのは恋だ!」って私でも思うわけ。少子化が問題とされているならカップルはみんなペペを観に行って、欲情すればいいんですよ(笑)。

はっきり言って、菊地さんという音楽家の集大成はペペにあるんじゃないかと思ってる。もちろん他のプロジェクトもいいけど、ペペは別格で世界でもこの境地をこのスタイルでやっている音楽家はいないのじゃないか、と。かつてはセルジュ・ゲンスブールのような人もいたけど、現存するミュージシャンで音楽を使って、「恋愛や性愛についての快楽の手触り」をここまで描いたのは、ペペしかいないんじゃないかしら。

菊地:ありがとうございます。もちろんペペの音楽には知的興奮を焚きつけるような教養的な要素は嫌が応にも入り込んでいるけれど、「ペペを聴いたら恋をしたくなった」とか、「美味しいご飯が食べたくなった」とか、「セックスしたくなった」とか思ってもらえたら何よりです。

『晩餐会 裸体の森へ 第二回』メインの「キジ肉のバロティーヌ 牛蒡のコンフィとヴルーテと共に」
『晩餐会 裸体の森へ 第二回』メインの「キジ肉のバロティーヌ 牛蒡のコンフィとヴルーテと共に」

恋愛用、セックス用のBGMがチャラいと思っていない。(菊地)

―先ほど『浪費図鑑―悪友たちのないしょ話―』や「食べログ」の話を聞いていて思ったのですが、ストイックに対象を追求する行為に、エロティックな要素を個人的にはあまり感じなくて。

菊地:そう、信仰になっちゃうとね。

―エロティックであることって、おっしゃっていたフードコート的な、ジャンルを越境していくスタンスが必要なのかなと思ったんです。ジャズやポップス、ヒップホップそしてクラシックまで取り込んだペペの、雑多な猥雑さが、湯山さんの恋愛感を焚きつけるのではないでしょうか。

菊地:そうですね。いま言ったように、音楽オリエンテッドな人がペペの音楽を、アカデミックに楽しんでくれても僕は一向に構わないし、それをやめさせるつもりもない。だけど僕は、恋愛用、セックス用のBGMがチャラいとも思っていないわけです。むしろ最高級の音楽がセックスやラウンジのBGMとして鳴っていて、みんながそれを斜め聴きしている。それこそがジャズの歴史だと思うんですよ。

そして、『裸体の森へ』はそんなジャズの歴史を体現したイベントなんです。リズムのこと、和声のことなど分からなくても全然構わなくて、とにかくいい気分になって、飯が美味くて恋愛したくなってくれたら最高。恋愛や性愛を焚きつけるためのBGMになれたら本望だなと思うわけです。

昨年の『晩餐会 裸体の森へ』の様子
昨年の『晩餐会 裸体の森へ』の様子

―それって最高に贅沢な遊びですよね。

菊地:そう。食事も飯も、デートの媚薬でしかない。ただ、「媚薬なら媚薬でいいだろう」って、手っ取り早くコストパフォーマンスだけ考えちゃうと、芯がなくなっちゃうんですよね。

ともあれ、すでに遊び慣れている人たちだけでなく、若い人たちにも是非このイベントを経験してほしいですね。クリスマスはクリスマスでやることがあるだろうから、日程は12月初旬に設定しておりますので、可処分所得はこのイベントとクリスマス、両方に満遍なくお使いください(笑)。

左から:湯山玲子、菊地成孔

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イベント情報

『晩餐会 裸体の森へ 第二回』
『晩餐会 裸体の森へ 第二回』

2017年12月1日(金)、12月2日(土)
会場:神奈川県 モーション・ブルー・ヨコハマ
料金:18,000円(ムニュ、食前酒、乾杯酒付き)

プロフィール

菊地成孔(きくち なるよし)

1963年生まれの音楽家 / 文筆家 / 大学講師。音楽家としてはソングライティング / アレンジ / バンドリーダー / プロデュースをこなすサキソフォン奏者 / シンガー / キーボーディスト / ラッパーであり、文筆家としてはエッセイストであり、音楽批評、映画批評、モード批評、格闘技批評を執筆。ラジオパースナリティやDJ、テレビ番組等々の出演も多数。2013年、個人事務所株式会社ビュロー菊地を設立。

湯山玲子(ゆやま れいこ)

1960年生まれ、東京都出身。著述家、ブロデューサー。文化全般を独特の筆致で横断するテキストにファンが多く、全世代の女性誌やネットマガジンにコラムを連載、寄稿し、最近ではテレビのコメンテーターとしても活躍。著作は『四十路越え!』『ビッチの触り方』『快楽上等 3.11以降を生きる』(上野千鶴子との対談本)『文化系女子の生き方 ポスト恋愛時宣言』『男をこじらせる前に』等々。クラシック音楽の新しい聴き方を提案する『爆クラ!』と『美人寿司』主宰。

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