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最果タヒ×山戸結希 この時代の一番の共犯者たち「言葉」を語る

最果タヒ×山戸結希 この時代の一番の共犯者たち「言葉」を語る

『LUMINE CHRISTMAS~ルミネ×最果タヒの詩の世界~』
インタビュー・テキスト
羽佐田瑶子
撮影:永峰拓也、編集:野村由芽

自分の「言葉」が定番になるまで撮り続けなければいけないと思います。(山戸)

―山戸さんの作品にも言葉の強さを感じますが、映像と言葉の関係をどのようにとらえられていますか?

山戸:たまたま、自分の中に溢れてくる情景を伝える手法が映画だったのだと思います。そして、その「映像」を撮るようになってから、その劇中の台詞に対して、印象的、個性的、と「言葉」に反応をいただくことになりました。どちらが先ということはなかったので、いつも両輪で、映像と言葉が追い越し合っていってるイメージがあります。

山戸結希

最果:山戸さんの作品を観終わったあとって、一連のストーリーではなくて、一瞬一瞬のシーンが頭に残るんですよね。それは普段、生活をしているときの思考と同じなのかなと思います。思い出というのは、「あのときあの人がいて、あんな出来事があった」と起承転結で覚えているのではなく、あの子が言った表情や言葉、シーンが残りますよね。

山戸:きっと、死ぬ前に見る走馬灯も、シーンの連なりなんですよね。私たちが生を終えて、これまでの人生がフラッシュバックする瞬間に溢れ出すのは、社会的に説明される単一的な因果の文脈ではなく、きっと鮮烈に記憶され、心の奥深くにどうしようもなく刻まれた、シーンの連なりなのかもしれません。

ポップカルチャーとしての映画を完成させ、全国的な規模での興行を終えてなお、「こんな言葉を話す女の子は普通じゃない」と伝わってしまうこともあって、ああ、まだまだなのだと。いつの時代も、新しい流行歌などから、新しい常識が作られていった。新しい衝撃から、新しい「普通」が生まれて来たはずです。私たちが携わっている行為は、そういう連綿とした営為ですよね。私は、自分の映画が異質だとは思いません。真っ当だと思う。他のドラマを見て、他のドラマと同じような言葉を話すのなら、どうして映画を撮るのか? どうして、自分の目で見た景色を撮らないのか。なぜ、すでに社会化された言葉で物語るのか? そちらの方が、物語が生まれて来た意味に反している。

物語を作り出す側であるのならば、初めての言葉で話すことは使命だと思う。社会からの影響ではなくて、社会への挑戦を考えた方が理にかなっている。だから未来、私の感覚を普通だと思う女の子は、たくさん現れるはずなんです。「変わった言葉だね」と言われても、いつか大衆的なものになる日がくる。この苦しみは、現実を真実に変えることでしか昇華されないので、自分の「言葉」が定番になるまで撮り続けなければいけないと思います。私の言葉が、いつか詩的だとは呼ばれなくなる日まで。詩とは、太陽が沈んだ後の世界を映し出す、社会化されていない言葉の連なりなのだとしたら、映画自体が、詩であるように。最果さんの詩を映像や音像にできることは、これ以上ない歓びでした。

―お互いの共感度の強さを感じるのですが、示し合わせたわけではないのに、同時代に生きているのは不思議なことですよね。

最果:そうですね。詩を書き始めた10代の頃は、ひとりでジタバタ狭い川で泳いでいるつもりだったのに、ある日水面から顔を出したら世界が違った、って感じがします。川は、いつのまにか複数の川と合流して、随分と広くなっていて、そこでたった一人で泳いでいたはずなのに、気づいたら山戸さんのように同じ感覚で表現されている人が何人もいて。それまで同時代という言葉を聞いてもぴんとこなかったのですが、そのとき「時代」というものに触れた気がしました。

山戸:待ち合わせて、同時代を生きているはずもないのに、不思議ですね。これまで、たった一人の異端児が流行らせた、ポップソングや大衆芸術がありました。それらが、社会を変えたことは幾度も、数え切れぬほどあって、そのくらいのインパクトを最果さんにも感じます。命を燃やして書かれた言葉に、同時代で出会えたことを重く感じています。

自分の詩を読んで、読者の方が「これは私のことだ」と思ってくれることが理想と思っている。(最果)

―今回、ルミネのクリスマスキャンペーンを手がけられましたが、最果さんはそれぞれの詩にどのような思いを込められたのでしょうか?

最果:受験生のとき、インフルエンザ防止のためにマスクをしてキラキラしたクリスマスの街中を歩いていたら、すごく惨めな気持ちになって。「クリスマスなんて」と、嫌いになりかけたんですよね。でも、それが反射的に気持ち悪くも思えて……。

思い返すと、小さな頃クリスマスがすごく好きだったんです。お小遣いをにぎりしめて、本物のもみの木を買いに行ったり、お部屋にリースを飾ってもらったり。いつもよりも街並みや家の中が綺麗で、おとぎ話を部屋の中に入れ込むような非日常感が好きでした。

『LUMINE CHRISTMAS~ルミネ×最果タヒの詩の世界~』
『LUMINE CHRISTMAS~ルミネ×最果タヒの詩の世界~』

『LUMINE CHRISTMAS~ルミネ×最果タヒの詩の世界~』
『LUMINE CHRISTMAS~ルミネ×最果タヒの詩の世界~』

山戸:最果さんから詩をいただいたとき、おとぎ話と日常が地続きにあるような、美しい静けさを感じましたね。

最果:その感覚が昔から大好きだったのに、その場のさみしさだけを理由に、簡単に嫌いだとか思ってしまって……そのことが当時はとてもショックでした。あの頃から私にとって、クリスマスは子どもの頃の感覚を信じるための季節になりました。クリスマスへの単純な憧れをずっと守ってきたので、このお話とテーマをいただけたときは、とても嬉しかったです!

山戸:私もお声がけいただけ、嬉しかったです。最果さんの詩を他媒体に表出させるときには、その表現自体が詩でなければならないと考えています。映画であれば、劇映画的な物語ではなく、映像詩であるように。今回は朗読という音像詩を意識し、書き下ろされた詩の特別に光っている部分を立体化して、音源化して。共鳴できる方の作品を演出させていただける限りは、最果さんの一番の共感者、共犯者でありたいと思って作りました。

最果:できあがった作品、とても素敵でした。書いているときに想像していた声とギャップが本当になくて、書いていたそのときのことが思い出されました。それでいて肉声になったときの、力強い存在感があって、詩が眼前に立ち上がってくるような、そんな印象を受けました。

山戸:感じていただけ、幸福です。今までほぼお話できる機会もなかったのですが、わからない感情や言葉が、詩の中にひとつもありませんでした。なんというのでしょう、特に……まず、最果さんの詩は、ライブ感が強いんですよね。今生まれている言葉。そして、バーっと勢い良く書かれた動的な部分に対して、何度も推敲された静的な部分がある。それが作るときに、一番苦しい営みだと思います。その命を削るように生まれた二重性が、詩を生かしている。どれも一人称が孤独にさまよっているような感覚が、美しいんですね。闘いの記録だから。

『LUMINE CHRISTMAS~ルミネ×最果タヒの詩の世界~』

―朗読しているのは成田凌さんの声ですけど、自分の声のようにも聞こえたんですよね。なので、音として聞くことで、詩を目で追っているときには気が付かなかったことを思い起こす、不思議さがありました。

山戸:演じる成田さんにも、自分の過去や未来を行ったり来たりしながら、丁寧に自分の声と向き合って演じてもらいました。実際に演出する時間はごく短いものでしたが、そうだとしても、その瞬間には、書いている最果さんと、同じ切実さで苦しまないといけない。感動しながら読まないと、きっと聴いても感動できないから。まさに劇場的な言葉もあれば、読みながら新しい感覚を得る言葉もありました。詩の中に言葉が置かれているときとはイメージが変わって、成田さんにしか言えない一行が、あの時間の中に、確かに存在していたと思います。ぜひ肉声詩も楽しみにしてもらえたら。

最果:聞いている人が「私にもこういう思いがあった」と、自分の中にも声を見つけていく感覚になる、そんな朗読作品だと思います。私自身も、自分の詩を読んで、読者の方が「これは私のことだ」と思ってくれることが理想と思っているので、そうした言葉の溶け込み方が山戸さんと成田さんによって実現していて嬉しかったです。それこそ、私の中の深くにあった静かな感情が、揺さぶられるような。

その詩や朗読がファッションビルにある、という状況は本当に夢のようだと思います。詩は、本で読むのももちろんいいのですが、街の中で不意打ちに出会うことができれば、もっと日常の呼吸の中に溶け込むようにして読むことができるんじゃないかな、と考えています。私の詩はその人の生活そのものに、重ねて読んでほしいな、と思うので、ビルや街並みの中にあるのはまさに理想的です。

山戸:詩と人々が衝撃的に出会うためだけに成田さんの声があって、その出会いによって、すれ違ってゆく女の子の心に、何かを灯せたら嬉しいですね。

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キャンペーン情報

『LUMINE CHRISTMAS~ルミネ×最果タヒの詩の世界~』では、最果タヒさんに5編の詩を書き下ろしていただきました。期間中、この5編の詩を、各方面で活躍のクリエイターが独自の手法で表現し、イメージビジュアルから館内装飾や、ウェブサイトにいたるまで、ルミネ全体を詩の世界で包みこみます。さらに、23日24日はルミネゼロにて2日間限定の『LUMINE LYRICAL CHRISTMAS~五感で読む、ルミネ×最果タヒの詩の世界~』を開催。

イベント情報

『LUMINE LYRICAL CHRISTMAS~五感で読む、ルミネ×最果タヒの詩の世界~』

2017年12月23日(土)、12月24日(日)12:00~18:00
会場:東京都 新宿 LUMINE 0(NEWoMan新宿 5F)

ルミネクリスマスの世界を体感できるスペースとして、最果タヒさんの詩を、五感で楽しむことができる、2日間だけの幻想的な空間がルミネゼロに登場します! この会場限定で聴くことの出来る、成田凌さんによる詩の朗読の試聴体験のほか、視覚、触覚、味覚、嗅覚のインスタレーションをお楽しみいただけます。さらに、ルミネのアプリ「ONE LUMINE」会員さまには、抽選で各日200組400名さまをスペシャルライブにご招待いたします! ここでしか見ることの出来ない、ここでしか体験することのできない2日間を展開します。

『SPECIAL LIVE』
会場:東京都 新宿 LUMINE 0(NEWoMan新宿 5F)

2017年12月23日(土)14:00~15:00
出演:青葉市子

2017年12月24日(日)14:00~15:00
出演:NUUAMM

応募方法:
1.ルミネのアプリ「ONE LUMINE」をダウンロード
2.「ONE LIMINE」のマイページ内にあるイベント応募バナーをタップして応募画面へ

プロフィール

最果タヒ(さいはて たひ)

詩人。中原中也賞・現代詩花椿賞。最新詩集『愛の縫い目はここ』がリトルモアより発売中。その他、詩集に『死んでしまう系のぼくらに』『空が分裂する』『グッドモーニング』などがあり、2017年5月に詩集『夜空はいつでも最高密度の青色だ』が映画化された。また、小説に『十代に共感する奴はみんな嘘つき』、エッセイ集に『きみの言い訳は最高の芸術』『もぐ∞』、対談集に『ことばの恐竜』などがある。11月22日に、清川あさみとの共著『千年後の百人一首』が発売予定。

山戸結希(やまと ゆうき)

2014年、『5つ数えれば君の夢』が渋谷シネマライズの監督最年少記録で公開され、『おとぎ話みたい』がテアトル新宿のレイトショー観客動員を13年ぶりに更新。2015年、第24回日本映画プロフェッショナル大賞新人監督賞受賞。2016年、乃木坂46、Little Glee Monster、RADWIMPSのMVを監督し、小松菜奈・菅田将暉W主演『溺れるナイフ』が全国ロードショーされ異例のヒットを記録。2017年、ブルボン「アルフォートミニチョコレート」や、カネボウ化粧品「suisai」の広告映像も手がけている。

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