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ミヤケマイ×石井美加対談 アートが誘うホリスティックな美の体験

ミヤケマイ×石井美加対談 アートが誘うホリスティックな美の体験

資生堂
インタビュー・テキスト
島貫泰介
撮影:豊島望 編集:川浦慧 撮影協力:SHISEIDO THE TABLES

アーティストは、壁を超えるプロの脱獄囚みたいなものですから(笑)。(ミヤケ)

石井:今ミヤケさんがお話くださったプロジェクトは、参加した資生堂社員も日々の仕事では働かせることのない哲学的な頭の使い方のトレーニング、マイさんのようなアーティストが身につけている思考法、完成形に導くための解決法を学ぶ機会となりました。

石井美加
石井美加

ミヤケ:他のチームは「食べ物を発酵させて、その音を聴く」という作品を発表していましたが、オペレーションの難易度、衛生面などのハードルが高いので、どれも普通の美術館ではなかなか実現できない内容です。公立美術館でもできない実験的な試みが、むしろ企業の力を借りて実現できたことに驚かされました。

石井:マーケティングでは、ターゲットとなる顧客層を想定し開発を進めていきますが、このときはターゲットを絞ることはまったくありませんでした。アートという枠組みを通せば化粧品のメインユーザーの女性だけでなく、子供から大人まで楽しめる。

それは展覧会にいたるプロセスにおいても同様で、普通だったら「これはできない」と断念してしまうことも、アーティストであるマイさんは知恵や経験をフル稼働させて乗り越えたり、思いもしない方法で別の道を見出していく。それに影響されて、弊社の参加者たちも自信をもって前のめりに動くようになっていきました。

ミヤケ:アーティストは、壁を超えるプロの脱獄囚みたいなものですから(笑)。「壁がダメなら下を掘るまで」というふうに生存本能を働かせて回避、解決しようとする生き物なんです。

左から:ミヤケマイ、石井美加

—見えないもの、かたちのないものを掬い上げて作品に転化していくというのは、ミヤケさんの作品にも共通することだと思います。また、資生堂が取り組む「美の提案」という価値の創造もまた、必ずしも可視化されない社会的な概念に関わっています。

ミヤケ:資生堂さんは、日本の文化史をリードして守ってきた企業だと思います。例えば私の祖母の時代だと『花椿』は最先端で、その下の母の世代にも「花椿信仰」みたいなものが受け継がれています。同時代のアーティストやデザイナーと深く関わりあう、リーディングエッジな企業というイメージが私の上の世代にはありました。でも、そのあたりが最近は他社との差異が昔ほど開いている感じはしなくなっている気がしてました。

ところが、美加さんが提案してくださった企画はラグジュアリーやゴージャスさとは別の、エンジニアリングやフィロソフィーに意識を向けた内容で、もう一度本質的でリーディングエッジなものを資生堂は切り拓いていこうとしているんだという感触を感じました。本来の資生堂らしさって、今の時代、社会がどこへ向かっているのかを示唆する姿勢にあると思うんです。

ミヤケマイ

石井:せっかく何かをやるなら、誰もやらないこと、まだ誰もリサーチしたことのないものに挑戦したかったんですよね。

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サイト情報

『こちら、銀座 資生堂 センデン部』

『こちら、銀座 資生堂 センデン部』は、資生堂の「美」を世界に発信することを目的に、資生堂 クリエイティブ本部が中心となり、運営しているサイトです。私たちはテレビや雑誌の広告だけでなく、世界各地で販売されている化粧品のパッケージから、お店の空間デザイン、商品のブランドサイトまで、さまざまな「美」のクリエイションを手がけています。アイデアからフィニッシュワークまで手がけるそのスタイルは、企業の中にありながら、まるで一つの工房のようでもあります。この連載では、私たちのサクヒンが世の中に誕生するまでのストーリーや、作り手の想いを語るハナシなどを、次々とご紹介しています。

店舗情報

SHISEIDO THE TABLES

住所:東京都中央区銀座7丁目8−10 SHISEIDO THE STORE 4F
営業時間:11:00~20:00(19:30 LO)

プロフィール

石井美加(いしい みか)

プロデューサー。学習院大学大学院哲学科修了後、1994年資生堂に入社。販売会社、化粧品開発部、宣伝制作部、経営戦略部市場情報室を経て、2017年7月より現職。2015—2016年、サイエンス、テクノロジー、エンジニアリング、アートといった領域をデザインがつなぐプロジェクト「LINK OF LIFE」を企画・プロデュース。

ミヤケマイ

美術家。日本の伝統的な美術や工芸の繊細さや奥深さに独自のエスプリを加え、過去と現在、未来までをシームレスにつなげながら物事の本質を問う作品を制作。媒体を問わない表現方法を用いて骨董、工芸、現代アート、デザインなど既存のジャンルを問わずに天衣無縫に制作発表。大分県立美術館(OPAM)、水戸芸術館、Shanghai Duolun Museum of Modern-Art、POLA美術館、森美術館、世田谷美術館での展示及びワークショップのほか、村越画廊、壺中居、Bunkamuraギャラリーなどで個展多数。銀座メゾンエルメス、慶應大日吉キャンパス来往舎ギャラリーなど、企業や大学でもサイトスペシフィックなインスタレーションを手がける。2008年パリ国立美術大学大学院に留学。『膜迷路』(羽鳥書店/2012年)、『蝙蝠』(2017年)など4冊の作品集がある。2018年 SHISEIDO THE STOREのショーウィンドウのアートディレクターに就任。京都造形芸術大学客員教授

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