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佐野史郎×林海象が語るカルチャー蘇生術 過去の作品を甦らせる

佐野史郎×林海象が語るカルチャー蘇生術 過去の作品を甦らせる

Kickstarter
インタビュー・テキスト
轟夕起夫
撮影:豊島望 編集:久野剛士(CINRA.NET編集部)

懐古的にネガを直すのではなく、これから先の未来を見据えてチャレンジしていきたい。(林)

─ところで今回、林監督はクラウドファンディングでフィルムを修復されるのだとか。

:ええ。「Kickstarter(キックスターター)」で。パトロンになっていただいた方にはリターンとして、アンレストア版のフィルムを差し上げようかと。プリントそのものを所有できるんです。たとえば版画には限定枚数を示すエディションナンバーがついていますが、版画を手にするのと同じですね。

佐野:フィルムは1本だけ焼くの?

左から:佐野史郎、林海象

:35mmはね。16mmはもう何本か作るかと思うけど、やっぱりネガからだから、たくさん焼くとちょっと劣化するよね、修復しても。写真と一緒で、焼くにも限度がある。『夢みる~』はモノクロームでシンプルだからこそ、逆に難しいんですよ。でもデジタル化すると当然、延々と修復可能で、それをダウンロードして見ることもできます。

映画って、なんでもかんでも修復はできないんですよね。つまり、『2001年宇宙の旅』は世界が認める傑作、歴史的価値があるから修復しているわけですが、あまりに作品が古すぎると、やっぱり修復は容易ではないんですよ。

佐野:重要なのはネガの保管の仕方でしょう。『2001年宇宙の旅』はそれを完璧にやっていた。

佐野史郎

:マーティン・スコセッシ監督(アメリカの映画監督、代表作に『タクシードライバー』『カジノ』『沈黙 -サイレンス-』など)って偉くって、溝口健二監督の『雨月物語』(1953年)ほか、自分の好きな作品を自費で修復して、デジタルリマスター化している。映画も使い捨ての娯楽商品から、人類の遺産として保存していく方向にどんどん動いている。僕の作品はスコセッシ監督には選ばれないので、自分でやろうっていうことなんです(笑)。

─いやいや、スコセッシ監督が『夢みる~』をご覧になれば、わかりませんよ。ちなみに佐野さんはクラウドファンディングとは、どう接していらっしゃいますか。

佐野:最近は吉祥寺の新しいミニシアター「アップリンク吉祥寺」を作るクラウドファンディングには参加しました(2018年12月14日にオープン)。あと2年ほど前ですが、ヤン・シュヴァンクマイエル監督の最後の映画だという『蟲』(2018年)も、制作資金をクラウドファンディングで募っていたので参加しましたね。

「どうしてもその場所に映画館があってほしい」とか、「どうしてもその監督の作品を観てみたい」とか、そういった気持ちがやっぱり自分を動かしますよね。リターンとして完成作の先行ダウンロードができたり、ブルーレイやDVDを入手できるのもいい。世界にいるファンの手でクリエイターを支援した結果、作品が生まれていて、そしてめぐりめぐって「作品を購入しているんだ」という感覚がありました。

: あとKickstarterがいいのは日本だけではなくて、世界中に広くプロジェクトを公開できるということ。もちろん完成作は英語字幕版のほか、多言語版をいくつか作ろうと思っています。もしかしたらアフリカの人がスマホでたまたま『夢みる~』を見て、映画監督を志すかもしれない。どこでなにが起こるかわからない時代ですから。

林海象

─『夢みる~』という映画は、1986年当時、ひとつの斬新な実験でしたが、それに相応しい試みですね。

:うん、実験です。もしかしたらオリジナルから離れてしまうかもしれないけれど、やりすぎて離れたら元のネガに戻せばいいだけなんでね。懐古的にネガを直すのではなく、これから先の未来を見据えてチャレンジしていきたいです。

そうだ! フィルムとデジタル、両方を修復できたら、2つを同時に重ねて上映するのはどうだろう。最初、シンクロさせた同一画面にしておいて、それを少しずつ横にズラしていくと両者の違いが明確にわかって楽しいでしょ……僕はね、こんなことばかり考えているんですよ(笑)。

佐野:いやあ~、初めて会った頃とぜんぜん変わっていないなあ! 監督の頭の中はつねに、面白い企画の宝庫なんですよね。

左から:佐野史郎、林海象
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プロジェクト情報

「Remastering JPN cult film
「Remastering JPN cult film "Sleep to Dream"『夢みるように眠りたい』フィルム修復」

『私立探偵 濱マイク』シリーズ等を手がける林監督の幻のデビュー作『夢みるように眠りたい』フィルム修復のためのクラウドファンディング・プロジェクト。奇跡的に発見されたオリジナル・16mmネガフィルムを林監督が自らデジタル修復を監修し新たに蘇らせる支援を行う。

プロフィール

佐野史郎(さの しろう)

1975年に劇団シェイクスピア・シアターの創立メンバーとして初舞台を踏む。1980年入団の状況劇場を経て、1986年映画「夢みるように眠りたい」で映画初主演。ドラマでは1992年TBS「ずっとあなたが好きだった」での冬彦役の演技が話題に。その後も、フジテレビ「沙粧妙子・最後の事件」のほか、2018年にはテレビ東京「限界団地」で連続ドラマ初主演。また、映画「ゴジラ2000ミレニアム」に宮坂博士役で出演。NHK「音で怪獣を描いた男 ~ゴジラVS伊福部昭~」などのドキュメンタリーにも出演している。第30回ゴールデンアロー話題賞、第30回ギャラクシー賞を受賞。

林海象(はやし かいぞう)

1957年7月生まれ。京都府京都市生まれ。映画監督、映画プロデューサー、脚本家。京都造形芸術大学術学部映画学科教授・学科長。永瀬正敏主演「私立探偵 濱マイク」シリーズや、「探偵事務所5」「THE CODE/暗号」他、作品多数。

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