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ネット時代に個性はどう表れる?tofubeats、tomadらの鼎談

ネット時代に個性はどう表れる?tofubeats、tomadらの鼎談

『MeCA | Media Culture in Asia: A Transnational Platform』
インタビュー・テキスト
麦倉正樹
撮影:馬込将充 編集:久野剛士

いろんな国の音楽を聴いて、その国を知りましょうという文化交流ではなく、個人の表現を大事にしたいんです。(廣田)

—ある意味、tomadさんがマルチネでやっているようなことを、各国でやっているアーティストを集めてきたということでしょうか?

tomad:そうですね。実際に行ってみて、エレクトロニックな音楽シーンが芽生え始めている状況がわかったので。ただ、彼らはお互いのことを知らないんですよね。音源は聴いたことがあるかもしれないけど、会ったことはない。だけど同じアジア圏で活動しているという点で、お互い共有できる情報はかなりあると思うので、彼らの出会いの場所を作りたかったんです。

お互い初対面で、彼らがどう感じるのか、個人的にはすごく楽しみで。だから、この面子でそのままこれを一気に広げていこうっていうつもりも、実はあんまりないんです。今回の出演アーティストの中で雰囲気の合う人がいたら、勝手にコラボレーションが起きたらいいなっていうイメージなんですよね。

左から廣田ふみ、tofubeats、tomad

—なるほど。それが廣田さんの意図する、新時代の国際交流の在り方にも繋がってくるわけですね。

廣田:そうですね。今回「インターナショナル」ではなく、敢えて「トランスナショナル」という言い方を、『MeCA』全体のタイトルとしても掲げています。それは、これまでのような「いろんな国の音楽を聴いて、その国の文化を知りましょう」という文化交流のやり方ではなく、もうちょっと個人の表現を大事にしたいんです。もちろん、今回が初めての試みなので、未知数なところも多いんですけど。

tofubeats:少なくとも、これまでにはなかったやり方であるのは間違いないですからね。それだけでも価値がありそうな気がしますよ。

廣田:そもそも『MeCA』は、音楽プログラムの他にも、展覧会やシンポジウム、小学生から高校生向けのワークショップとかも同時に開催するのですが、それらに一貫しているテーマは、「情報化社会において、どういう創造性があるのか」っていうことなんです。

そういうものって、これまでなかなか東京で見られる機会がなかったと思うんです。他の国際都市だと、そういうものを牽引するセンターとか文化行政的なフレームがあったりするのですが、東京、ひいては日本には、そういうものが少なかった。だから、このイベントを通して、それが少しでも実行できたらいいなと思っていて。

廣田ふみ
廣田ふみ

坂本龍一も出展する『MeCA』展覧会の出展者、平川紀道のイメージ
坂本龍一も出展する『MeCA』展覧会の出展者、平川紀道のイメージ

—日本はまだまだアートの見せ方に関して課題が多そうですもんね。

廣田:そうですね。特に東京の場合、高度に制度化されていて、お客さんもそれぞれのクラスターに分かれしまっているんですよね。なので、アーティストが新しいことをやろうとしても、なかなかやりづらいところがあるんです。

ただ、アジアに目を向けると、かなり元気のいい若い世代のアーティストたちがたくさんいて、どんどん新しいことをやろうとしているわけです。コミュニティや制度自体を自ら立ち上げている。それを見ることは、日本の人たちにとっても、モチベーションになるんじゃないかとは思っていて。この数年間、東南アジアでも展覧会や音楽イベントをやってきていて、そういう繋がり自体を、東京でちゃんとプラットフォームにしていくのが、今回の『MeCA』の趣旨でもあるんです。

だから「音楽プログラム」でも、アジアのいろんな国の人を呼ぶことよりも、tomadさんが作ったフレームの中で、それぞれのアーティストがどう動くかが大事で。行政が主導するのではなく、フラットに新しいことができる座組になっていると思います。

MeCAのポスター
MeCAのポスター(イベント詳細を見る

—いわゆる「各国代表」みたいな考え方ではないと。

廣田:そうですね。アーティストや作品が国やその文化を象徴するかのような交流は、ここではあんまりテーマにしていないです。もちろん、いろいろな国からアーティストがやってくるわけですが、あくまでも個人同士で交流してくれたら、それでいいというか。

tofubeats:まあ、みんな明らかにその国を代表した音楽性ではないですからね(笑)。僕も、別に日本を代表する音楽をやっているわけではないですし。

イベントに出演するインドネシアのデュオ、KimoKalのMV

イベントに出演するロサンゼルスを拠点に活動する中国・日系アメリカ人、MEISHI SMILEのMV

アーティストたちは、自分のアイデンティティーを、自分が住んでいる地域に求める動きをしているように感じています。(tomad)

—本プログラムの口上に、「ネットによって音楽が多様化した一方、近年では画一化が進んでいる」といったことが書かれていましが、これはどういう意味なのでしょう?

tomad:インターネットによって、いろんなアーティストが出やすくなった分、みんな似たり寄ったりになっちゃっているところがあると思います。チャート上位の音を、みんなが真似するようになっているんですよね。SoundCloudも、最初期は面白かったけど、いまは似たような音が多くなって、あんまり面白くないなっていう印象が個人的にはあります。

ただ、そういう動きの一方で、それぞれのアーティストたちが、自分のアイデンティティーを、自分が住んでいる地域に求めるような動きをしているように、ここ数年感じるようになってきていて。今回のイベントのタイトルを「BORDERING PRACTICE」としたのも、それとちょっと関係あるんです。

—これはどういうニュアンスが込められているのでしょう?

tomad:イベントタイトルを考えてた時期に、たまたま『現代思想』(青土社)の地政学の特集号(2017年9月号「いまなぜ地政学か」)を読んでいたら、そこに「境界実践」っていう言葉が出てきて。僕の汲み取り方だと、国境を引くことによって、それぞれが「自分がいる場所」の意味を改めて考えるきっかけになって、そこから地に足の着いた交流が生まれるみたいな感じなのかな。で、それがちょうどしっくり来たので、今回のタイトルにさせてもらいました。

tofubeats:そんな意味があったんですね(笑)。すごく腑に落ちました。境界線を引くことで、自意識が生まれてくるみたいな話ですよね。これはちょっと関係あるかわからないんですけど、最近AIの本を読んでいて。人工知能が生まれたことによって、初めてどこからどこまでが人間性なんだっていうことを、みんなが考えるようになったと書いてあったんです。その話とちょっと似ているのかなって思いました。

いろんな国のアーティストと一緒にやることで、自分の中にある日本人としての自意識を考えたり、その境界はどこになるんだろうと、tomadさんとしては改めて考えてほしかったりするんだろうなと。

左からtomad、tofubeats、廣田ふみ

—いま、改めて境界線を見直してみようということですね。

tofubeats:それこそ、画一性の話で言ったら、いまは曲作りに使ってる機材も、みんな一緒なわけですよ。そうなったときに、何が自分の個性を決定するのかって、もう自分が生まれたところぐらいしかないんですよね。

僕が10年ぐらい前に、自分が生まれ育ったニュータウンをテーマに音楽を作っていたのは、実はそういう理由もあったりして。それがいまはもう拡大して、世界というか、アジアを舞台に考えていこうっていうフェーズに音楽シーンがなってきたのかなと、いまの話を聞いて感じました。

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イベント情報

MeCAのポスター
『MeCA | Media Culture in Asia: A Transnational Platform』

2018年2月9日(金)~18日(日)
会場:東京都 表参道ヒルズ スペース オー、ラフォーレミュージアム原宿、Red Bull Studios Tokyo、WWW、WWW X

『MeCA | Media Culture in Asia: A Transnational Platform』音楽プログラム
『BORDERING PRACTICE at WWW X/Alternative SOUND + VISION at WWW』

2018年2月9日(金)
会場:東京都 渋谷 WWW、WWW X
『Alternative SOUND + VISION at WWW』出演:
Morton Subotnick
Lillevan
Alec Empire
Jacques
Young Juvenile Youth
Jean-Baptiste Cognet and Guillaume Marmin
X0809
『BORDERING PRACTICE at WWW X』出演:
tofubeats
KIMOKAL
Meishi Smile
Ryan Hemsworth
Meuko! Meuko!
PARKGOLF
similarobjects(The BuwanBuwan Collective)

プロフィール

tofubeats(とーふびーつ)

1990年生まれ、神戸在住。在学中からインターネット上で活動を行い、2013年にスマッシュヒットした“水星 feat.オノマトペ大臣”を収録したアルバム『lost decade』を自主制作で発売。同年『Don't Stop The Music』でメジャーデビュー。森高千里、藤井隆、DreamAmi等をゲストに迎えて楽曲を制作し、以降、アルバム『First Album』(14年)、『POSITIVE』(15年)をリリース。2017年には新曲“SHOPPINGMALL”“BABY”を連続配信し、アルバム『FANTASY CLUB』をリリース。SMAP、平井堅、Crystal Kayのリミックスやゆずのサウンドプロデュースのほか、BGM制作、CM音楽等のクライアントワークや数誌でのコラム連載等、活動は多岐にわたる。

tomad(とまど)

2005年、当時15歳でインターネットレーベル「Maltine Records」を開始して以降、これまでに150タイトルをリリース。ダンス・ポップ・ミュージックの新しいシーンと東京の同時代のイメージを象徴する存在として国内外のメディアで紹介され、注目される。2015年にはレーベル設立10周年を記念し、活動をまとめた『Maltine Book』(スイッチパブリッシング)を刊行した。また近年はロンドンやニューヨークでのイベント開催、海外アーティストの楽曲リリース、アパレルやアイドルとのコラボレーションも手がけている。

廣田ふみ(ひろた ふみ)

情報科学芸術大学院大学[IAMAS]修了。IAMASメディア文化センター研究員を経て、2008年より山口情報芸術センター[YCAM]にてメディアアートをはじめとする作品のプロダクション・企画制作等に携わる。2012年より文化庁文化部芸術文化課の研究補佐員としてメディア芸術の振興施策に従事。文化庁メディア芸術祭の海外・地方展開を含む事業を担当。同時期にメディアアート作品の修復・保存に関するプロジェクトを立ち上げる。2015年より現職。現在は日本と東南アジアの文化交流事業の一環としてメディアカルチャーをテーマにしたプロジェクトに取り組む。二松学舎大学都市文化デザイン学科非常勤講師。

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