りゅうちぇるからRYUCHELLへ 弱さを強さに変えた沈黙の1年を語る

初めて対面したRYUCHELLは、いつも笑顔でどこかナヨッとした、テレビ越しに見る「りゅうちぇる」像とは異なり、歌に対する想いを実直に語る熱い青年だった。

モデル / タレントとして活躍するりゅうちぇるがアーティストデビューし、RYUCHELL名義としてのはじめての曲、“Hands up!! If you're Awesome”を発表。RYUCHELLがこだわり貫いた1980~90年代的な世界観を基調に、「自分の色を取り戻そう」と訴える、ポップでカラフルなメッセージソングだ。

本作が単なる「タレントの歌手デビュー」でないことは、強調しておくべきだろう。彼自身の「自分を表現したい、伝えたい」という想いが全ての原動力であると、インタビューを読んでもらえればすぐに伝わるはず。葛藤や不安と戦った1年の準備期間を経て、念願の歌手デビューを果たした現在の心境を訊いた。

去年は歌の準備にかけた1年、「これでホントに大丈夫かな?」って思うこともあったんです。

—2月14日にRYUCHELL名義のアーティスト活動が発表されて、デビュー曲“Hands up!! If you're Awesome”の配信がスタートし、ミュージックビデオ(以下、MV)も公開されました。反響をどのように感じていますか?

RYUCHELL:デビューまでに1年間準備をしてきた中で、先が見えなくなる瞬間が多々あって、ホントにデビューできるのか、自分のイメージがちゃんと出せるか、すごく不安だったんです。なので、今回まずはデビューを報告させていただけたこと自体が嬉しかったし、ホントにかわいいMVができて、それをみんなに見てもらえたこともすごく嬉しかった。

RYUCHELL
RYUCHELL

—アーティストデビューに向けた期待の一方で、不安もかなり大きかったんですね。

RYUCHELL:去年はバラエティとかのお仕事よりも、歌の準備にかけた1年だったので、これでホントに大丈夫かなって思うこともありました。でもバラエティのお仕事を今まで通りやっていても、歌がやりたくてウズウズしちゃう感じになってたと思う。どうしても歌がやりたい、とにかくやるしかないっていう想いがあったので、ダンスもボイトレも頑張れたというか。

—バラエティ番組への出演が減って、世間からは「沈黙の1年」という見方もありましたが、歌への想いを貫いた1年だったわけですね。

RYUCHELL:そうですね。ただ、自分の中のイメージはできあがっていたんですけど、周りに向かってそれを伝えるのが難しくって、すごくパワーが必要でした。でも、最後には自分のこだわりをちゃんと伝えられたと思います。

RYUCHELL

—そこまでの歌に対する強い気持ちはどこから生まれたのでしょうか?

RYUCHELL:バラエティ番組に加えて討論番組にも出させていただくようになってから、みなさんからの反響がすごくて。「学校で自分の個性を出せずに悩んでたけど、出せるようになりました」とか、「りゅうちぇるの自分を大切にする言葉で救われた」って。純粋に自分のメッセージを伝えることで、こんなに反応があるんだってびっくりしたんです。

自分もいじめられたり、からかわれたりして、個性を隠してた時期があったんですけど、テレビに出てみんなに受け入れてもらえるようになってから、その過去を忘れちゃってたんですね。昔の自分と同じように悩んでる人が大勢いるって考えると、もっと自分がやるべきことがあるなって思ったんです。

—そのメッセージを伝えるための手段が「歌」だったんですね。

RYUCHELL:学生時代に『glee』っていうミュージカルドラマをよく見ていて、その歌を聴いてパワーをもらっていたんです。個性を大切にして、「みんながスーパースター」みたいな歌が海外はすごく多くいから、それに勇気をもらっていました。

なおかつ歌自体に、歌詞だけだと伝わらないようなパワーをものすごく感じて元気をもらえていたんですね。もっとメッセージを伝えていきたいと思ったときに、そのことを思い出して、パッと頭に浮かんだのが「歌」だったんです。

やっぱり、人の真似じゃなくて、自分のスタイルを見つけたもん勝ちかなって。

—アーティストデビューとなると、目標は誰ですか? とよく聞かれると思いますけど、RYUCHELLさんの場合はあくまで自分らしくあることが目標?

RYUCHELL:はい、学生時代から誰かの真似をすることが嫌いな子で、人と被るのは嫌でした。ぺこりんと一緒に収録に出るときも、お揃コーデは苦手で、二人で統一感を出すためにリンクコーデにするんです。

日本ではディズニーに行くとみんなでお揃コーデするけど、海外だとプロム(プロムナード。高校の学年最後に開かれるフォーマルなダンスパーティー)でドレス被ったらブチ切れるみたいな。その感覚は「わかるー」と思ってた。やっぱり、人の真似じゃなくて、自分のスタイルを見つけたもん勝ちかな。

RYUCHELL

—その考えが「自分の色を取り戻そう」というキャッチコピーにも繋がっているんですね。

RYUCHELL:昔から人と被るのは嫌いだったんですけど、そういう生き方を貫こうとすると、からかわれたり、いじめられたりする。なので、僕も中学生のときは、他人と一緒で安心って思う人だったんです。でも、偽りの自分でいるのはすごく辛かったんですよね。

中学時代はカースト制度の一番上にいないと学校がつまらないと思ってたから、自分を偽ってたんですけど、高校生から自分を表現しようと思ったら、その途端にカーストの一番上にはいられなくなった。でも、その方が中学時代よりよっぽど楽しかったんです。

RYUCHELL“Hands up!! If you're Awesome”PV撮影風景
RYUCHELL“Hands up!! If you're Awesome”PV撮影風景

—高校生でもなかなか自分を出せない子の方が多かったでしょうね。

RYUCHELL:当時やっぱり、同じようなファッションの子が多くて、なりたいものないの? って聞いても、わからないって言うんです。でも、自分のことがわからないと、自分の将来や夢もわからないし、人に何も教えられない。「わからない」って一番怖くて、そうならなかった僕はラッキーだって思ってました。

ただ、テレビに出て自分を発信するようになると、自分を出せない子が裏アカでリプしてくるようになった。みんな個性を持ってないって勝手に決めつけてたけど、ホントはみんな出したい自分があるんじゃないかって思うようになって。だからこそ、歌でメッセージを伝えることに意味があると思ったんですよね。

RYUCHELL

最初は1年もかかると思ってなかったんですけど、自分のこだわりが強くて、どんどん延びていったんです。

—実際、1年の準備期間はどのように過ごしていたのでしょうか?

RYUCHELL:あ、でも最初は1年もかかると思ってなかったんです。そもそも結婚する前に「歌をやる」って決めて、ボイトレをして、実際に歌って、ダンスを作って、MVの世界観を打ち合わせして、序盤で結構できあがったんです。でも、「いや、こうじゃない」っていう自分のこだわりが強くて、どんどん延びていったんです。

—最初はいつ頃に完成する予定だったんですか?

RYUCHELL:最初は去年の夏の予定だったんですけど、僕の誕生日の9月29日までには、というのも無理。秋を過ぎたら、じゃあ来年かーって……。その間に歌を何回もやり直して、ダンスも「こんなのかっこよすぎる」って変えてもらって……、そんな1年でした。

僕っていわゆる下積みを経験してこなかったんです。SNSで自分を表現していたらスカウトされて、ショップで働くようになった。そこでぺこりんと出会えて、読者モデルをしながらテレビにも出るようになって……。

RYUCHELL

RYUCHELL:なので、歌をやりたいって思ってからも、自分の中ではイメージができてたから、すぐに形になると思ってたんです。でも、歌に関してはそうはいかなかった。去年はもっとダンスレッスンしたいって何回も思ったし、そういうもどかしさをはじめて感じた1年でしたね。

やりたいことを貫かないと、この歌を僕が歌う意味がないって感覚が大きかった。

—「周りに自分の意見を伝えることの難しさ」という話がありましたが、実際RYUCHELLさんはどうやって自分のやりたいことを伝えていったんですか?

RYUCHELL:すごい方々が関わってくださっていて、最初の打ち合わせはすっごく緊張したんです。でも、どうせやるなら自分のやりたいことをこだわり抜きたい気持ちが強くて、気づいたら、めちゃくちゃいろんなことを言ってて……。

周りの人には「タレントのりゅうちぇる」のイメージがあるから、「みんなにハッピーを届けたいよねー」とかって言われたけど、「そんなもんじゃねえぞ!」みたいな。「もっとちゃんと伝えなきゃ」ってところからのスタートでした。タレントが歌を出すってよくある話で、僕もその一員だけど、自分のやりたいことは明確にお伝えさせていただいた上で、作業に入ったんです。

RYUCHELL“Hands up!! If you're Awesome”PV撮影風景
RYUCHELL“Hands up!! If you're Awesome”PV撮影風景

—じゃあ、意見がぶつかることも結構あったんですか?

RYUCHELL:すごくありました。こんなやつなんだって思われちゃったかも(笑)。僕のイメージ超変わったと思います。でも、やりたいことを貫かないと、この歌を僕が歌う意味がないって感覚が大きかった。2曲目、3曲目を出したときに、「あ、貫くんだ」って思ってもらいたいし、いろんな意見を言われても、人には左右されずに自分らしさを貫く姿を見せたいなって思っています。

RYUCHELL

—こうやって実際に話をさせてもらうと、僕の中でもRYUCHELLさんのイメージが変わってきて、最初はハッピーでちょっとナヨナヨした、タレントとしてのイメージだったけど、ご自身が思っていることに対しての「強さ」を感じます。

RYUCHELL:いや、僕めちゃめちゃ弱いですよ(笑)。ホントに、びっくりするくらい自分は弱いなって思います。それこそ、いろんな意見が来ることはデビュー前からわかってたけど、実際にいろんな意見を目の当たりにすると、ウワってなっちゃって、逆に温かいコメントをもらうと、それを見て泣いたりも全然したし(笑)。

デビューした日の夜は、感謝の気持ちを直接伝えるためにインスタライブをしたんですけど、そこでも泣いちゃったし。この1年は何回も「先が見えない」とか「まったく伝わらない」と思って、「もう無理」って泣いたこともたくさんありました。

RYUCHELL

—それでも、自分を貫いてこれたのはなぜだったのでしょう?

RYUCHELL:じゃあ、やめるの? って言われたら、絶対嫌だ! って思ったんです。誰に言われたわけじゃないけど、「いろんな人にパワーを与えたい」って、1年前に勝手に使命感を感じて、「やるって決めたからにはやりたい」「やらないと気が済まない」っていう気持ちがすごくあったんですよね。

RYUCHELL『Hands up!! If you're Awesome』
RYUCHELL『Hands up!! If you're Awesome』 / 視聴または購入する

—ぺこさんはりゅうちぇるさんのことをよく「男らしい」とおっしゃっていますが、こういう部分のことを指して言ってるんでしょうね。

RYUCHELL:うーん……正直わかんない(笑)。ナヨナヨしてるし、優柔不断だし、ご飯選ぶのも遅いし(笑)。でも、ぺこりんは自分でも知らない僕をいつも発見してくれて、素の自分を愛してくれてるんだなっていう感覚は毎日感じてますね。

RYUCHELL

1980年代はMV自体が新しかったから、作ること自体を楽しんで、ドキドキしてるような独特の雰囲気がものすごく好き。

—実際にできあがった作品は、楽曲にしてもミュージックビデオにしても、1980~90年代の雰囲気が基調になっていますが、もちろんリアルタイムで当時の音楽を聴いていた世代ではないですよね。どんなバックグラウンドがあるのか、お伺いしたいです。

RYUCHELL:何で好きなのか、言葉にするのはすごく難しいんですけど、昔から好きなものの系統はファッションともリンクしています。もともと1980~90年代のアメリカンなお洋服が大好きだったから、そのお洋服のことを知るために、その時代のドラマや映画を見ると自然にBGMや主題歌が耳に入ってくる。このファッションに合うのはこの歌っていう感覚があるんです。

—なるほど、ファッションから当時の文化を辿っていったんですね。

RYUCHELL:当時の音楽って聴くと元気が出るけど、その中に悲しさとか寂しさもあって、そこも大好き。歌を楽しんでるっていうより、歌にドキドキしてるっていうか。あと、あの時代はMV自体が新しかったから、作ることも楽しんで、ドキドキしてるような独特の雰囲気がものすごく好きなんですよね。

RYUCHELL

—まさに、MTV全盛時の雰囲気がよく出ていますよね。もちろん、それをRYUCHELLさんが知ったのはYouTubeなんでしょうけど。

RYUCHELL:そうです。YouTubeで1980年代の動画を見ると、関連リストでどんどん世界が広がって……、みんなが当時流行ってたモー娘。とかで踊ってる中、僕はBananarama(1981年に結成されたイギリス女性3人組のポップグループ)とかが好きだったから、やっぱり変わってたと思う(笑)。でも、それくらい昔からぶれない大好きなものだから、その世界観は最大限打ち出そうと思ってました。

RYUCHELL“Hands up!! If you're Awesome”PV撮影風景
RYUCHELL“Hands up!! If you're Awesome”PV撮影風景

—シンガーソングライターとして活動しているお姉さんの比花知春さんとはどんな話をしましたか?

RYUCHELL:お姉ちゃんはもともとアクターズスクールに通ってて、1990年代のダンスを実際に体験してる人だから、存在はすごく大きかったです。お姉ちゃんには1年前から、ダンスやミュージックビデオのイメージを逐一見せて、「これ1990年代っぽい。アクターズを思い出す」とかって言ってくれると、「じゃあ、このまま行こう」って思えたり。

RYUCHELL

—不安な1年の中でも、お姉さんの存在は支えになっていたわけですね。

RYUCHELL:自分では「あんまり好きな感じじゃないな」って思いつつ、でも判断を迷っているときに、お姉ちゃんとぺこりんに相談すると、「いや、絶対変えた方がいい」とかって言ってくれるんです。そうすると「だよね!」って確信が持てるので、そういう傍からの意見はすごく助かりましたね。

自分を出すだけで、ホントに世界が広がるっていうことを、歌を通して伝えていきたい。

—今後の活動に関しては、どのような展望を持っていますか?

RYUCHELL:いろんな方からいろんな意見をもらいましたけど、やっぱりこのままで行こうと思っています。自分を表現することの素晴らしさって、自分が向かう場所がわかるってことだと思うんです。僕の場合はそれが原宿で、そこで出会うべき人と出会えて、居場所ができて、仕事にも夢にもつながった。自分を出すだけで、ホントに世界が広がるっていうことを、歌を通して伝えていきたい。あとは、これまで「テレビ越しの人」っていうイメージだったと思うけど、今後はライブを通してもっとみんなに会いに行きたいですね。

RYUCHELL

—「自分を出すことによって、居場所や夢が見つかる」っていうのはめちゃめちゃいい話ですね。先に自分の居場所や夢を探してしまいがちですけど、まずは自分を出すことが大事なんだっていう。

RYUCHELL:自分のことがわからないと他のことは何もわからないのに、先に悩んでしまうのって実はすごく変で、厚かましいですよね。自分探しって、できてない人が多いなってすごく思うから、そういうきっかけを与えられるようになりたいなって思います。

RYUCHELL“Hands up!! If you're Awesome”PV撮影風景
RYUCHELL“Hands up!! If you're Awesome”PV撮影風景

—2月3日にはぺこさんの妊娠を発表されましたが、父親としての将来についてはどのようにお考えですか?

RYUCHELL:しっかり自分の生き方にこだわる姿を子供に見せたいです。人に合わせて、自分を失ってるパパになっちゃったら、子供に何も教えられないだろうと思うので、自分をしっかり持って、キラキラして楽しんでる姿を見せたいですね。

結婚を発表して、「まだ早い」「まだ若い」って言われまくったけど、どうして人の人生のことをそんなに自信満々に言えるんだろうって思うんです。自分たちのことをわかってくれてる人や、お互いの両親は一回も反対しなかったし、自分のことがわかってない人ほど、「普通」を強要してくるなってすごく感じています。

—なるほど。

RYUCHELL:でも、「普通」ってすごく曖昧なもので、結局自分のことは自分にしかわからないし、逆に言えば、自分の人生は自分次第でどうにでもなると思うんです。アーティストとしてはまだスタート地点ですけど、これから先は自分次第だと思うし、若く結婚して、幸せになるのも不幸になるのも自分たち次第。なので、そういう意味でもこれからのRYUCHELLを見ていてほしいなって思ってます。

RYUCHELL

リリース情報
RYUCHELL
『Hands up!! If you're Awesome』

2018年2月14日(水)発売
価格:250円(税込)

1.Hands up!! If you're Awesome

プロフィール
RYUCHELL
RYUCHELL

1995年、沖縄県生まれのタレント。原宿の古着店で働く傍ら、読者モデルとして芸能活動をスタートさせる。その独特なファッションや奔放なキャラクターが話題となり、バラエティ番組やテレビCMで活躍。2018年2月14日にRYUCHELL名義で配信シングル「Hands up!! If you're Awesome」をリリースし、アーティストデビューを果たした。



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