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betcover!!の苛立ち ロックシーンへの愛憎入り交じる想いを語る

betcover!!の苛立ち ロックシーンへの愛憎入り交じる想いを語る

『NEWTOWN 2018』
インタビュー・テキスト
天野史彬
撮影:前田立 編集:山元翔一

「ロック」なんて、もうみんなからバカにされている言葉ですよね(苦笑)。

—過激さと優しさって一見すると相反する気もしますが、優しい人が、人一倍過激というのはどういうことなのでしょうか?

ヤナセ:彼らはみんな、「クソくらえ」みたいな歌を歌っているじゃないですか。でも、清志郎の「クソくらえ」なんて、優しさが溢れ出している「クソくらえ」なんですよね。マイケルも、言葉でそういうことは言わないけど、優しさの最上級にいる人だったと思う。人間離れした、天使みたいな人だった。今でも、いわゆる「優しい人」はいますよ。でも、本当の優しさ、「クソくらえ」って言ってくれる優しさを持った人はいない。

ヤナセジロウ(betcover!!)

ヤナセ:芸術っていうのは、なにかしらに対して「これは違う!」っていう怒りを持っているものだと思うんです。それを言葉にする人もいるし、絵で表現する人もいるし、写真で表現する人もいるし、音楽にする人もいる。そういう人たちを全部含めて僕は「芸術家」だと思っているし、僕のなかで、「芸術=パンク」なんですよ。

でも今って、「芸術」っていう言葉すらあまり聞かないですよね。「作家」っていう言葉も聞かない。「クリエイター集団」みたいな言葉ばかり聞くじゃないですか。今の時代を代表する「バカなもの」がないなって思うんですよ。

—バカなもの?

ヤナセ:たとえば1960年代のヒッピーみたいな、他の時代の人から見てバカにされるようなことを、今の時代の人たちはなにもしていない。シンプルで、どの時代にも恥じないような感じ。でも、そんなものは存在しないのと一緒だし、なにも面白くないから、もっとバカみたいなことをやるべきですよ。僕、こんなこと言いながら音楽をやっていて、本当にバカにされるんですよ。でも、そもそも音楽、特にロックなんていうのは、世間に嘲笑われるものじゃないですか。

—今は特に、ロックの力が弱まっていると言われる時代ですけど……。

ヤナセ:「ロック」なんて、もうみんなからバカにされる言葉ですよね(苦笑)。だからあえて使いますけど、ロックっていうのは、「そんなものは子どものまやかしだ」とか言われながら、それでもやるもの。音楽の影響力を、みんなもっと考えてほしい。音楽って、時代を象徴するもののはずなんですよ。

僕と波長が合う人って、今の時代にはこれほどまでにいないのかと思って、愕然としました。

—音楽に対する想いを語るにしても、世の中に対する苛立ちを語るにしても、1年前に比べて、ヤナセさんの言葉はものすごく確信が強くなっている気がします。相当、意識の変化があったのかなと推測しますが、どうでしょう?

ヤナセ:1年前には自信がなくて言えなかったことも言えるようになったし、世の中との接し方も変わったと思います。……まぁ、別にいいんですけどね。僕はもう、なにも期待していないから。

ヤナセジロウ(betcover!!)

—でも、自分には期待しているでしょう?

ヤナセ:……まぁ、ちょっとは(笑)。でも、この1年でイヤだなって思うことも多々あり、社会に対するガッカリ感も大きくて。

—ガッカリ感?

ヤナセ:すごく身近なことで言うと、今、バンドメンバーを探しているんですけど、いい人が全然いないんですよ。演奏技術ではなく精神性の部分で僕と波長が合う人って、今の時代にはこれほどまでにいないのかと思って、愕然としました。僕の意見に対して「それは違うだろ」くらいのことを言ってくれる人を探しているんですけど、なかなかいないんですよね。

前作を出したとき、「これを出せば仲間が見つかるだろう」と思っていたけど、未だに見つからない。映像や写真をやっている人たちのなかには多少、仲間はいるんです。でも、音楽にはいない。

1999年生まれのフォトグラファー・Towaが撮影を手がけたbetcover!!『平和の大使 / セブンティーン』ジャケット
1999年生まれのフォトグラファー・Towaが撮影を手がけたbetcover!!『平和の大使 / セブンティーン』ジャケット(詳細を見る

—今作でもサポートしているニトロデイのメンバーとか、共振できる人たちがいないわけではないでしょう?

ヤナセ:そうですね。ニトロデイはよく遊ぶし、精神的にも近いところにいるなっていう感じはします。他にも最近すごくいいなと思ったのは、突然少年、the hatch、眉村ちあき……この3組ぐらい。他はいないです。自分に近いフィールドにもいないし、売れている人たちにはもっといない。

最近、日本の大きなフェスの映像を見たんですけど、そこに出ていたバンドが、「いくぞー!」とか言いながら、完全に目が死んでいるんですよ。

—映像や写真にはまだ理解者がいるのに、音楽の分野はそうはいかない。この差はなんなのでしょうね?

ヤナセ:この国の音楽はカルチャーとして廃れちゃっているからじゃないですか。写真や映像の文化は、いい方向に向かっていると思うんですよね。でも、音楽に関しては本当に環境がよくないと思う。最近、日本の大きなフェスの映像を見たんですけど、そこに出ていたバンドが、「いくぞー!」とか言いながら、完全に目が死んでいるんですよ。音楽にも飽きて、ワーキャー言われるのにも飽きて、自分がなにをしたいのかわからなくなっている。

音楽が死ぬほど好きなら、その音楽をずっとやっていけばいいんだけど、なんとなく軽音楽部のノリで売れちゃった人たちには、先がないんですよね。でもファンからはアイドル視されているから、なにをやってもワーキャー言われるっていう。……悲しいですよね。音楽ってなんなのか、よくわからなくなってくる。死ぬほど好きな人じゃないと音楽やっちゃいけないと思うんですよ。

ヤナセジロウ(betcover!!)

—ただ、これは冷めた大人の考え方かもしれないけど、難しいのは、ヤナセさんが見たような死んだ目をしてステージに立っている人たちに「音楽は好きですか?」と訊いたら、たぶん「好きだ」と答えると思うんですよ。

ヤナセ:そうなんですよね。誰だって「音楽が好きだ」と言うし、「音楽を嫌いだ」という人はなかなかいない。僕がクソみたいだと思う音楽をやっている人たちも、音楽が嫌いで、音楽のことを貶めたいからそんなことをやっているわけじゃないっていうのが、恐ろしいところで。本当に難しい。攻撃したって意味ないのかなって思う。自分が叩かれるだけだし。

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リリース情報

『平和の大使 / セブンティーン』
betcover!!
『平和の大使 / セブンティーン』(7inch)

2018年11月10日(土)、11月11日(日)よりNEWTOWN先行販売
価格:1,620円(税込)
TYO7S1009

[Side A]
1. 平和の大使
[Side B]
1. セブンティーン

イベント情報

『NEWTOWNジャム・コンサート』
『NEWTOWNジャム・コンサート』

日程:2018年11月10日(土)、11月11日(日)
会場:東京都 多摩センター デジタルハリウッド大学 八王子制作スタジオ(旧 八王子市立三本松小学校)
出演(五十音順):
[10日]
阿部芙蓉美
おとぎ話
キイチビール&ザ・ホーリーティッツ
クレモンティーヌ
柴田聡子
寺尾紗穂
七尾旅人
ロロ×EMC
[11日]
カネコアヤノ
折坂悠太(合奏)
曽我部恵一
betcover!!
Homecomings
眉村ちあき
ROTH BART BARON

プロフィール

betcover!!
betcover!!(べっとかばー)

betcover!!こと1999年生まれ多摩育ちのヤナセジロウのプロジェクト。幼い頃からアースウィンドアンドファイアなどブラックミュージックを聞いて育ち小学5年生でギター、中学生のときに作曲を始め2016年夏に本格的に活動を開始。2017年12月に10曲入り1st ep「high school !! ep.」を発売。収録楽曲「COSMO」がスペースシャワーTVの「it!」に決定。2018年5月にはサニーデイ・サービスの新作リミックスアルバム<the SEA>のリミックスを1曲手掛ける。同年8月に2nd ep「サンダーボルトチェーンソー」を発売、Apple Musicが選ぶ今最も注目すべき新人アーティストを毎週1組ピックアップし紹介する企画「今週のNEW ARTIST」に選出されるなど注目を集める。

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