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鳥居みゆきが接続する、内藤正敏のSF、イタコ、民俗学の写真世界

鳥居みゆきが接続する、内藤正敏のSF、イタコ、民俗学の写真世界

『内藤正敏 異界出現』
インタビュー・テキスト
島貫泰介
撮影:豊島望 編集:木村直大

内藤さんは「内藤さんの作品が嫌いだ!」っていう人のことも好きなんじゃないかな。そういう人生観を感じました。(鳥居)

山や神仏の写真を見ながら、鳥居はいよいよ展覧会最後のコーナーへ。ずらりと並ぶのは、これまでに登場した写真から厳選された数々の代表作だ。大きく引き伸ばされた写真が所狭しと並ぶ様子は、あたかも曼荼羅のようだ。

そして鳥居は、ある1枚の写真の前でぴたりと静止して、動かなくなってしまった。

ある作品の前で思わず立ち止まる鳥居
ある作品の前で思わず立ち止まる鳥居

鳥居:……これいい。かっけえ……!

『「内藤正敏の軌跡」展より』 2004年 インクジェット・プリント 作家蔵
『「内藤正敏の軌跡」展より』 2004年 インクジェット・プリント 作家蔵

鳥居みゆき

鳥居が衝撃を受けた、脳内の電気信号を視覚化したような抽象的なカラー写真は、20代の内藤による焼却から逃れた初期作品の1枚。……長い沈黙を経て、ようやく鳥居は口を開いた。

鳥居:私、この写真に救われる感じがします。温かくもあり、冷たくもある、母なる宇宙みたい。人それぞれにいろんな解釈の仕方があるし、内藤さんも確固とした意思で撮ったのだと思います。でもこの写真は、人が抱える大小のモヤモヤ、私の中にあるぐちゃぐちゃした気持ちすら受け止めてくれる気がする。この写真は、これまでも人を救ってきたし、これからも救っていける。そんな写真だと思う。

鳥居みゆき

石田:この部屋にある写真群は、内藤さんが教授を務めていた東北芸術工科大学での回顧展で制作されたものです。そのときのプリントを用いて今回、内藤さんははじめて20代の初期作品と、その後の40数年に及ぶ活動を同じ空間に並べることになりました。

 

石田:曼荼羅とは、密教の世界観を俯瞰した一種の世界地図と言えますが、当時の展覧会もまた、内藤さんの人生を俯瞰する曼荼羅と言えるでしょう。だから鳥居さんが感じた、人を救う、母なる宇宙というイメージは、決して遠いものではないと思います。

左から:鳥居みゆき、石田哲朗(東京都写真美術館学芸員)

鳥居:なるほど。私がこれまで考えてきたことに似ている部分も、逆にまるで考えてこなかった部分も内藤さんの写真にはたくさんあって面白かったです。

「すごく趣味が偏った生き方をしてきたんだな」とも思うんだけど、それでいいと思うんですよね。好きなものだけを食べて死ねるって素晴らしい。嫌いなものを食べて太るのは虚しいけれど、好きなものならば後悔はないです。

鳥居みゆき

鳥居:そして、内藤さんの世界観がすごく好きです。不完全な美の世界。そういうものって、不器用な生き方をしている人にだって生きる価値があると思わせてくれます。すごく前向きになれる。「救われる人がいる」っていうのはそういうこと。すべてを肯定してくれる。しかも内藤さんは「内藤さんの作品が嫌いだ!」っていう人のことも好きなんじゃないかな。そういう人生観を感じましたね。

鳥居みゆき

展覧会のラストは、『聖地』という謎めいたタイトルで締めくくられる。石田学芸員曰く、これは内藤自身が排泄した大便なのだという。なぜこれが「聖地」なのかは、作家のみぞ知る。だが、1人の写真家=民俗学者=山伏の50年に及ぶ生々流転の人生を巡るこの展覧会そのものが、ひとつの曼荼羅=宇宙であるとすれば、このささやかな排泄物もまた、宇宙的なスケールの循環の帰結として見ることもできるはずだ。人体は小宇宙にも喩えられる。人も動物も、生ある存在が等しく生み出す「うんち」に人生の真理を見た気がした。

鳥居みゆき

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イベント情報

『内藤正敏 異界出現』

2018年5月12日(土)~7月16日(月・祝)

会場:東京都 恵比寿 東京都写真美術館 2階展示室

時間:10:00~18:00(木、金曜は20:00まで、入館は閉館の30分前まで)

休館日:月曜(7月16日は開館)

料金:一般700円、学生600円、中高生・65歳以上500円

※小学生以下、都内在住・在学の中学生、障害をお持ちの方とその介護者は無料

※第3水曜は65歳以上無料

トーク『内藤正敏の世界』

2018年6月29日(金)
会場:東京都 東京都写真美術館 1階スタジオ
時間:18:00~19:30
登壇:
赤坂憲雄(民俗学者、学習院大学教授)
定員:各回50名
※当日午前10時より1階総合受付にて整理券配布

担当学芸員によるギャラリートーク 2018年6月22日(金) 14:00~
2018年7月13日(金) 14:00~
※要展覧会チケット(当日消印)

鳥居みゆき単独ライブ狂宴封鎖的世界『Hotel La.Coffin』

2018年9月14日(金)~16日(日)
会場:東京都 新宿村LIVE
2018年10月6日(土)、7日(日)
会場:大阪府 近鉄アート館

プロフィール

鳥居みゆき(とりい みゆき)

お笑い芸人、女優、映像作家、小説家、絵本作家。1981年3月18日生。秋田県生まれ、埼玉県育ち。BSフジ『東北魂TV』でレギュラーを務めているほか、TBS『陸王』やANB『家政夫のミタゾノ』などにも出演。映画や舞台でも活躍している。絵本『やねの上の乳歯ちゃん』や小説『夜にはずっと深い夜を』『余った傘はありません』も話題を集める。趣味は般若心経、瞑想、被害妄想。

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