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Spangle call Lilli lineの美学 20年消費されなかった秘密を探る

Spangle call Lilli lineの美学 20年消費されなかった秘密を探る

Spangle call Lilli line『Dreams Never End』
インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:高橋一生(sui sui duck) 編集:山元翔一(CINRA.NET編集部)

「音も情報も削ぎ落とす」というところに自分たちの美学はある。

—「やりたいことをやってきただけ」とおっしゃいましたが、スパングルは若い世代からも確実に評価されている。今回の取材では、その秘密を探るべく20年に及ぶ音楽的な変遷を振り返りたいのですが、スパングルがデビュー時からやってきた「生演奏とポストプロダクションの融合」という方法論は、2019年現在も有効ですし、もっと言えば、今だからこそより有効だなって思うんです。

藤枝:ありがとうございます。

—それに2010年代の日本は、音数や曲展開などにおける情報量の多い音楽が増えた一方で、近年は新世代ジャズ、ビートミュージックなどその反対の流れにある音楽も浸透してきた。若い人がPCを使って音楽を作ることはもう普通で、「どこまでをバンドと呼んでいいのか」という状態になっているのも含めて、その先駆者としてスパングルを位置づけることができるなと。

藤枝:前作(2015年リリースの『ghost is dead』)と今作は、バックグラウンドとしての情報量をすごく持っている作品なんですけど、それをどれだけ削ぎ落としたものにできるか、ということをやっていて。手数の多さや速さとは少し距離を置いて、とにかく「音も情報も削ぎ落とす」というところに自分たちの美学はあるなと思うんです。

藤枝憲

—「時流を踏まえて」というよりも、もともと自分たちのやりたいことがそれだったと。

藤枝:そうですね。もともとテクニカルなバンドじゃないので、音の配置とか空間作りで聴かせるっていうのが一番なんです。最近Twitterとかで、若い子が個性とかオリジナリティーの話をしているのを見て思ったんですけど、20年やってみてわかったのは、余計なものを削ぎ落としていった先に、それでも「残ってしまうもの」が、個性なのかなと。10の音を鳴らさなくても、1の音で成立するならそれでいいし、究極0でもそこに何かが残るなら、0のほうがいい。

—そもそも、なぜ「音の配置とか空間作りで聴かせる」という方向に向かったのかを探ってみると、やはり結成当初はポストロックの影響が大きかったわけですよね?

藤枝:ポストロックをすごく意識していたわけではないんです。スパングルを結成するあたりでは、StereolabやPortisheadなどのUKのバンドが好きで、StereolabをきっかけにTortoiseを知って、The Sea and Cakeとかも聴くようになって(TortoiseとThe Sea and Cakeには、ポストロックに関係の深いプロデューサー / エンジニアのジョン・マッケンタイアが在籍)。そういう海外の音楽と、当時の自分たちのやりたい音楽がたまたまリンクしたという感じだったんですよね。

Spangle call Lilli lineの1stアルバム『Spangle call Lilli line』(2001年)を聴く(Apple Musicはこちら

スパングルはライブハウスで盛り上がることを目的に組んでない。

—ただ、1998年にTortoiseが『TNT』を出して、「Pro Tools」(デジタルで音声の録音、編集、ミキシング、編曲など一連の作業が出来るソフトウェア)の時代に入っていたことは大きかったと思うんですよね。

藤枝:それはそうですね。スパングルは1stアルバムからPro Toolsを使っていましたから。それこそ、マスタリングのときは参考音源として『TNT』を持って行ったんですけど、当時のエンジニアさんに「こんなにリバーブかけていいんですか? ぶっちゃけ、印象としては音悪くなりますけど」って言われて。それもすごく覚えてる。

—当時の日本でスタンダードとされていた音像とは異なるものだったってことですよね。

藤枝:そう。Pro Toolsの話で言うと、1stアルバムはほぼライブをやらずに作っているんですよ。スパングルはライブハウスで盛り上がることを目的に組んでなくて、「こういう音楽を作りたい」っていうのがスタート地点だったので。

1stアルバムを出して、ライブのお誘いが来るようになって、ライブをやりはじめてできた曲を中心に作ったのが2ndアルバムの『nanae』。プロデュースは益子さん(益子樹。ROVOのメンバー、スーパーカーのサウンドプロデュースで知られる)で、アナログテープを使って一発録りでした。

Spangle call Lilli lineの2ndアルバム『nanae』(2002年)を聴く(Apple Musicはこちら

藤枝:3rdアルバムの『or』はその反動で、本当にスタジオワークの作品。当時は、1枚目と2枚目でやったことを混ぜ合わせようとしたけど、結果としてスタジオワークの比重が多くなったんですよね。このあとにドラムが脱退するのもあって、ここまでがスパングルの第1期みたいな感じですね。

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リリース情報

Spangle call Lilli line『Dreams Never End』(CD)
Spangle call Lilli line
『Dreams Never End』(CD)

2019年1月9日(水)発売
価格:2,916円(税込)
PECF-1166 / felicity cap-301

1. red
2. lay low
3. so as not to
4. still three
5. touei
6. sai
7. toss out it
8. give each other space
9. mio
10. tesla
11. therefore(ボーナストラック)

イベント情報

Spangle call Lilli line
『This time of night ~SCLL LIVE 20th Anniversary~』

2019年4月20日(土)
会場:大阪府 umeda TRAD
料金:前売4,500円(ドリンク別)

2019年4月27日(土)
会場:東京都 EX THEATER ROPPONGI
料金:1階スタンディング4,500円 2階座席指定5,000円(全てドリンク別)

プロフィール

Spangle call Lilli line
Spangle call Lilli line(すぱんぐる こーる りり らいん)

1998年結成。メンバーは大坪加奈、藤枝憲、笹原清明の3人。今までに10枚のアルバム、2枚のシングル、3枚のライブアルバムと、ベストアルバム2枚をリリース。数々のコンピレーションアルバムなどにも参加。ボーカル大坪加奈による「NINI TOUNUMA」名義のソロや、藤枝&笹原による「点と線」名義でのリリース、国内外のアーティストの作品への参加など、サイドプロジェクト等も精力的に活動。

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