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長谷川新×森純平 アートに関わる二人が驚いた、松戸の街の寛容性

長谷川新×森純平 アートに関わる二人が驚いた、松戸の街の寛容性

『PARADISE AIR EXHIBITION“TRANSIT”』
インタビュー・テキスト
牧浦豊
撮影:鈴木渉 編集:久野剛士 写真提供:PARADISE AIR/撮影:加藤甫

明治時代の画家は洋行、つまりパリに行くことができれば勝ち組になれました。(長谷川)

—これまで多くの交流を生んできたPARADISE AIRは、どんなシステムで人が集まっているのでしょう?

:渡航費や日当、制作費用などをフルサポートして3か月間招へいする「ロングステイプログラム」は毎年1~2人のアーティストを公募しています。4月22日まで行っている、今年の応募では日本人も受け付けることにしました。

もう一つ、4週間以内の短期滞在で宿泊と制作の支援をする「ショートステイプログラム」は通年で行っていて、選ばれるのは数十人ですが、専門性も国籍もさまざまな人が応募してくれます。2つを合わせると、年間1000件近い応募があります。

長谷川:これまでにはいわゆるアーティストのほかに、指揮者やジュエリーデザイナー、手品師にピエロなどの応募もあったとか。表現行為をしている人ならキュレーターでもリサーチャーでも、小説家や建築家でも大歓迎です。

脚本家のジュディス・ゴーズミット、フィエプ・ヴァン・ボデーホンによるリーディング・パフォーマンス(ショートステイプログラム)
脚本家のジュディス・ゴーズミット、フィエプ・ヴァン・ボデーホンによるリーディング・パフォーマンス(ショートステイプログラム)

:そうなんです。同時に、その貴重な滞在の瞬間をいかに街に記録として残しておけるかを考えていて。応募してくれるアーティストは、ジャンルも活動もさまざまなので、統一したフォーマットで記録を残すことが難しく色々と試行錯誤を続けていたのですが、実験のひとつとして、写真家の加藤甫さんとともにアーティスト自身が選んだ場所で彼らのポートレートを撮りためています。5年間の活動で、そのポートレートを含めてかなりの写真が蓄積されてきたこともあって、今回、展示をしようということになりました。

それが4月17日から開催する『TRANSIT』です。江戸時代、松戸は江戸と水戸との中継地(宿場町)であったことと、現代でもPARADISE AIRは世界中のアーティストが立ち寄る経由地であることから名づけました。

『PARADISE AIR EXHIBITION“TRANSIT”』メインビジュアル
『PARADISE AIR EXHIBITION“TRANSIT”』メインビジュアル(サイトを見る

—ポートレイトのほかに、どんな作品が展示されるのでしょう?

:昨年のロングステイプログラムをまとめた記録集が完成したので、展示と販売をするつもりです。これまでは助成元に対する報告書的な意味合いが強かった年間の記録集なんですが、今回はかなり編集に力を入れて、アートブックのように持っていることで満足感をえられるような仕上がりを目指してきました。昨年のロングステイプログラムの映像や、ショートステイプログラムをまとめた冊子も公開予定です。あと、個人的には、今年のロングステイプログラムの審査を会場でやりたいとも思っているんですよ。

長谷川:それは面白いですね。昨年、初めて審査に加わりましたが、本当に時間がかかるんですよ。1人5分としても1時間で12人、10時間で120人にしかならない。600人以上の応募のすべてを審査するには何日も必要です。さらに2次審査、3次審査がありますから、「世の中の審査ってこう行われてるんだ!」という部分をお見せできたらいいですね。

左から:クリストフ・トラッカー、ミンウー・リー。いずれもロングステイ・プログラム2017で選ばれたアーティスト。
左から:クリストフ・トラッカー、ミンウー・リー。いずれもロングステイ・プログラム2017で選ばれたアーティスト。

—展示が、今後のPARADISE AIRを決めるような役割も担ってくるわけですね。

:この展示をきっかけに、倉庫に仕舞われていた写真を見返したり、なかなか全てを把握することが出来ないアーティストインレジデンスという継続的な活動を俯瞰することによって、これからどんなことが可能なのか、訪れてくれる人とともに考えることができればと思っています。自分たち自身も次々とアーティストがやって来る日常から少しの間はなれ、渋谷という街に移動して、これからの松戸を想像してみたいです。

具体的なPARADISE AIRのこれからということでは、「クロスステイプログラム」という海外のアーティストを松戸に呼ぶだけでなく、これまでに培ってきた海外アーティストや拠点とのネットワークを活かして、日本人アーティストを海外に送り出す取り組みも実現できればと考えています。昨年から準備をしてきていて、最初はインドとポーランドを相手にスタートします。

インド・バンガロールのアーティスト・イン・レジデンス「1.Shanhtiroad Studio」を運営するスレッシュ・ジャラヤニと彼の滞在した部屋/PARADISE AIR
インド・バンガロールのアーティスト・イン・レジデンス「1.Shanhtiroad Studio」を運営するスレッシュ・ジャラヤニと彼の滞在した部屋/PARADISE AIR

—これから、活動の幅がますます広がっていきそうですね。

:5年前にまいたタネが自然と成長し、世界とのネットワークが生まれたわけですから、それを生かして日本のアーティストを世界に送り出そうと考えています。

長谷川:明治時代の画家は洋行、つまりパリに行くことができれば勝ち組になれました。いまでは海外に行くことは全く特別なことではなく、レジデンスも各地にあります。

ですから、PARADISE AIRも何が提供できるのか、どういうプログラムを用意しているかということが問われ、試されていると思います。国内外のアーティストから面白い、内容が素敵だ、利用したいと思ってもらえるように、これからも取り組んでいく必要があります。そこにプロジェクトの役割や可能性があるんでしょう。

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イベント情報

『PARADISE AIR EXHIBITION“TRANSIT”』
『PARADISE AIR EXHIBITION“TRANSIT”』

2018年4月17日(火)~4月29日(日)
会場:東京都 渋谷ヒカリエ aiiima 1
時間:11:00~20:00(最終日は17:00まで)
料金:無料

プロフィール

長谷川新(はせがわ あらた)

1988年生まれ。キュレーター。京都大学総合人間学部卒業。専攻は文化人類学。2013年から2014年にかけ、大阪、東京、金沢にて開催された「北加賀屋クロッシング2013 MOBILIS IN MOBILI-交錯する現在-」展においてチーフキュレーターを務める。同展は2014年カタログを出版(constellation books)。主な企画に「無人島にて―「80年代」の彫刻/立体/インスタレーション」(2014年)、「パレ・ド・キョート/現実のたてる音」(2015年)、「クロニクル、クロニクル!」(2016-2017年)、「不純物と免疫」(2017-2018年)など。

森純平(もり じゅんぺい)

1985年マレーシア生まれ。東京藝術大学建築科大学院修了。在学時より建築から時間を考え続け、舞台美術、展示、まちづくり等、状況を生み出す現場に身を置きつづける。2013年より千葉県松戸を拠点にアーティスト・イン・レジデンス「PARADISE AIR」を設立。今まで100組以上のアーティストが街に滞在している。主な活動に遠野オフキャンパス (2015-)、ラーニングをテーマとした「八戸市新美術館設計案(共同設計=西澤徹夫、浅子佳英)」(2017-)、東京藝術大学美術学部建築科助教(2017-)。

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