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大谷ノブ彦×柴那典が語る、ミスチル、ワンオク、エルレの2018年

大谷ノブ彦×柴那典が語る、ミスチル、ワンオク、エルレの2018年

『NEWTOWN 2018』
テキスト
柴那典
撮影:CINRA.NET編集部 編集:中島洋一、山元翔一

Mr.Childrenは今、世の中の風潮とか空気とかじゃなくて、一人ひとりの思いに寄り添ってる。(柴)

大谷:あと、僕が好きな曲のジャンルに「海ソング」っていう、人が答えを求めて海に行く曲っていうのがあるんですよ。井上陽水の“海へ来なさい”とかね。2曲目の“海にて、心は裸になりたがる”が、まさにそういう曲で。海に行く男の歌なんです。

:この曲のサウンドはすごいですよね。1980年代末期のバンドブームによくあった、ビートパンクのアレンジ。これって、今までMr.Childrenが一番恥ずかしくてやらなかったタイプの曲で。

大谷:昔、ありましたよね、こういうの! これ、忘れらんねえよがカバーしたら絶対いいですよ。

:たしかにいいかも。

左から:柴那典、大谷ノブ彦

大谷:で、歌詞のほうは今の現代社会の闇みたいなものがちゃんと出てるわけですよ。<重箱の隅をつつく人 その揚げ足をとろうとしてる人 画面の表層に軽く触れて 似たような毒を吐く>とかね。だけど、そういう風潮を皮肉って終わるわけじゃない。<可愛げのないあなたにも 注目されたいあなたにも きっと世界はあなたに会いたがっているよ>って歌ってるんです。

:つまりMr.Childrenは今、世の中の風潮とか空気とかじゃなくて、一人ひとりの思いに寄り添ってると。歌詞集の『Your Song』(2018年10月刊行、文藝春秋)も出たんですけど、そこの巻頭エッセイでも「あなたが主役の『歌』になりたい」って書いていましたし。さすがだなあ。

大谷:これ、実は、BTS(防弾少年団)の『LOVE YOURSELF』のコンセプトと通じているんですよね。BTSについては次の回でじっくり語ろうと思うんですけど。

Mr.ChildrenにとってONE OK ROCKは、同じステージ上のライバル。(柴)

:Mr.Childrenの新作について、僕、ひとつの仮説があって。アルバムのリリースのときに「後輩ミュージシャンがこのアルバムを聴いたら、音楽をやめたくなるような、また、もう僕らを目標にするなんて思わないくらい圧倒的な音にしたい」って桜井さんがコメントしてたじゃないですか。

大谷:ありましたね。

:で、若手のミュージシャンって誰だろうなと思って。もちろんいろんな人がいるんだろうけど、僕はMr.Childrenに火をつけたのはONE OK ROCKだと思ってるんです。

大谷:なるほど。実際、去年の4月に横浜アリーナで対バンしてますけど、それもONE OK ROCKが対バンライブのシリーズをやってるっていうのを聞いて、桜井さんからTakaさん(ONE OK ROCK)に「前座やりたいんだけど」って声をかけて実現したって。

:それもすごい話ですよね。ONE OK ROCKは今、日本のロックバンドがグローバルな音楽シーンでどう戦うかということを、一番最前線でやってるバンドなわけで(参考記事:ワンオクが、ロックの力が弱まったアメリカで勝つために選んだ道)。しかもアメリカではロック自体への逆風が吹いてるから、傷つき苦戦しながらやっているところもある。対バンするということは、そういうバンドがどんなふうに観客に向き合っているかを間近で見ることになりますよね。そうしたらやっぱり、Mr.Childrenとしては当然火がつくと思うんですよ。

大谷:後輩だけどリスペクトが感じられるんですよね。楽屋でもそういう話をしていたみたいだし。あと、すげえなって思ったのは「まだ戦えるって思った」って桜井さんが言ってて。

:そう! 「戦えると思った」ってことは全然自分のことをベテランとか大御所と思ってないんですよ。Mr.ChildrenにとってONE OK ROCKは、同じステージ上のライバルなんですよ。

今回は10曲入りで、1から10までロックアルバムなんですよ。全部リスナーに直球を投げている。(大谷)

大谷:それで、僕も思うことがあるんです。Mr.Childrenって、一昨年から去年にかけてホールツアー(『Mr.Children Hall Tour 2016 虹』『Mr.Children Hall Tour 2017 ヒカリノアトリエ』)をやっていたんです。

プロデューサーだった小林武史さんがいなくなって自分たちだけで『REFLECTION』(2015年)というアルバムを作って、そこでやれることを全部やった。そのあとのホールツアーは、バンドをもう一度蘇生させることが狙いだったと思うんです。でも、そこで「これじゃない」感がおそらくあった。やっぱり自分たちは、スタジアムでやらなきゃいけないって気づいたんだろうなと。

大谷:なんで、そんなことを思うかっていうと、そのホールツアーで“お伽話”っていうめちゃくちゃシリアスな曲を歌っているんですけど、それを聴いて、きっと次のアルバムは『深海』(1996年)みたいな自分探しというか、自分自身の深いところを追求していくものになるんじゃないかと思ったんです。でも、その曲は『重力と呼吸』ではカットされてる。入ってないんですよ。

:そうなんだ! たしかにシングルの“ヒカリノアトリエ”も入ってないですもんね。

大谷:そう。今回は10曲入りで、1から10までロックアルバムなんですよ。歌詞で「自分探し」もしていない。全部リスナーに直球を投げている。めちゃめちゃ寄り添ってる。

:そういう意味でも『REFLECTION』とは真逆ですよね。あれはUSBに全23曲入れた「{Naked}」バージョンが象徴的だけど、投げられる球種を全部投げようっていうアルバムだから。いい曲がたくさん入ってるとも言えるけど、的が絞られていないとも言える。

Mr.Children『REFLECTION{Naked}』を聴く(Apple Musicはこちら

大谷:『重力と呼吸』は完全に直球だけですよね。きっと「今はどういうMr.Childrenを届けたいのか」ってことに対する彼らなりの答えが、このアルバムに入ってるんでしょうね。それがリスナーとの向き合い方になっている。だって、桜井さんって、1990年代はファンに対して感謝の言葉が言えなかったって言うんですもん。

25周年のライブのMCで、いきなり売れたから「どうせこの人たちはいずれ去っていくんだろうな」と思ってたって。だけど今は、自分たちをずっと好きでいてくれる人がこれだけいる、そのことにすごく素直に感謝できるようになった、って。

:めっちゃグッときますよね。

大谷:つまり、自分と大衆との距離を考えるんじゃなくて、一人ひとりにどう向き合うかっていうことを考えたんでしょうね。

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イベント情報

『心のベストテン 公開放談――平成が終わっても音楽は鳴り止まない』

2018年11月10日(土)
会場:東京都 多摩センター デジタルハリウッド大学 八王子制作スタジオ(旧 八王子市立三本松小学校)
時間:17:30~19:00
教室:2A
出演:大谷ノブ彦、柴那典
料金:無料

「音楽についてパァッと明るく語りたい! なぜなら、いい音楽があふれているから!」。ハートのランキングを急上昇しているナンバーについて、熱く語らう音楽放談の公開トークをお届け。cakesの人気連載『心のベストテン』が、CINRA.NETでリブート。邦楽から洋楽、芸能から時事まで『NEWTOWN』でも、縦横無尽に語り尽くします。

プロフィール

大谷ノブ彦(おおたに のぶひこ)

1972年生まれ。1994年に大地洋輔とお笑いコンビ・ダイノジを結成。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。音楽や映画などのカルチャーに造詣が深い。相方の大地と共にロックDJ・DJダイノジとしても活動。著書に『ダイノジ大谷ノブ彦の 俺のROCK LIFE!』、平野啓一郎氏との共著に『生きる理由を探してる人へ』がある。

柴那典(しば とものり)

1976年神奈川県生まれ。音楽ジャーナリスト。ロッキング・オン社を経て独立、雑誌、ウェブなど各方面にて音楽やサブカルチャー分野を中心に幅広くインタビュー、記事執筆を手がける。主な執筆媒体は「AERA」「ナタリー」「CINRA」「MUSICA」「リアルサウンド」「ミュージック・マガジン」「婦人公論」など。日経MJにてコラム「柴那典の新音学」連載中。CINRAにてダイノジ・大谷ノブ彦との対談「心のベストテン」連載中。著書に『ヒットの崩壊』(講談社)『初音ミクはなぜ世界を変えたのか?』(太田出版)、共著に『渋谷音楽図鑑』(太田出版)がある。

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