水戸芸術館『ハロー・ワールド』展 テクノロジーが作る未来を問う

インターネットやデジタルデバイスを通して世界と対話することが当たり前になった現代。人工知能や仮想通貨など新しい技術が登場するなか、人の感性や感情はどのように変わるのか。技術革新には明るいだけではない、影の部分もあるのではないか――。

情報社会と人間との、そんな両義的な関係性に切り込んだ展覧会『ハロー・ワールド ポスト・ヒューマン時代に向けて』が、水戸芸術館で開催されている。会場にはAIと人間が共生する未来を描いた演劇的インスタレーション、SNSを主題にした映像などが並び、一見とてもポップだが、作品に込められたテーマにはゾッとさせられるものも多い。

「テクノロジーが生み出す社会の怖さも示しつつ、あえてハローと言ってみる。展覧会名にはそんな皮肉を込めています」と笑うのは、担当学芸員の山峰潤也だ。それぞれの作品が伝えている、私たちが生きる「環境」の現実とは? 展覧会に込めた思いを聞いた。

技術の進展で人の環境は大きく変わっています。そのなかでアートは、どんな批評性を持ちうるのか。

—テクノロジーと人間の関係を描いた作品が並ぶ今回の展覧会ですが、全体に漂うのは技術に対するシニカルな視線です。この企画はどんな経緯で生まれたのでしょうか?

山峰:出発点にあるのは、技術礼賛や進歩主義への疑問です。たとえば「技術の弊害で地球が住めない環境になったときのために、火星への移住計画を立てる」という話があったとします。僕はその手の議論に、「なぜそもそもそんな未来が来ないようにするという話にならないのか」と感じるんです。壊れたから、またよりコストのかかるものを作る、というのは、一見ニーズがあるように見えるし、経済原理には適っているけど、その発想では何かを壊し続けるしかないと思うんです。

山峰潤也(水戸芸術館現代美術センター 学芸員)
山峰潤也(水戸芸術館現代美術センター 学芸員)

—そうした技術と社会を取り巻く矛盾を突いていきたい、ということでしょうか。

山峰:そうですね。展示でも扱っているSNSや人工知能(AI)、仮想通貨など、いま情報技術の進展で人の環境は大きく変わっています。技術開発はコストがかかり、それを超える利益を得ようという作用がかかります。だから、技術発達は資本の原理に寄り添った動向に傾きがちです。批評家のマーシャル・マクルーハンは、「芸術は、いわば危険早期発見装置である」と述べましたが、僕が若いころ出会ったメディアアートには、そうしたテクノロジーへの問いや深い思想的な広がりがありました。

だけど、この十数年でメディアアートは決定的にショービジネスや技術のプロモーションツールになってしまった。そうしたなかで今回の展覧会では、技術革新の負の側面にも触れながら、これからの人間がその環境においてどう生きるのかを問いかけるアーティストを紹介したいと思ったんです。

展示スペースに併置されたカフェ内には本展の参考図書が並ぶ
展示スペースに併置されたカフェ内には本展の参考図書が並ぶ

—情報社会の負の側面とは、具体的にはどのようなものですか?

山峰:個人的な話ですが、10年ほど前に『文化庁メディア芸術祭』というイベントの仕事をしていたころに、ある漫画家の本をAmazonで大量購入したんですね。すると、Amazon上で僕はその漫画家の大ファン、ということになって関連商品の広告がたくさん来たことがおかしかったんです。でも、見られている感じは気持ち悪いですよね。今ではごくごく当たり前になりましたが。

こうした個人のログに関する話で、数年前、SNS上の行動記録を集め、その人の趣味や性的嗜好、政治的傾向などを解析する技術が発表されました。その技術を元にした広報戦略は、トランプ政権が生まれた大統領選や、イギリスのEU離脱を問う国民投票に大きな影響を与えたと言われていましたが、最近Facebookを通じた情報漏えいという形でニュースになりました。テレビや新聞など、マスメディアによる宣伝に対してはある程度免疫があるけど、こうした新しい方法にはまだまだ無防備です。だから無意識のうちに考えを操作されたりしてしまう。そう考えるとなかなか恐ろしいものがありますよね。これは、技術発達の負の一例にすぎませんが。

山峰潤也(水戸芸術館現代美術センター 学芸員)

併置されたカフェにはプログラム『高校生ウィーク2018』の一環として開催した連続ワークショップ「書く。部」による本展のギャラリーガイドなども展示されていた
併置されたカフェにはプログラム『高校生ウィーク2018』の一環として開催した連続ワークショップ「書く。部」による本展のギャラリーガイドなども展示されていた

アートはさまざまなバイアスを超えた新しい気づきをもたらしうる。

—たしかに日頃眺めているSNSのタイムラインは、自分向けにカスタマイズされているのに、「他人も同じものを見ている」と思いがちですよね。その無意識の風景がまさに「環境」ということですが、アートはそれと距離を保つ道しるべにもなる?

山峰:そうですね。僕がずっと持っているテーマは、個人があらゆるバイアスを超えて自由でいられるか、ということです。それはとても広いテーマですが、僕はとりわけ情報メディアを通して刷り込まれる常識や社会通念、先入観を疑うことを重要視しています。社会生活を営む以上、自由なんて言えない場面ばかりですが、アートの大きな社会的な機能のひとつは、独自の視点で提言できる自由な立場であることだと思います。

アーティストというのはそうした特異点であり、そのことによって周囲の人に何かの気づきを与えられる存在じゃないかと思います。それを今回の展示では見せたかったんです。

—展示名の『ハロー・ワールド』には、どんな意図が込められているんですか?

山峰:これは完全に皮肉です(笑)。「ハロー・ワールド(Hello World)」というのは1970年代に書かれたプログラム言語の教本の最初に出てきた言葉で、それ以来、多くのプログラミングの学習に使われてきた言葉なんです。つまり、その技術を身につけることで切り拓かれる人類の新しい扉を象徴してきた言葉なんですね。

1990年代から2000年代にかけて、インターネットは平等で民主的な社会構造を生み出すと期待されました。ですが、従来のメディア構造が衰退するかわりに、GoogleやAmazonのような企業が新しい中央集権的な権威として大きくなっていきました。そうした人たちが作り上げた環境の恩恵を受けていることは間違いないですが、そこには資本の原理が強く働いているわけです。だから、そういう原理に基づく技術が生み出す未来に、無批判に組み込まれていきたくはない。けれど、組み込まれずに生きていくことは難しい。だから、そういう未来の怖さにも向き合う意味で、混沌を見つめながらハロー・ワールドと言ってみる。そういう態度がこの展覧会名には込められています。

山峰潤也(水戸芸術館現代美術センター 学芸員)

『ハロー・ワールド ポスト・ヒューマン時代に向けて』メインビジュアル
『ハロー・ワールド ポスト・ヒューマン時代に向けて』メインビジュアル(サイトを見る

人はステレオタイプなイメージで恐怖を煽ることができる。こうした議論は、いまの状況を考えるうえでも重要だと思います。

—それぞれの作品についても聞かせてください。無意識のうちに判断に影響を与えるメディアのお話がありましたが、デヴィッド・ブランディの作品は、それを作り手側の視点から描いたものですね。

山峰:ブランディの映像作品『チュートリアル:滅亡に関するビデオの作り方』は、世界的に人気のカンファレンス『TED』で発表された世界滅亡のストーリーに、作家が映像をつけていく過程をチュートリアルの形式で見せたものです。

そのプレゼン自体は、隕石が地球に衝突したりロボットが暴走したりといかにも陳腐なのですが、ブランディもネットから拾ってきた映像や発表の原稿を使いながら、サクサクとその映像を仕上げていく。でもこの簡単な補強によって、嘘くさい物語もどこか信ぴょう性を帯びてきます。

デヴィッド・ブランディ『チュートリアル:滅亡に関するビデオの作り方』(2014年) / Courtesy of Seventeen Gallery, London
デヴィッド・ブランディ『チュートリアル:滅亡に関するビデオの作り方』(2014年)Courtesy of Seventeen Gallery, London / 元になったTEDプレゼンテーション『スティーブン・ペトラネック: 世界が終わってしまうかもしれない10の方法

—一見すると笑える作品ですが、よくよく考えるとゾッとする光景です。

山峰:映像制作というものが、それだけ効率化されているということですよね。寄せ集めの素材でもそれなりに見えてしまう。ここで扱われているのは、人を扇動するプロパガンダというメディアの古典的問題です。人は必ず何かに頼りたくなってしまう。だからステレオタイプなイメージを作って恐怖を煽れば、引っ張ることができると。こうした議論は古臭く感じるかもしれませんが、いまの状況を考えるうえでも重要だと思います。

ヒト・シュタイエルも、ネット社会への積極的な発言で有名なドイツ人アーティストです。彼女は2017年に「世界のアート界で最も影響力のある人物」のランキングで1位に選ばれましたが、今回は彼女を世界的に有名にした『他人から身を隠す方法:ひどく説教じみた.MOVファイル』を出してくれています。

 

—この映像ではデジタル社会の中で自分の存在を消すための方法が、レクチャー形式でさまざまに指南されています。いったい何が問題とされているのでしょう?

山峰:ポイントは、デジタル技術は軍事技術と蜜月関係にあるということです。作品には実際にカリフォルニアにあったキャリブレーションターゲット(空撮用の校正パターン。大半はアメリカ空軍とNASAによって1950年から60年代にかけて設置された)が登場しますが、これは軍用機がミサイルの標準を合わせるために使用されるもので、同じ技術は我々の身近なGPSにも使われている。つまり、デジタル環境で存在が把握されることは、軍事機関からも見られていることだと。だから、自分が社会的に悪い存在になればすぐ発見されてしまうから、身を隠さないといけない。その方法が指南されるわけですね。

—あまり実感が湧かない話ですが……。

山峰:そう感じますよね。ただシュタイエルは、反政府運動に参加していたクルド人の友人を失っていて、彼女にとって軍事や技術、そしてメディアの関係は個人的にも重要な問題だったそうです。ただこの作品で彼女が教える「カメラから見えなくなる方法」は、「ピクセル以下のサイズになればいい」というような実現不可能なアイロニーに満ちたものばかりです。カメラからの逃避がファンタジーになりつつある社会状況を、彼女はこの作品で描いているんです。

ヒト・シュタイエル『他人から身を隠す方法:ひどく説教じみた.MOVファイル』(2013年) Courtesy of the artist and Andrew Kreps Gallery, New York
ヒト・シュタイエル『他人から身を隠す方法:ひどく説教じみた.MOVファイル』(2013年) Courtesy of the artist and Andrew Kreps Gallery, New York

—谷口暁彦さんの『address』でも、同じく監視社会の問題が扱われていますね。

山峰:これは谷口さんが2010年から制作し続けてきた写真作品です。ここで彼は製造元から発行されたURLを通じて世界中の監視カメラにアクセスし、ズームにしたそれらを少しずつ遠隔操作して、高解像度の風景写真を撮影しています。

—写真にはアジアの街並みやどこかの交差点の風景が、ツギハギですがくっきり写っています。

山峰:そこで感じさせられるのは、「見る」「見られる」の関係です。シュタイエルの作品では見られる側の問題が語られましたが、こちらでは自分が何かを見るために用意したものは、他人にも覗かれてしまう可能性があるということが描かれている。ネットに公開された時点で相関関係が生まれ、これだけ高解像の映像が撮れてしまう……。セキュリティは大事ですね(笑)。

谷口暁彦『address(アドレス)』(2010年~)
谷口暁彦『address(アドレス)』(2010年~)

一方、こうした情報環境を自然に感じて育った世代の感覚が描かれたのが、小林健太さんによる一連の写真や映像作品です。いま僕たちは、日常的にiPhoneのようなデバイスを通してコミュニケーションをし、世界と対話していますよね。ただ、身体感覚が成熟する前からその環境に慣れた世代には、デバイス上のバグやズレがとても気持ち悪いものとして現れる。小林さんの作品では、そうした新しい情報環境におけるノイジーな知覚体験が、Photoshopなどを通して加工された映像によって視覚化されています。

展示風景より / 撮影:小林健太
展示風景より / 撮影:小林健太

—出品作品には、テクノロジーの発展によって否応なく変わる、人の感覚のあり方を描いたものが多いですね。エキソニモの作品でも、問題となるのは人の感情です。

山峰:エキソニモの『キス、または二台のモニタ』では、タイトルの通り2つの顔が映るモニタが向かい合わせに設置されています。僕たちはこれを見て、まるで彼らがキスをしているような感覚を覚えてしまいますが、実体としては対面したモニタに過ぎない。床に広がる大量のケーブルは、背後にある広大なネットワークの隠喩でもあります。

エキソニモ『キス、または二台のモニタ』(2017年)撮影:山中慎太郎(Qsyum!)
エキソニモ『キス、または二台のモニタ』(2017年)撮影:山中慎太郎(Qsyum!)

山峰潤也(水戸芸術館現代美術センター 学芸員)

—たしかにモニタの実体よりも、「キス」という情報が先に見えてくるように感じるのは不思議ですね。

山峰:ルネ・マグリットに『イメージの裏切り』という有名な絵画がありますよね。写実的なパイプの絵の下に「これはパイプではない」という矛盾する文がある絵ですが、エキソニモの作品でも人は情報の「内容」に注意を向けがちで、土台の支持体に対しては疎かになるという問題が描かれている。

もう一つの作品『ふたつのLIVE風景』でも、鑑賞者の姿がライブ中継された2台のモニタの一方には大量の高評価が流れ、他方には何の評価を得ない自分が映ります。これも単なる情報に過ぎませんが、僕らはどうしても気持ちを左右されてしまうわけで、ネットとは感情を増幅する装置なのだと感じさせます。

エキソニモ『ふたつのLIVE風景』
エキソニモ『ふたつのLIVE風景』

重要なのは、小規模でも良いから何かを作る側になること。作ることが個人の自律性や人間性を保つことにつながる。

—感情を増幅する装置としてのネット環境をわかりやすく見せているのが、イギリスのレイチェル・マクリーンの映像作品『大切なのは中身』です。主人公はSNSで人気を集める女性ですが、その華々しさに次第に亀裂が入り、最後に彼女は醜い姿になってしまう……。

山峰:SNSでは承認欲求が何より優先されていますよね。どこかに行くにしても、ネット上での見え方を中心に考えられてしまう。でも、それは自分が楽しむためのものではなくて、ただ恐怖を煽られているだけ。自分への評価がクリアに数値化されるから、人に比べて評価が少ないと孤独を感じてしまう。そして、それを埋めるために行動するようになる。

人に良く見られたい、という気持ちは誰にでもあるけど、そればかりでは自分で自分を肯定することが出来なくなってしまう。でも、SNSはそういう状況を助長しているわけです。マクリーンの作品は、そんな他人からの評価に囚われて自分を見失ってしまった女性の凋落を、かなりマッドに、グロテスクに描いています。

レイチェル・マクリーン『大切なのは中身』(2016年) Commissioned by HOME, University of Salford Art Collection, Tate, Zabludowicz Collection, Frieze Film and Channel 4. 撮影:山中慎太郎(Qsyum!)
レイチェル・マクリーン『大切なのは中身』(2016年) Commissioned by HOME, University of Salford Art Collection, Tate, Zabludowicz Collection, Frieze Film and Channel 4. 撮影:山中慎太郎(Qsyum!)

—展示作品にはほかにも、仮想通貨に切り込んだサイモン・デニーによる『ブロックチェーンの未来予測』や、AIと人との共存を描くセシル・B・エヴァンスによる『溢れだした』など、近年のホットトピックを扱った作品もあります。

山峰:デニーの作品が着眼するのは、仮想通貨のシステムにおける政治性の問題です。この作品では、ブロックチェーンに関連する実在の会社をモチーフにしたボードゲームを展示しています。このボードゲームは、小国が帝国を目指す「Risk」という欧米で人気のボードゲームをモデルに作られています。「Risk」を扱うことで、民主的な貨幣として期待されている仮想通貨を取り巻く状況も、新旧の覇権争いにすぎないと暗に語っています。

一方でエヴァンスは、情報化社会における情報の信ぴょう性をテーマに、フェイクニュースに翻弄される人間とAIの近未来の物語を完全自動の演劇で描いています。ソフトバンクのロボットPepperやソニーのaiboが演じるAIらが、別のAIの死の真相を探りにいくという物語です。今でも、情報の真偽を確かめるのは難しいことです。ですが、技術が発達し、人間と機械がより密接に共生する未来に、それがより難しくなっていく可能性をこの作品は示しています。

サイモン・デニー『ブロックチェーン・リスク・ボード・ゲーム プロトタイプ:暗号/アナーキスト イーサリウム エディション[1:1トラベル版]』(2016年) 撮影:山中慎太郎(Qsyum!)Art Courtesy of the artist and Galerie Buchholz Cologne / Berlin / New York(参考図版)
サイモン・デニー『ブロックチェーン・リスク・ボード・ゲーム プロトタイプ:暗号/アナーキスト イーサリウム エディション[1:1トラベル版]』(2016年) 撮影:山中慎太郎(Qsyum!)Art Courtesy of the artist and Galerie Buchholz Cologne / Berlin / New York(参考図版)

セシル・B・エヴァンス『溢れだした』(2016年) Courtesy of the artist and Emanuel Layr Galerie, Vienna 撮影:山中慎太郎(Qsyum!)
セシル・B・エヴァンス『溢れだした』(2016年) Courtesy of the artist and Emanuel Layr Galerie, Vienna 撮影:山中慎太郎(Qsyum!)

—この作品でも描かれているような、テクノロジーが生み出す複雑に情報が飛び交う環境のなかで、これからの人が意識すべきなのはどんなことでしょうか?

山峰:テクノロジーの発展は誰にとって都合が良いのかを考えることですね。ただ与えられたものを受け入れるだけでは、結局何も見えなくなってしまうと思うんです。

そこで重要なのは、自分で自分の価値観を作ることです。単に既存のものを消費するだけでは、資本の価値観に流されていくことしかできない。そのために何かを作る、ということはとても有効だと思います。目的を設定し、そのプロセスを設計し、実際にやってうまくできたかを確認する。そのときに、生まれる嬉しさとか悔しさとか、そういうものが自分独自の価値観を育んでいくと思います。ここで言う作るものとは、アート作品を指しているわけじゃなく、フリーペーパーやコミュニティとか、多様な形があると思います。

山峰潤也(水戸芸術館現代美術センター 学芸員)

—実際にこの展覧会には、社会への警鐘だけではなく、無意識に生きる環境についてあらためて「知る」ことの楽しさも溢れていますね。

山峰:そう言っていただけるのは嬉しいですね。アーティストと付き合っていて思うのは、彼らがとても誇り高い人たちだということです。彼らには、資本や政治のバイアスに無批判に従いたくないという強い意識があるんですね。その拒否感が「知りたい」ということにもつながっていて、リサーチと想像力を駆使して作品が作られている。

アートというフォーマットの面白さは、事実とそうでないものを等価に扱えることです。今回の参加アーティストたちは、フィクションやアイロニーを交えながら現実とのあいだに距離を生み出し、見る人に想像させている。だから一見ポップだけど、よく見ると、深い社会への投げかけもあり、幅広い議論の場を作り出しています。今の社会に生きづらさや違和感を感じている人がいれば、ぜひ今回の展示を何かを考えるきっかけにしていただきたいですね。

山峰潤也(水戸芸術館現代美術センター 学芸員)

イベント情報
『ハロー・ワールド ポスト・ヒューマン時代に向けて』

2018年2月10日(土)~5月6日(日)
会場:茨城県 水戸芸術館 現代美術ギャラリー
時間:9:30~18:00(入場は17:30まで)
参加作家:
デヴィッド・ブランディ
小林健太
サイモン・デニー
セシル・B・エヴァンス
エキソニモ
レイチェル・マクリーン
ヒト・シュタイエル
谷口暁彦
休館日:月曜、2月13日(火)、5月1日(火)
※2月12日(月・祝)、4月30日(月・祝)は開館
料金:前売600円 一般800円 中学生以下、65歳以上・障害者手帳をお持ちの方と付き添いの方1名は無料

関連イベント

キュレーターによるギャラリーツアー
2018年4月14日(土)、4月19日(木)
各日15:00~16:00
会場:水戸芸術館現代美術ギャラリー内ワークショップ室

アーティスト・トーク
2018年4月30日(月)
14:00~15:30(開場13:30)
谷口暁彦(出品作家)、金澤韻(キュレーター / 十和田市現代美術館学芸統括)
会場:水戸芸術館現代美術ギャラリー内ワークショップ室

プロフィール
山峰潤也 (やまみね じゅんや)

水戸芸術館現代美術センター学芸員。1983年生まれ。東京芸術大学映像研究科修了。学生時代より映像や舞台作品の制作をしていた経験から、映像やメディアを主題とする展覧会に従事。文化庁メディア芸術祭事務局、東京都写真美術館、金沢21世紀美術館を経て現職。主な展覧会に「3Dヴィジョンズ」「見えない世界の見つめ方」「恵比寿映像祭(第4回-7回)」(以上東京都写真美術館)。その他の活動に、IFCA(2011年、スロベニア)、Eco Expanded City(2016年、ポーランド、WRO Art Center)など海外のゲストキュレーション、執筆、助成金やアワードの審査員、講師、映像作品やメディアアートの研究を行う。2015年度文科省学芸員等在外派遣研修員。



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