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『セラヴィ!』監督が語る、日仏で全く違う「対話」の考え方

『セラヴィ!』監督が語る、日仏で全く違う「対話」の考え方

『セラヴィ!』
インタビュー・テキスト
相田冬二
撮影:小林真梨子 編集:久野剛士

フランスのことわざでは「沈黙は物事を悪化させる」と言うんです。

海外旅行をすると自国のことがよくわかると言われる。それと同じように『セラヴィ!』を観て気づかされる日本人の問題、そして、自分自身の問題がある。

—困難に直面したとき、人は口を閉ざしがちです。特に日本人は「沈黙は美」と思いすぎています。言わなくてもわかりあえる関係に過剰な期待があります。しかし、トラブルが起きたときほど、対話は必要だと『セラヴィ!』を観て痛感します。どうしたら、辛いときにフランス人のように口を開くことができるのでしょう?

ナカシュ:恋人とうまくいってないんですか? 電話をくれたら、僕が彼女と話してあげますよ(笑)。フランスのことわざでは「沈黙は物事を悪化させる」と言うんです。沈黙は、悪い妄想に人を向かわせます。

オリヴィエ・ナカシュ

ナカシュ:もちろん、僕らは映画を撮るとき、すべてを台詞で説明はしません。コミュニケーションは目と目のアイコンタクトでも行えるので、人物が思っていることは繊細にも表現できるんです。ただ、『セラヴィ!』を観た日本人は「フランス人はみんな、あんなに思ったことをすぐ口に出して言うの?」と、よく驚いていますね。でも、そうなんです。フランス人は思ったことをなんでも言葉にしますし、それが当たり前の資質なんです。

『セラヴィ!』場面写真 / ©2017 QUAD+TEN / GAUMONT / TF1 FILMS PRODUCTION / PANACHE PRODUCTIONS / LA COMPAGNIE CINEMATOGRAPHIQUE
『セラヴィ!』場面写真 / ©2017 QUAD+TEN / GAUMONT / TF1 FILMS PRODUCTION / PANACHE PRODUCTIONS / LA COMPAGNIE CINEMATOGRAPHIQUE

ナカシュ:僕がアドバイスするとしたら……確かに最初は言いにくいかもしれないし、言ってしまったことでいざこざがあるかもしれないし、自分自身もキツいかもしれない。でも、沈黙よりはマシだと思います。きっと、うまくいく。たとえケンカをしても、内にためずにどんどん口に出すことが重要だと思います。

—タヴィアーニ、コーエン、ダルデンヌ、ウォシャウスキー……兄弟で共同監督しているパートナーは世界映画史にもそれなりにいます。ただ、他人同士のパートナーはそう多くはない。あなたとエリック・トレダノさんは20年近くのキャリアを通して、短編、長編すべてを共同監督していますね。やはり、その創作の場でも対話を大切にしているのでしょうか。

ナカシュ:やっぱり、いっぱい話しますよ(笑)。彼とは15歳の頃に出会って、一緒に成長してきました。25歳ではなく、15歳での出会いは大きくて、あの頃から「一緒に映画をやろう」と決めていたんです。僕らの夢は、当時から全然変わってないんですよね。

『セラヴィ!』場面写真 / ©2017 QUAD+TEN / GAUMONT / TF1 FILMS PRODUCTION / PANACHE PRODUCTIONS / LA COMPAGNIE CINEMATOGRAPHIQUE
『セラヴィ!』場面写真 / ©2017 QUAD+TEN / GAUMONT / TF1 FILMS PRODUCTION / PANACHE PRODUCTIONS / LA COMPAGNIE CINEMATOGRAPHIQUE

ナカシュ:ラッキーだったのは、いつも2人の語りたいテーマが一致していることです。今回は喜劇だったけど、次はもう少しハードなものになって、その次はまた喜劇になるかもしれない。僕らにとっては、毎回が世界とのコミットメントなので、その波長が一致しているのは大きいと思います。

2人で、1本の映画に取り組むというのは、お互いにとって「約束」のようなものなんです。エリックと僕は、実は性格がものすごく違って、だからこそ、お互いを補い合えています。東洋的に言えば、陰と陽みたいな関係ですが、どちらが陰で、どちらが陽かはわかりません。陰と陽は循環しているものですからね(笑)。

僕らは映画を受け取る人に、生ぬるい感覚ではなく、激しい感情を呼び起こすことを目指しているんです。

—映画はとても時間のかかる創作物です。1本の作品を完成させるために、何を大切にしていますか。

ナカシュ:自分にとって大事なのは、熱中できるテーマ……たとえばアートでも絵画でもいいんですが、作品には必然性というものがあると思います。作品が存在しているのはたまたまではなく、誰かが心の底から作りたかったからなんです。

僕らにとっていちばん絶望的な批評は、「ああ、まあ、感じのいい映画だね」です(笑)。嫌いだったら「大嫌いだ!」と言われたいし、好きなら「大好きだ!」と言われたい。僕らは映画を受け取る人に、生ぬるい感覚ではなく、激しい感情を呼び起こすことを目指して、真剣に映画を作っています。そして、それが僕らにとってのコミットメントなんです。

オリヴィエ・ナカシュ

ナカシュ:映画が撮れるということは、すごく恵まれたことで、選ばれているんです。たとえば100人の人が「映画を撮りたい」と思っても、実際に撮れるのはごくわずか。だから、映画を作るということには、責任が伴うと思います。「映画が作れる、ラッキー、どんな作品でも作るのは自由だ!」ではいけなくて、観客の心を動かす、存在する意味のある作品を作ろうとしているんです。

—熱い気持ちが伝わってきました。ありがとうございました。

ナカシュ:彼女とうまくいかないときは、いつでも電話してくださいね(笑)。

フランス人らしいエスプリを交えながら、オリヴィエ・ナカシュはインタビューにおいても「対話」を根幹に置いていた。それはきっと、映画が観客とのコミュニケーションだと信じているからだろう。彼は、世界へのコミットを、日常レベルで実践しているのだ。

『セラヴィ!』メイン写真 ©2017 QUAD+TEN / GAUMONT / TF1 FILMS PRODUCTION / PANACHE PRODUCTIONS / LA COMPAGNIE CINEMATOGRAPHIQUE
『セラヴィ!』メイン写真(サイトを見る) / ©2017 QUAD+TEN / GAUMONT / TF1 FILMS PRODUCTION / PANACHE PRODUCTIONS / LA COMPAGNIE CINEMATOGRAPHIQUE

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リリース情報

『セラヴィ!』

2018年7月6日(金)渋谷・シネクイント他全国公開
監督:エリック・トレダノ、オリヴィエ・ナカシュ
出演:
ジャン=ピエール・バクリ
ジル・ルルーシュ
ジャン=ポール・ルーヴ
ヴァンサン・マケーニュ他
製作年:2017年
配給:パルコ

プロフィール

オリヴィエ・ナカシュ

1973年4月14日、フランス、オー=ド=セーヌ生まれ。エリック・トレダノ監督と林間学校で出逢い、映画好きなふたりは共同で映画作りを始める。1995年に初の短編映画『Le jour et la nuit』の監督・脚本を共同で手がけ、続く短編『Les Petits souliers』(99)はパリ映画祭観客賞を始めとする様々な賞を国内外で受賞し、一躍注目される。初の長編映画『Je préfère qu'on reste amis』(05)でジェラール・ドパルデューと出会い、主演のジャン=ポール・ルーヴは、観客からも批評家からも絶賛される。2011年、オマール・シーを主演に抜擢した『最強のふたり』が大絶賛を浴び、フランスをはじめ、世界各国で驚異的なヒットを成し遂げる。さらに世界中の賞レースを席巻、セザール賞全9部門、ゴールデン・グローブ賞、英国アカデミー賞、ヨーロッパ映画賞、放送映画批評家協会賞にノミネートされ、東京国際映画祭では東京サクラグランプリに輝く。ハリウッドでのリメイクが進行中で、コリン・ファース、ケヴィン・ハートが出演する予定。妹は、『プレイヤー』などに出演している女優のジェラルディン・ナカシュ。

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