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3日で14万人動員 ローモールピッチ・リシーが未来に繋ぐ伝統文化

3日で14万人動員 ローモールピッチ・リシーが未来に繋ぐ伝統文化

『フェスティバル/トーキョー18』
インタビュー・テキスト
天野史彬
撮影:きくちよしみ 通訳:福富友子 編集:石澤萌、川浦慧、宮原朋之

内戦によって失ってしまったものだけを見つめていても、そこからの発展はないと思うんです。

—11月に『フェスティバル / トーキョー』の一環として、『BonnPhum in Tokyo』が行われます。ここでは、ローモールピッチさんが『BonnPhum』を始めるきっかけとなったという影絵芝居をはじめとするカンボジア伝統芸能のパフォーマンス、Small World Small Bandのライブ、さらに伝統音楽とバンドのコラボレーションも行われる予定ですね。

現在のカンボジアのアートシーンを記録したドキュメンタリーも上映されるそうですが、このイベントを通して、日本の人たちにどんなことを感じてもらいたいと思いますか?

ローモールピッチ:やはり、カンボジアの芸術、芸能を知ってほしいですね。日本にあるお祭りと近いものを感じてもらえるかもしれませんし。もしかしたら、カンボジアというと「内戦があった国」というイメージも強いと思うんですけど……。

—僕自身はあまりそういったイメージはなかったんですけど、やはりポル・ポト時代のイメージが強い人たちも多いかもしれないですね。それに、ローモールピッチさんご自身も、伝統を見直す活動をされていくなかで、きっと内戦のような痛ましい記憶を直視せざるを得ない部分もありますよね。

ローモールピッチ・リシー

ローモールピッチ:そうですね。ただ、私たちにとっても、内戦によって失ってしまったものだけを見つめていても、そこからの発展はないと思うんです。カンボジアでも、年配の人たちのなかには「変わること」を恐れる人たちも多くいます。変化が起こるということは、内戦が起こる前触れだ、と感じる上の世代の人たちも多いんです。

だからこそ、なるべく変わらないことを求め、いまあるもので満足しようとしてしまう。でも、私たちのような若い世代は、常に変化を目の当たりにしてきたので。変わることに対する恐れはないんです。

でも芸術は、いつだって、人の気持ちを平和にしてくれるものだから。

—『BonnPhum』のきっかけとなったお芝居のことを、ローモールピッチさんはなぜ強烈に覚えていたんでしょうね?

ローモールピッチ:それは……あのとき、私が祖母に連れていってもらった村の祭りには、家族が集まって楽しいものを見に行く光景や、村の人々が連帯している状況が残されていたからだと思います。いま、カンボジアは社会としては発展してきているんですけど、それぞれが独自に考えているばかりで、カンボジア人としてのお互いの関わり合いに欠けているんじゃないかと思うんです。だからこそ、私はあの光景を覚えていたんじゃないかなぁ。

ローモールピッチ・リシー

—日本で暮らしている僕にも理解できる感覚です。やはりインターネット、特にSNSが発達したことによって、人と人の関わり合い方がすごく歪な形に見えることがあるんですよね。だからこそ「家族」のようなコミュニティの存在が尊く思えたりして。

ローモールピッチ:うん、インターネットの影響もあると思います。もちろん、Facebookは若者たちに世界を見せてくれる窓になっている……それも確かなことなんですけどね。

—自分自身の出自やアイデンティティを表明するための手段って、きっと他にもたくさんありますよね。政治もそのひとつかもしれないし、スポーツもそのひとつかもしれない。ただ、ローモールピッチさんは芸術、芸能に関わることで、自らのアイデンティティを追い求めている。その理由は、どこにあるのだと思いますか?

ローモールピッチ:好きだから、という理由が一番だと思うんですけど……。やっぱり、芸術や芸能は、繊細で、柔らかいものだと思うんです。

ローモールピッチ・リシー

—とても素敵な表現です。

ローモールピッチ:繊細で、柔らかく、美しい。そしてなにより、平和的なものですよね。たとえば政治には、冷静なときばかりではなく、とても怖い意味での激しさや熱さを持つ瞬間がありますよね。でも芸術は、いつだって、人の気持ちを平和にしてくれるものだから。カンボジア人は、生まれたときから芸術や芸能と共にあるんです。生まれたときも、結婚式でも、お葬式でも、生で音楽を演奏しますし。そういう意味でも、カンボジア人にとって重要なものだと思うんです。

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イベント情報

『フェスティバル / トーキョー18』

2018年10月13日(土)~11月18日(日)
会場:東京都 池袋 あうるすぽっと、東京芸術劇場、南池袋公園、北千住BUoYほか

[アジアシリーズ vol.5 トランス・フィールド]

『ボンプン・イン・トーキョー』
2018年11月10日(土)、11月11日(日)
会場:北千住BUoY
キュレーション:ローモールピッチ・リシー

『フィールド:プノンペン』
2018年11月10日(土)、11月11日(日)
会場:東京都 北千住BUoY

『境界を越えて~アジアシリーズのこれまでとこれから~』
2018年11月8日(木)~11月11日(日)
会場:東京都 池袋 東京芸術劇場 シアターイースト

『MI(X)G』
2018年10月13日(土)、10月14日(日)
会場:東京都 南池袋公園
コンセプト・演出:ピチェ・クランチェン

ショプノ・ドル
『30世紀』

2018年11月3日(土)、11月4日(日)
会場:東京都 池袋 東京芸術劇場 シアターウエスト
脚色・演出:ジャヒド・リポン
原作:バドル・ショルカル

[まちなかパフォーマンスシリーズ]

『A Poet: We See a Rainbow』
2018年10月20日(土)
会場:ジュンク堂書店 池袋本店 9階ギャラリースペース
2018年10月21日(日)
会場:南池袋公園 サクラテラス
2018年10月22日(月)
会場:東京芸術劇場 劇場前広場 / 東京芸術劇場 ロワー広場
作・演出・出演:森栄喜

『ラジオ太平洋』
2018年10月27日(土)、10月28日(日)・11月10日(土)、11月11日(日)
会場:東京さくらトラム(都電荒川線)車内
受付場所:東京さくらトラム(都電荒川線)早稲田停留場
作・演出・出演:福田毅

L PACK.
『定吉と金兵衛』

2018年10月31日(水)~11月3日(土)
※11月1日(木)休演日
会場:東京都 豊島区立目白庭園 赤鳥庵
作・演出・出演:L PACK.
原案:落語『茶の湯』より

坂田ゆかり(演出)×稲継美保(出演)×田中教順(音楽)
『テラ』

2018年11月14日(水)~11月17日(土)
会場:東京都 西巣鴨 西方寺
原案:三好十郎「詩劇『水仙と木魚』――一少女の歌える――」ほか

マレビトの会
『福島を上演する』

2018年10月25日(木)~10月28日(日)
会場:東京都 池袋 東京芸術劇場 シアターイースト
作・演出:マレビトの会

ナシーム・スレイマンプール×ブッシュシアター
『NASSIM』(ナシーム)

2018年11月9日(金)~11月11日(日)
会場:東京都 池袋 あうるすぽっと
作・出演:ナシーム・スレイマンプール

ドキュントメント
『Changes』(チェンジズ)

2018年11月13日(水)、11月14日(木)
会場:東京都 池袋 あうるすぽっと
監督・撮影・編集:山本卓卓

シンポジウム、トークプログラムほか

プロフィール

ローモールピッチ・リシー

『BonnPhum』ディレクター、『Plerng Kob』代表、映画作家。王立プノンペン大学メディア・コミュニケーション学部卒業。BBCメディア・アクション・カンボジアでのディレクターを経て、2014年に『Plerng Kob』を創設、『BonnPhum』を開始。ディレクターを務める『BonnPhum』は、プノンペン郊外の村にある寺の敷地で行われる、カンボジアのフォーク・フェスティバル。失われてしまったカンボジアの伝統を現代と接続させることを目的とし、パフォーマンスだけではなく、食やゲームなど、伝統的な祝祭の形式を保ちながらも、現代の若者達が楽しめるプログラムを実施している。第5回目の開催となった2018年は、プノンペンから南へ10キロ離れたKandal村で行われ、3日間で約140,000人が来場した。そのほか、ファッションブランド『Slanh House』の共同創業者、カンボジアの人気バンドSmallWorld SmallBandのマネージャー、カンボジアの伝統影絵劇の復興を目指す『Sovannaphum Arts Association』のプロモーターも務める。

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